韓国の旅客船沈没事故は未熟な航海士による急旋回や過重な積み荷などで航行不能と沈没を招き、事故中に船長以下が責任放棄といえる対応をとったことでさらに被害を拡大させた。そして韓国政府が確たる情報を把握せず乗客の家族らに不信を広げた。朴槿恵大統領にも怒りが向けられたのは当然であろう。
ただ悪天候による2時間の遅れを挽回するために、不慣れな近道をかなりの速度で旅客船を飛ばしていった背景はあまり論じられていない。実はこの点が事故の隠された性格を物語っているような気がする。
普通悪天候なら、到着が遅れても乗客は仕方がないと思う。しかし、この船舶の乗客の大半が修学旅行の高校生であり、おそらくこの航海は高校の修学旅行に合わせてセットされたツアーだったためにそれが容認できなかったと考えられる。以下は自分の勝手な想像だ。
出航以前に旅行会社と高校の間でスケジュールが綿密に計画されたもの思われる。と同時に旅行料金の交渉もあったろうが、これは高校側の優位で進められたことが想像される。すなわち一度に300人以上の生徒たちが船を利用するという強みで高校側は代金を極力抑えようと努めた。それが保護者の希望に沿うものでもある。
旅行会社と船舶を運航する会社との関係はよくわからない。もしかして同一の会社かもしれない。出発が悪天候で遅れると修学旅行のスケジュールに大きな支障が生じる。ただでさえ料金が値切られているのに目的地に遅れるとなるとさらに旅行代金の減額というプレッシャーが旅行会社や運航会社に掛かってくる。
それが今回の不慣れな近道での強行となったように思う。これも推測だが、出航する港で高校側が時間の遅れに不満をもって「強い要望」を旅行会社や運航会社に示したかもしれない。報道によると、事故後高校の教頭が犠牲者を出した責任感から自殺したが、何かこうしたことと関連がある気がする。
仮に「要望」をしたのが、この教頭であっても教頭を責めるわけにはいかないだろう。問題はやはり、日頃の安全管理を軽視した船舶運航会社に違いない。ただどうも韓国社会にどこか安全よりも経済性、利益を優先させる風潮があるように思う。この高校のもなかったとは言い切れない。
そして政府の姿勢にも問題があるだろう。朴槿恵大統領は70年前の日本側の「人権」を問題視して、慰安婦問題で過剰とも思える態度を崩していない。しかし、そんな虚構にも近い人権擁護で日本を攻撃する前に、まず現在の自国民の人権に取り汲むべきだ。人権の基本というべき国民の安全を。
今回の被害者の多くが韓国の将来を担う高校生たちだったことが韓国政府にとっては衝撃であったに違いない。過去の訳の分からない隣国に対する恨みよりも、自国民、特に若者たちの未来に思いを馳せることこそ必要なはずだ。今は多くの乗客が救出されることを願うのみである。