粗忽な夕べの想い

落語の演目(粗忽長屋)とモーツアルトの歌曲(夕べの想い)を合成しただけで深い意味はありません

大河ドラマの楽しみ

2012-01-09 09:47:38 | 一般

最近あまりテレビドラマは見ないが、NHKの大河ドラマは例外だ。毎年欠かさず見ている。昔から歴史が大好きで特に戦国や幕末の英雄が大河ではどう描かれるか興味は尽きない。しかし、ここ2年の大河は正直なところ不発といってよい。一昨年の「龍馬伝」は出演者のミスキャスト、昨年の「江」は人物描写やドラマの展開に疑問が残る。

「龍馬伝」では主演福山雅治がそれなりに頑張っていたが、龍馬の破天荒で豪快な人物像を演じきれず、どうしてもヤワなイケメンのイメージを拭いきれず終わってしまった。恩師の勝海舟も武田鉄矢では重みがなく、人間的な器の大きさや知性が感じられない。お説教好きな「金八先生」あるいは「マルちゃん(カップ麺)のおっさん」にしか見えなかった。龍馬の姉乙女役寺島しのぶ、岩崎弥太郎役の香川照之、山内容堂役の近藤正臣などベテランが好演していたのとは対照的だ。

ただ福山雅治はそれ以前「新撰組」で主演していた香取慎吾よりはましだ。香取の近藤勇は最悪だった。武装集団を束ねるリーダーの風格や威厳が全く感じられず、軽さばかりが最後まで残った。香取は「忍者ハットリ君」や「こち亀の両さん」あたりがせいぜいだろう。

昨年の大河「江」はキャストそのものは概ね適役だった。しかし戦国時代の主役級の信長、秀吉、家康の人物像に本来の歴史を切り開く英雄的要素があまり見られず、矮小化されてしまっている。ドラマの主人公江からすれば、恐く独裁的なおじさん(信長)、わがままで好色な義理のお兄さん(秀吉)、狡猾な狸親父の義理のお父さん(家康)のようにみえてしまう。

また戦国時代のクライマックスともいえる本能寺の変、山崎の戦い、賤ヶ岳の戦い、関ヶ原の戦い、大阪の陣が、ほんの触りだけで付け足したようなあっさりした描き方だった。さらに江の夫の秀忠の人物像も首をひねってしまう。当初の底意地の悪い跡取り息子が、いつのまにか家族思いで国の安寧を願う理想の君主に変貌する。脚本を担当したのは以前「篤姫」で好評だった女性脚本家だが、「江」では空回りしたまま終わってしまった。見る側からするとずっと最後までしっくりいかず不完全燃焼だった。

さて、今年の大河「平清盛」はどうだろう。初回を見る限り、主役の松山ケンイチ、父親忠盛役中井貴一など役者が堅実で安心してみられそうだ。また奇怪な独裁者白河法皇役の伊東四朗の演技はさすがベテランで、独特の味わいがあって見ていて楽しい。ストーリー展開も順当で素直にみられる。今後清盛の宿命的人物となる後白河法皇はどう描かれるのかも楽しみだ。

ところでこの平清盛だが、日本史上では織田信長に匹敵するほどスケールが大きく、魅力的な人物だと思う。どちらも既存の体制の殻をぶち破り新しい時代を切り開いた稀有の英雄である。つまり破壊と創造を同時に行なった天才だ。しかし信長が今日に歴史的に高い評価を受けているのに、清盛は今ひとつの感がある。同じ破壊にしても信長の比叡山焼き討ちは歴史の重要事件としてみられるが、清盛の東大寺焼き討ちはただの仏敵の扱いにされてしまう。清盛の平家政権を滅ぼした源頼朝政権が自分たちを正当化するために、前政権を必要以上に悪く見せようとした結果なのかのしれない。もっと清盛の偉業は評価されてよいと思う。

ともかく、今年の大河ドラマはまずまず順当なスタートを切ったといってよい。松山ケンイチは福山よりは渋い?顔立ちで時代劇向きだ。今後の展開を期待しよう。