オーストラリア在住の日本人が現地の人と商売する時に初対面で、必ず聞かれることがあるという。「あなたはどこの国の人ですか」と。「日本人だ」と答えると相手はほっとするようだ。そして「中国人なら仕事を断っていた」ともいわれる。同じ東洋人でも日本人と中国人では好感度が違う。日常の付き合いはともかく「商行為」でそれが際立つようだ。
そんな以前聞いてた話を思い出したのも、最近報道された商船三井に対する不当ともいえる中国の賠償補償裁判からである。商船三井が流れを引いているという戦前の船会社が当時借りた貨物船の賃貸料を請求されて中国で敗訴した。商船三井はこれに不服で賠償には応じなかったら、中国の裁判所によって現在中国で使用中の大型貨物船を差し押さえされた。
いうまでもなく、1972年日中国交回復での共同声明で中国側が戦後賠償を放棄した。結果的に、戦前の中国ににおける戦争被害の補償や債務は一切支払う必要がない訳である。もちろん、日本は無償3兆円以上の経済援助ばかりでなく、様々な技術協力を続けて中国の経済発展に寄与してきた。したがって、中国の船会社は日本の企業に損害賠償を求めるのではなく、中国政府に要求するのが筋である。
ところが、今回の裁判ではそんな原則が無視された。背景には日中関係の悪化から、日本を攻撃する一環で中国政府の後押しで強行されたといわれている。日本政府は重大な条約違反として、国際司法裁判所に提訴すると反発した。日本は中国のごり押しに屈することなく堂々立ち向かうものと期待していた。
そんな日本の態度に一時は萎縮したのか、中国外務省はこの裁判が戦後補償と関係なく純粋な商業契約を巡るものだと弁解した。この弁解に気がそがれたのか、差し押さえの弱みか、商船三井があっさり供託金40億円支払いに応じてしまった。賃貸料金を現在に換算した29億円+利息分11億円だという。
船を差し押さえられて実際の業務に支障をきたすことの焦りがあるのか、商船三井に行為はどうも卑屈に思えて不快でならない。中国は差し押さえという強硬手段と政府の弁解という軟化姿勢を巧みに使い分けて商船三井を翻弄させたと考えられる。これでは「盗人の追い銭」ではないか。
どうも日本の大企業の志の低さを感じてしまう。中国政府とは決して波風を立てずに穏便に済ませたいと卑屈な根性がみえてきて仕方がない。また日本政府も弱腰の中国企業を指導かつ支援をする気概が欲しかった。今回は日本の惨敗に終わった。
中国での商取引は、このように決められた契約が守られず、時に脅しに近い手段で日本などの外資企業を貶める。中国で進出した企業の多くは、最初は一時的に利益を得ても最終的には損害をもろにかぶって撤退する会社が多いと聞く。
最低限の契約が守られないからだ。これは逆に海外で進出する中国人企業との商行為についても同様だ。現地のオーストラリア人が「相手が中国人だったら仕事を断る」ということの意味を十分噛み締めるべきだろう。
ところで三井商船が供託金を支払った翌日、なんと中国の新聞による「勝利宣言」が報じられた。人民日報系の「環球時報」の社説で「対日賠償(問題)に新たな時代を開いた」と露骨な論評をしている。
供託金支払いが「対日民間賠償問題での重大な勝利」と強調。商船三井が「巨額の賠償金」を払ったことは「中国だけでなく韓国やほかのアジア諸国の被害者を鼓舞する」としたうえで、「対日賠償の動きが今後活発化するかもしれない」との見通しを示した。
さらにこうも付け加えている。
中国は過去、弱すぎた」と述べ、国力が強大となった現在、日本側に何ら遠慮する理由がないとの見方を示した。(産経記事4月25日)
商船三井の供託金支払いがはっきり「対日賠償」だと明言している。中国外務省が「一般的な商業契約上の問題」と弁解していたのに、舌の根も乾かぬうちにこうしたあから様な野望をねけねけと記事に書く。自国ばかりでなく現在の「朝貢国」韓国にもこのやり口を伝授する始末だ。あげくは「今は自分の立場が強くなったから、遠慮などいらない」までいってその傲慢さには呆れる。
そんな中国の理不尽な態度にも日本の朝日新聞は、あくまでも「外交による話し合いで関係を改善せよ」と説く。中国に従属する報道機関でないとしたら、よほどお人好しのおバカさんということになる。これでは東大生(今春入社ゼロ)も寄り付かない?