旅する小林亜星

小林亜星情報満載

秀才

2009-05-26 14:04:58 | 青春生き残りゲーム
南島旅行中最終日。

男無しロビンから連絡があったのは
あたしがロビンにダニーデンを去ると伝えていた月曜日の夜だった。

ピーターに会わせたくなかっただけじゃん。

とはいえ時すでに遅し。
あたしはクイーンズタウンに移動したところだった。

もうすぐ日本に帰国するあたしには
NZに戻ってくる機会、さらに言えばピーターに会う機会はもうないだろう。

もしピーターが超おもしろいひとだったらどうしよう。
あたしはNZの指折りのおもしろい秀才と会う機会を見す見す逃したことになる。

とはいえ、日本の地理で例えると
北海道にあたるオークランドから飛行機で
本州の仙台にあたるクライストチャーチに上陸して

バスで東京にあたるダニーデンに移動して
東京から長野にあたるクイーンズタウンに移動して

長野から日本海沿いにあたるウェストコーストを北上して
秋田にあたるグレイマウスからクライストチャーチに戻るという

旅程を計画してたあたしにはもう一度ダニーデンに戻るというのは
かなりの無駄足だった。

それでもおもしろいかもしれないし
おもしろくないかもしれないピーターに会わないというのは不可能な気がした。

ロビンからもらったピーターの家電に恐る恐る連絡してみると
ピーターはなかなか気さくな感じで

火曜日の予定を聞いてみると

「僕のスケジュールを確認させて」と言って

5時に大学の授業が終わったあとにはなんとか会ってもらえることになった。

ピーターに会わずにクライストチャーチからオークランドに戻るのと比較すると
NZ$200の余計な出費。

というわけで
おもしろいひとはたいてい頭がいいけれど
頭がいいひとが常におもしろいとは限らないという持論を

裏付ける新たなサンプルができないことを祈るばかり。

ピーターとの約束まであと30分。
日本に帰国するまであと7日。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

罰金

2009-05-25 16:51:55 | 青春生き残りゲーム
南島旅行中13日め。

旅行中何度かけんかになった仏蘭人Mとも
今日でお別れ。

明日彼女はインドネシアに飛ぶ予定で
あたしは最後にもう一度NZを南下する。

1週間の旅で台湾人女子が2日間飛び入り参加したほかは
ずっと二人きりだった。

クライストチャーチに向かう途中で
Arthur's Passに立ち寄って軽く歩く予定だった。

未婚のあたしたちにもってこいだろうと
あたしが選んだBridal Veilというトラックで事件は起こった。

この一週間彼女の文句にうんざりしてたところに
そのトラックが彼女の期待以下だったことを受けて

「がっかりだわ。
 何も特別なものはなかったし、普通の小道!」と

あたしのNZで最後になるトランピングを台無しにする彼女のつぶやき。

あまりにも長く続くので

「わかった。
 もうおなかいっぱい。
 そこらへんで文句はやめといて」と言ってみたけれど

「やめないわ」と彼女が言ったので

初日にライトをつけっぱなしでバッテリー切れにしたのにも
今日15キロスピード違反で切符を切られたのにも
山道であわやのガス切れにも

きれなかったけれど

今度ばかりはちょっときれて

「帰りは別々に歩こう」と言ったら彼女は

「ただの冗談じゃない。
 ばかげてるわ。
 あなた、いくつなの?10歳じゃない」と言っていなくなった。

頭を冷やしたかったあたしは10分ほど遅れて
駐車場への道をのんびり歩いた。

今日いっしょに旅する最後の日なのに
クライストチャーチでは別々の宿に泊まることになるかもしれないと思いつつ

車に戻って

「ごめん」と言うと

彼女は何も言わずに急発進した。

面倒くさいのでほうっておくと
先ほど罰金をとられたばかりだというのに

曲がりくねった山道を感情に任せて
すごいスピードで運転してるので

このレンタカー、保険に入ってないんだったと思い出して

大事故になる前に事態を収束させようと
ちょっとわき道に停車してもらった。

「ごめん。
 あれはあたしの過ちだったわ。
 ただ頭を冷やしたかったの」と謝ると

彼女は怒りで取り付く島もない状態だった。

「いやでも、あまり速いスピードで運転するとよくないと思うよ」と

付け加えたのが更なる過ちだった。
彼女は再び怒りで車を急発進させた。

「アキ男。はフェアじゃないわ。
 あたしが20分前どんな気持ちだったかわかる?」と彼女は言った。

彼女のほうを見ると
彼女はちょうどひと粒の涙をほほに垂らしたところだった。

!!!

この子供のけんかはどっちもどっちだと思っていたので
彼女の言い分をとりあえず聞き流すことにした。

「今度誰かがあなたに不愉快な冗談を言ったら聞き流すべきだわ。
 ま、あなたはあたしのアドバイスなんてどうでもいいだろうけれど。
 で、アキ男。はそれについてどう思うの???」

と彼女の話の最後に質問され

感情的になって
その感情が心の中にいっぱいになって
思わず泣いちゃうところ、まるであたしみたいと思ったあたしは

嬉しくなって思わず笑ってしまった。

「いや、あなたのアドバイスは覚えておくよ。
 あなた、あたしみたいだなと思って」と言ったら

彼女は

「それ、最悪だわ」と笑った。

けんかをしてもやはり彼女のことが好きで
おもしろいところも文句が多いところもひっくるめて

1週間の旅を通じて
彼女とはほんとうの友達になれた嬉しさに

今度はあたしの涙が止まらなくなって
わんわん泣き始めたら

彼女が

「この会話、ばかげてるわ
 まったくばかげてるわ」と言って

また路肩に停車させた。

二人で泣きながら大笑いして
チョコレートを食べてから

クライストチャーチに向かった。

そんな二人旅。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

衣擦

2009-05-21 19:39:11 | 旅人
南島旅行中9日め。
仏蘭人Mとクイーンズタウンで合流。

彼女が予約してくれたバッパーに2泊。

見事なまでに白人しか泊まってなくて
ホワイトワールドにようこそ、という感じがした。

自分がアジアンであることを思い知らされて
なんだか不必要に少々居心地が悪かった。

男女混合部屋に4人女子と1人男子。

18歳のイギリス人の彼は南米を放浪してから
NZを流して
もうすぐ家に帰るホームシック少年。

ワインをズボンに垂らして齷齪。

2泊目の夜、というか朝5時12分
彼が夜遊びから帰宅。

壁のほうに顔を向けてたあたしには
その部屋の住人ではない女の子の声を聞いた。

どこぞでひっかけてきたんだろう。

ということは彼らはシングルベッドに潜って眠ることになるわけで
もしかしたらセックスをするかも、という考えが

あたしの身体全体を耳にした。

彼らは普通の声よりはささやきに近い声で会話してるままだ。

「いや、あの子はいいこだよ」とか

「彼女にメールしたの?」とか

会話の内容はあまりロマンチックではない。

彼女の声はそれでも、甘くて、眠い。

彼が服を脱ぎ始めた音が聞こえた。
彼のベルトの金属部分がベッドのはじっこにぶつかってかちんと音がする。

いよいよか、いよいよか!

こんな間近で他人のセックスを鑑賞できるなんてと
あたしの脳みそはあんなことやこんなことでフル稼働だ。

寝返りを打つ振りをして
彼らのベッドのほうに向き直りたい欲求を

セックス開始のゴングぎりぎりまで待つ。

彼の着替えが終わったようで
彼がベッドにもぐりこむ。

しばらく衣擦れの音。

・・・寝息?
寝息?

二人は何もせずに眠り始めてしまった。

あたしはあまりの興奮と失望に7時まで眠りにつくことはできなかった。

複数の人間が眠るドミトリーでは暗黙のルールがあると思う。

夜遊びしたいひともいれば
朝早くのフライトのために、まだ暗いうちから起きなければならないひともいる。

荷解きや荷造りはできるだけ
みんなが起きてる時間帯にすべきだし

それが困難な場合はできるだけ静かにやるべきだ。

あるYHAで2人の女連れがベッドを隔てて夜中話してることがあった。
あたしは笑い声で2回起こされた。

「話すのやめてくれる?」と言ったら

悪びれもなく「ごめん」と言われたので

次の日の朝、まだ寝てる彼女たちの眠りを妨げるよに
できるだけ大きな音で身支度した。

そんな性悪なあたしだけれど
なぜかそのセックスをしなかった少年には不思議なほど

腹が立たなかった。

彼のセックスに期待した罪悪感は
なんだかクリトリスに指を這わせたよな後ろめたさで

その未遂に終わったセックスの共犯のうちのひとりのよな気がしたせいかな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

依存

2009-05-18 07:33:36 | 青春生き残りゲーム
南島旅行中6日め。
ダニーデンからクイーンズタウンに移動する今日
今何をしているかというとインターネットカフェのPCの前。

数ヶ月前から青い眼をした、
かわいいかわいいカレシとホームステイしてるドイツ人が中毒になってる、
ドイツのオンラインゲーム「The Runes of Magic」。

ゲームを始めると夜中までやってるカレシに業を煮やしていたら

アキ男。もはじめてみたら?ってことで
しぶしぶ参戦してみたら、すぐに中毒になった。

あたし、溺れ易いからいやだって言ったのに。

自分のキャラクターをスキルアップさせながら
ほかのキャラクターとミッションを遂行していくという

どこにでもありそな普通のゲームなのに

コミュニケーションスキルや
ネゴシエーションスキル、
精神的忍耐力まで必要となる彩り。

達成感を煽られるあたり、さらに依存的。

あたしとホームステイしてるドイツ人の高校生は男性のキャラクターで
カレシは女性のキャラクター。

現実の生活では得られない男性としての強さを追求したり
自分の性とは反対の性に憧れを抱いたりと

奥の深さまで感じる。

仮想世界の男性になってみて
助けてほしいときに助けてもらえなかったり

冷たくされた男性キャラクターに
自分は実世界では女性であることを匂わせてまで助けを乞うたりと

今まで女性であることの目に見えない利点を享受してきたことまで思い知らされる。

さらに最初は抵抗があった生き物を殺すというアクションさえも
何十時間も何日も続けているとだんだん抵抗がなくなってきて

これなら誰かがいつか言ってた、

「ひとを殺すことがどういう感覚なのか知りたかった」という

局面に至ったのもわからなくはないと思った。

カレシ宅には家族用のインターネットと
ホームステイしてるドイツ人の高校生が自分で契約したインターネットがある。

ホームステイしてるドイツ人の高校生は自分のPCでプレイして
カレシはゲーム用に新しいPCを購入し、ネットカフェに行き
あたしは家族用のPCを拝借して

3人でプレイすることもあった。

最高のプレイ環境にするために
ネットワークの知識やら、PCのハード面の知識やら

ゲームのためならどんなことでもしようと思わせるほどの魔力が
ゲームにはある。

今まで気づかなかったけれど
ゲーマーがネットワークに強いのはここに理由があると思った。

そして貴重な交通費と滞在費を払って南島にやってきてまで
PCの前に座ってるあたしはかなりの中毒症状だ。

目をつむるとゲームの世界にログインする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

男無

2009-05-16 08:51:38 | 青春生き残りゲーム
南島旅行中4日め。
クライストチャーチで「The Lord of the Rings」オタクツアーに参加したあと
次にやってきたのがダニーデン。

なぜここに来たのかといえば、
男後のロビンの友達がここに住んでるから。

その友達ピーターはロビンの大学時代の友達で
しばらくイギリスのオラクル社で働いてたとか。

オラクルがまだ小さいころから働き始めて
今のオラクルにしたのは実は彼なのだとか。

一生遊んで暮らせるだけの大金持ちになった彼はNZに帰国して
また新たなキャリアを積むべく
ここダニーデンでオタゴ大学に通ってるのだとか。

お金目当てに寄ってくる女性は少なくないのに
未だ独身らしい。

今年はじめにロビンがピーターの家探しを手伝ったときは
週NZ$350程度の一軒やを契約したのだとか。

一人暮らしなのに!

オラクルの製品にはとんと関わりがないけれど
DBの神様、少なくともかなりの秀才とごはんを食べてみたいと思った。

数ヶ月前にロビンにピーターを紹介してと言ったときはOKだったのに
先週からロビンにピーターの連絡先を教えてとメールしてるのに返事が来ない。

切羽詰って昨日はロビンの職場に電話して

「折り返し電話をくれたら幸い」という留守電まで残したのに梨のつぶて。

あたしはロビンの機嫌をどこで損ねたのだろう。

というわけでNZの指折りの秀才とは
縁がなかったということで。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

的鯛

2009-05-14 15:49:29 | 恋のうた
青い眼をした、かわいいかわいいカレシ兄の嫁が
家族旅行のボートフィッシングで

「John dory」という、
口の大きさが大人の握りこぶしくらいある魚を釣り上げてからというもの

青い眼をした、かわいいかわいいカレシとあたしの間で流行らせたのが
John doryキス。

互いにただ口を大きく開けて
「お」の口でキスをするという愚行。

その状態で舌を絡ませて

「フレンチJohn doryキスだね」とあたしが言うと

青い眼をした、かわいいかわいいカレシが
発音するとき鼻から息を漏らして

「Jean doryキスだね」と言った。

カレシと出会った語学学校の授業中
英語の教師を目指してるカレシがあたしのクラスに見学に来たとき

好きなタイプの異性の条件は?という英作文の授業をしていて

「めがねをかけてる、おもしろいひと」と書いたあたしの作文を

ちょっと直したカレシの、そのおもしろさに嫉妬さえする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

頭皮

2009-05-12 19:29:48 | 恋のうた
青い眼をした、かわいいかわいいカレシと
NZでは最後になるだろうセックスをした。

ダブルベッドの上で

青い眼をした、かわいいかわいいカレシの日本行きの荷物と
あたしの南島行きの荷物の脇で。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする