粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

脱原発の分裂

2014-04-19 21:07:19 | エネルギー政策

都知事選の惨敗にもかかわらず、この二人の元首相は凝りるどころか相変わらず意気盛んのようだ。細川護煕、小泉純一郎ご両人のことだ。今度は脱原発をめざす一般社団法人「自然エネルギー推進会議」を設立するという。発起人はこの二人の他に哲学者の梅原猛氏、作家の赤川次郎氏、瀬戸内寂聴氏ら、賛同人には女優の吉永小百合さんなどが名を連ねているようだ。

ただ、こうした顔ぶれを見ると、全て原子力どころか科学の「ド素人」ばかりで、本気で脱原発を考えているのか疑問が残る。特に瀬戸内寂聴氏や吉永小百合さんなどは昨年暮れの特別秘密保護法でこれまた「ド素人」的な反対表明をして良識派からの顰蹙を買ったばかりである。正直、小百合さん自身は女優としてはファンであるが、こうした情緒先行の言動には幻滅している。

朝日新聞によれば「推進会議」の活動方針①原発ゼロ・再生可能エネルギーの普及促進②原発再稼働反対③原発輸出反対で、細川・小泉両氏の考えが一致しているという。これはいうなれば、現在の安部政権の原発政策に反対する意思表示ということになる。

また具体的な活動内容として福島、新潟、青森など原発関連施設のある地域などを中心にタウンミーティングに出席し脱原発の気運を高めたり、福島県知事選や統一地方選で脱原発候補の支援を検討するという。これもまた、昨年小泉元首相が突然脱原発を唱えだしてその講演をしたり、今年2月都知事選で細川氏を応援したことと符合する。

したがってこの「推進会議」はこれまで小泉氏が個人で行なってきたことを「社団法人化」しただけで内容そのもに新味はない。この秋に行なわれる福島県知事選では2月に見られた選挙カーでの二人の共演が再現されるかもしれない。

しかし、都知事選では「枯れ木も山のにぎわい」(失礼!)であったが、福島では話題性も消えて「山」にはなりえないのではないか。瀬戸内氏と小百合さんを加えて「男女4人爺婆秋物語」では視聴率を稼げそうにもない?

そもそも福島の県知事選に立候補する人は全て脱原発を掲げるのではないか。少なくとも推進派が出るなど「狂気の沙汰」というのが福島の現状といえる。したがって、「脱原発度」の強弱に差があるだけとしか考えられない。

都知事選で細川候補以上得票を獲得した宇都宮健児氏がこうした小泉氏らの動きに対して、選挙戦で脱原発候補を分裂させるだけと批判している。原発問題が重要なテーマになる選挙で小泉氏らがある脱原発候補者を応援すれば、都知事選のように共産党や社民党支援の候補者と競合することは十分あり得る。

これを世間では「漁夫の利」という。もちろん得するのは自民党や公明党が押す与党支持候補者である。これでは安倍首相の援護射撃になってしまう。息子の小泉進次郎を本当は影で支援しているのではないかと小泉元首相にはあらぬ疑いを掛けられかねない。少なくとも脱原発行動を分裂させるだけの意味合いしか感じられない。

ところで自然エネルギーの推進というが、これが想像以上に困難を極めていることを細川・小泉両氏は原点に返って理解すべきであろう。既に再生可能エンルギーが全電力の24%を占めているドイツの現状を見れば分かる。不安定なエネルギーでいまだ社会的に混乱していて隣国の原子力に依存せざるを得ない現実を。細川・小泉両氏がまずすべきことは脱原発「先進国」のドイツを視察することだ。