旅する小林亜星

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三年

2008-03-04 00:40:08 | 大宮サンセット
プロフェッショナルな彼女と最後に会ったのは
谷中の薬膳カレー屋だった。

3年ぶりに上野のやきとり屋で会う。
あたしにとっては随分待ちわびた逢瀬だった。

3年間まともにベッドの上で眠ったことなんて
数えるくらいだったと振り返る彼女は

死闘を戦い抜いてきただけあって逞しかった。

ここ数年のあたしの主題、
「ノンヴァーバルコミュニケーション」について聞いてみたところ

視覚障害者と犬を相手にしてる彼女は得意げに、こう言った。

「まず相手が自分の気持ちを話したいと思うよな環境にすることに注力する」

今の道にたどりつくまで彼女は苦しかったと言った。
そして今も苦しいけれど、あっぷあっぷしながら進んでるらしい。

コミュニケーションの達人なはずな彼女といて
彼女の「それはなぜ?」と繰り返される、もはや一方通行なコミュニケーションに辟易して

それはまるで面接のようだとあたしは思った。

面接官に評価されたくて
あたしの気持ちを素直に言うことはもはやどうでもよくなっていた。

「それはなぜ?」、あたしもよく使う。

相手の気持ちや、相手のそのときの考えや
見たことのない、そのもの本質の姿をリアルに見たいとき。

けれど「地中美術館」のジェームズ・タレルの「オープン・スカイ」が
もう、とにかくもう、ほんとによかったという感想に対する、

「それはなぜ?」には答えようがない。

それはあたしが考えたことではなくて
ただ感じたことだから。

彼女が今探し当てたひと筋の道にたどりつくまで苦しかったよに
あたしも今すごく苦しいのだ。

彼女はあたしに何かをわかってほしくて
「それはなぜ?」を繰り返したのかもしれない。

うれしいことばかり言ってくれるのが友達ではない。
痛いことも言ってくれてこそ、友達だと思うわけで。

けれどあたしは一方通行な説教より
対等な目線で激闘を称え合える関係がほしいと思うのだけれど。

プロフェッショナルなはずの彼女の接近方法を敬遠してしまうのは
太陽より北風にコートを脱ぎたくなる、あたしの真性Mゆえか。
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