溺れる者はストローをも掴む

社会人２年目の営業マン時代のこと。
よく同行してた２コ上の女の先輩。

一日の２／３は時間を潰していたカフェで
ストローが入っている紙のつつみ。

これをこよりにして
結び目を10個作れたら
夢が叶うんだよ、と彼女。

やってみるとけっこう難しい。
それでも10個作れた。

「だってあたし、今の旦那さんと結婚できたもん」
とさらに彼女。

その２年後には
自ら不倫に走り、別居に至った
彼女の夢のその後はどうなんだろ。

とはいえ、それから
ストローがあれば
あたしはところ構わずこよりに結び目を作る。

夢を叶えるのは自分だけど
何かに依りたいのも正直なところ。

大往生

ＣＣＮＡ受かりました。
３ヶ月で取る予定が１年もかかっちまった。

待ち焦がれていた合格の文字に
涙ぐんだ。

文系のアタマを理系に切りかえるのに
手間取っただけ。

Ciscoにいくら払ったんだろ。

ＣＣＮＡは登竜門か。
次はＣＣＮＰ。

荒川13年の秘宝

４月16日、今年４戦目になる
荒川オープン３部に姫と出る。

３部といえども
荒川はレベルが高いとビビリ。

２回戦までは楽勝も
準決、決勝は
セッティング、ファイナルまみれ。

コース選択ミスで
姫に苦しいショットを打たせる場面が
何度もあった。

これからの大きな課題。

公式戦初のバックサーブは成功率９割超え。
安全だし、安定。

結局、優勝まで辿り着いた。
久々の優勝はすごく価値があって
すごく嬉しいものだった。

３部だって
なんでも一番になるのはすごいことだ。

優勝商品の赤いラケットバッグより
何より嬉しかったのは
荒川の歴史に名を刻んだこと。

毎回のプログラムに歴代の入賞者が明記され。
荒川オープンが続く限り。

姫といつかは１部に名を刻もうと誓い合った。

こんな夜にはこんな読書「介護入門」

「爆笑問題のススメ」に出演してた
モブ・ノリオを見る。

言葉の選び方や間の取り方、
なんてセンスのいいひとだろうと思う。

彼の外見からは予想もつかないよな著書のタイトル
「介護入門」を借りる。
芥川賞受賞だからといって
彼の人となりを知らなければ
借りようなんて絶対思わないタイトルだ。

そんな読者の前倒しの敬遠さえも
敢えて狙った感アリ。

さらに本の表紙には
「介護」という文字とは相応しくないはっぱの絵。

絵の下には「４８９」の数字。
どんな意味があるんだろうて気になる。
散々調べてみたが、推測の域を越えない。

そんな風にあたしが気になるのも
きっとノリオはお見通しだ。

で、本題の内容だけど
かなり口汚い言葉が大半を占めていても
要介護ばぁちゃんへの気持ちが滑りこんでいて
あたしは何度もあったかい気持ちに涙ぐんだ。

そしてひと言ひと言が濃厚だ。
単語が凝っている。

気に入った部分を引用。

二時間の眠りを裂いて祖母の陰部を拭き、
また二時間眠って朝の襁褓を仕替える、
そのために一日の残り時間は滅茶苦茶に荒み果てる、
日々俺死ぬ、故に我あり。

糸電話

すごくすごく勉強したので
自分にご褒美。

美容師の携帯に電話してみた。

テレビの音を下げて
ベッドの上に正座。
そして深呼吸・・・

チャンスは５コールまでと決めている。
心臓が破裂しそうになりながら
４コール・・・

「もしもし、」

テンションの選定に戸惑う。
休日の終わりごろに部屋の掃除と挌闘していたらしい美容師は
かなりの緩め。

軽く雑談をしたあと本題へ。

「一度くらいごはん食べ行きましょうよぅー」と言ってみる。

何故って、
あたしはいつも髪を切ってもらう２時間では話し足りないのだ。
もっと美容師の発する言葉を食べたい。
美容師が発するものを吸収したい。

あたしの誘いに対して
美容師は
「いつも足りない感じがええやろ。
　会って話したら、俺がほんとは薄っぺらなのがバレちゃうから」

と、やんわり断られた。

苦いよな、ほっとしたよな気分。

美容師にあたしが求めているのは
もはや恋愛感情ではなく
つながり、だ。

何年経っても
蜘蛛の糸のよに細くても
どこかで
つながってること。

それがあれば
もう何も要らないのに。

糸

「今夜は美容師に会える予感がする」
と毎晩思いながらバーミヤンに向かう。

今夜もまるで日課のよに、そう思った。

バーミヤンにつき
参考書を机の上に並べ
さてと勉強を始めようとしたところ
右35度前方に美容師が笑って立っていた。

・・・全身が凍りつく。

「勉強中？」

口の中ではぅはぅ言いながら
何かしら言葉を放とうとするも
動揺を隠しきれない。

彼はいつものよにお店のひとといっしょで
「もぅ、帰るんですか？」と聞くと

「おぅ、じゃ、携帯教えよか」

え？

えぇ～？？？
今、なんと？
け、携帯？？？

あまりの展開に着いていけず
ぼーっとしてると
彼は自分の携帯番号を表示させて手渡してくれた。

携帯はａｕだ。
メールができないと本能的に思う。
そそくさと彼の番号を自分の携帯に入力し
発信する。

あたしの番号が→→→→→
美容師の携帯に着信する。

２ヶ月前まではあれほど欲しかった、
美容師と客以外の店の外でのつながり。
あっけらかんと繋がってしまった。

美容師が立ち去ったあと
心臓は脳みそをドキドキで食い尽くし
しばらくの間放心状態だったことは
言うまでもない。

夢＊出戻り＝輝くかもしれない未来

こんなメールが送られてきた。

>初めまして。私はテレビ朝日『銭形金太郎』という番組で
>リサーチ業務を行っております、
>ザ・ニュースという会社の橋本と申します。
>「恋する小林亜星」というホームページを拝見させていただいて、
>メールを送らせていただきました。
>現在番組では出演希望者を男女問わず、
>年齢問わずで広く募集しております。
>数社が並行して出演者募集をしておりますので、
>何度もメールが行っておりましたら、申し訳ありません。
>この番組は“生活は苦しいけれど、
>夢を持って前向きに生きている”という方を応援する番組です。
>くりぃむしちゅー・ＴＡＫＥ２東・ビビる大木・ｕ－ｔｕｒｎ土田といった
>お笑い芸人がご自宅におじゃまして、
>普段の生活ぶりを番組で紹介させていただくという内容になります。
>番組で探している方はどこにでもいらっしゃる為、
>どこに連絡をすれば見つかるという物でもありません。
>その為、ジャンルを問わず様々な所で
>出演者募集をさせていただいております。
>出演条件は一人暮らし、ルームシェア、同棲等で、
>自宅撮影が可能な方です。
>年齢・性別・国籍は問いません。
>”生活は苦しいけれど、夢を持って前向きに生きている”
>という事も出演条件です。
>目指している夢のジャンルは一切問いません。
>生活を切り詰めてでも、
>夢を追っているという方を広いジャンルで募集しております。
>番組にご興味がございましたら、
>一度、お電話でお話をさせていただければと思っております。
>ご自身でなくともお知り合いの方で
>番組にご興味がある方でもかまいません。
>お手数ですが、お話をさせていただける方がいらっしゃいましたら、
>ご連絡をいただきたいと思います。
>突然のお願いで大変申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い致します。
>
>番組名：『銭形金太郎』
>放送局：テレビ朝日系列
>放送日：毎週水曜日　２０時～２０時５４分
>テレビ朝日『銭形金太郎』　リサーチ担当
>有限会社　ザ・ニュース
>東京都千代田区神田神保町１－２９　祥宏ビル３Ｆ
>担　当：橋本 和也

深夜放送枠のころには
毎週欠かさず見ていた銭金。

ネタになるよな、間を心得てる素人さんて
なかなか見つからないんだろうなぁ。

確かに生活は苦しいし、
夢を持って前向きに生きている。
冷蔵庫には半年以上前に作ったカレーが
鍋ごとカビの花を何輪も広げている。

「貧乏」と「夢」というキーワードならひっかるけど
生活を切り詰めるほどストイックに
夢を追いかけてない自分に気づいた。

なので近々に隣りの区にある実家に戻ることにした。
夢を叶えるための貯金をするために。

あれほど自立のすゝめを提唱していたけれど
出戻りと言われようがかまいませぬ。

つきましては不要品を引き取っていただける方
貰ってください。

冷蔵庫
洗濯機
蓋壊れた炊飯器
アイロン
食器類
などなど

もし銭金に出ることがあるとすれば
土田においしく料理されたかった。

バーミヤンのちょっといい話

今夜も行きつけのバーミヤン。

クーポン使用のドリンクバーで105円。
３時間。
あー、あたしって嫌な客・・・

と、そこへ部屋着に健康サンダルつっかけた
おじいちゃんが隣りに座る。

小生とバーミヤンラーメンをオーダー。

小生を飲みながら
「お嬢さん、お嬢さん」と話しかけられる。

英語の勉強をしていたあたしに
「センター試験受けるのかい？」と
突拍子もない質問。

「いえいえ、もうとっくに社会人です」と返答すると

「いやぁー、うちの孫もね
　今年受験してさ、
　法政の法科と学習院の法科と立教の経済と明治学院受かってさ」
と、孫の自慢をおっぱじめた。

あまりに嬉しそうなので
「すごいっすねぇー」と相槌。

結局、法政に行くことにしたらしく
今日はクラス分けの英語の試験だったらしい。

こんなかわいいじいちゃん持った孫は
さぞかし幸せだろうなぁと思う。

帰りがけに
「一生懸命がんばってね」と声をかけてくれた。

４人の祖父母を中学生までに亡くしている
あたしには不思議な、あったかさ。

そしてなぜか今夜はいつも以上に勉強がはかどった。

こんな夜にはこんな読書「砂の女」

頻出の美容師が
中学生のときに読書感想文で大賞をとったという
安部公房の「砂の女」にとりかかる。

な、なんておもしろいの？？？
こんなに蠱惑的。

冒頭に結末を述べてあるから
過程にそんなに期待できないはずなのに
もしかしたら？といろんな結末を想定してしまう。

有り得ない設定に苦しいほど
もどかしいもどかしさを擬似体験させられたまま
引き摺られる快感。

理屈っぽい教師が漏らす言葉に隠された、
寓話のテーマまで読み取れる余裕もなく。

中学生だった美容師が
どんな感想を抱いたのか、聞いてみたいところ。

あぁ、喉が乾く。

そして、フェティシスト

実はかなりの眼鏡フェチだ。

しかしただ単に
見目麗しい男が眼鏡をかけている様より
眼鏡が顔の一部として溶けこんでいる方が
そそられる。

例えば
古田敦也。

例えば
八嶋智人。

例えば
Tommy february6。

例えば
野比のび太。

それでも恋に落ちるとき
外見のプライオリティは下位なので
今まで眼鏡付きの男と付き合ったことはないのだけれど
ベッドで迫られるときに体験できるであろう、
明石家さんまが恋カラで陶芸家に眼鏡を外させるよな
エロティックな興奮は想像しただけで湿る。

ところで
普段はコンタクトなのに
花粉症重症な上司は最近、
紺縁の眼鏡をかけている。

元々かなり甘い顔が
眼鏡をかけることで所謂エロい顔になっている。

まじめな会議中に発言する彼の眼鏡は
あまりにセクシーで
あまりに不まじめな妄想を誘発する。