粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

天使の叫び声

2012-01-27 12:09:12 | 震災全般

今日の産經新聞によれば、宮城県南三陸町の防災対策庁舎から防災無線で町民に避難を呼びかけ続け、津波の犠牲になった女性職員のことが、埼玉県の小中学校でつかわれる道徳の教材に掲載されるという。

遠藤未来さん(24歳)の「大きい津波がきています。早く、早く、早く高台に逃げてください。」という絶叫に近いがしっかりした確かな声。身に迫る恐怖にもめげずに必至に呼びかけていた。その模様は震災直後のテレビで自分も見たが、その声は今でも頭に強く焼き付いている。しかしそのために彼女自身避難が遅れ7mの大津波の犠牲になってしまった。

テレビで流れる遠藤さんの母親のつらいつぶやきも忘れることができない。娘の声が鳴り響く当時の庁舎外部の模様を後でビデオで見た母親は「まだ言ってる、まだ言ってる」と何度も同じ言葉を繰り返していた。既に大津波がビデオから生々しく見えているのに「なんで娘は放送を止めないのか」という母親の無念。しかしそこにはそんな娘をもった母親の誇りも含まれていたに違いない。

彼女の葬儀に駆けつけた町民は口々に「あの時の女性の声で無我夢中で高台に逃げた。あの放送がなければ今自分はいきていなかっただろう。」と涙を流しながら手を合わせたという。

今年になって起こったイタリア客船の座礁事故、後になって明らかになった船長の自己中心的で無責任な行動。女性の必死の避難呼びかけとは余りにも落差がありすぎる。人間の価値は決して地位や資産の有無ではなく、こんな極限でいかに献身的に行動がとれるかで決まるものだということを実感する。