旅する小林亜星

小林亜星情報満載

酉市

2010-12-08 23:25:50 | 美容師
惑髪の創造者、あたしの美容師が
9月に京都に念願の美容室をオープンさせたというので

川床してみたことないし
夏の間に行こう行こうと思いつつ

たらたらと日々は過ぎていくので
思い切って11月13日に偽名で美容室の予約をとった。

びっくりさせたくて、ストーカー紛い。

ホームページでは見ていた、
美容師の人生をかけたアーティスティックな城に

どうしても何か贈り物を!と思ったけれど
ふさわしいものは何も思いつかない。

ふと思いついたのは11日の夜中のこと。

花園神社の蛇女が大好きだった美容師のために
花園神社の熊手はどうだろう!

しかもちょうど熊手の時期だし。
縁起ものだし。

と思ってしこしこ調べてみたが
運悪く、一の酉は前の週の週末、二の酉は次の週の週末で

すでに12日深夜に京都行きの夜行バスを予約したあたしには間に合わない。

一の酉と二の酉の間って
花園神社に行けば

屋台ひとつくらいイレギュラーに営業してんじゃんという勢いで
夜行バスに乗る4時間前に花園神社に行ってみる。

予想に反して花園神社のヤクザはすごい統率力なのか
たこ焼きの屋台ひとつ、開いてなかった。

肩を落として
花園神社の表に飾ってある特大熊手の写真を撮って諦めかけたところ

境内の詰め所のようなところに
おっさんが二人酒を酌み交わしてる。

溺れる藁、藁とつぶやきながら

「あのー、この辺で今日熊手買えたりするとこないですよね」と訊いてみると

「あるよ、うち、うち」とおっさんのひとりが手を挙げた。

「いくらのほしいの?」というので

「あんまり高いのは買えないので、5000円くらいのとかありますか」と言うと

言ってみるもんだ、

おっさんはビニールシートがかかった、境内の一店舗を開けて
懐中電灯で商品を見せてくれた。

5000円というのは足元を見られたのか
はたまたそういうものなのか

紙でできたちんけなやつだった。

「花園神社のシールとか貼ってないんですか」と言ったら

奥のほうから探し出してくれて
その5000円のやつにきれいに貼ってくれて

「はい、これでいいね、貼っちゃったから5000円」と言われた。

それをくださいとも言ってないけれど
的屋の商売はそういうものなのかもしれない。

無理を言って
1.5の酉をやってくれたので感謝こそすれ。

というわけで生まれてはじめて買った熊手は5000円だった。
もう二度と買うことはないと思うけれど。

で、熊手というのは福をかき集めるものなので
家に帰るまで袋には入れちゃだめだよと言われた。

それを持って電車に乗ったら、注目をかき集めた。

夜行バスにいざ乗りこんで
紙でできた熊手がぐしゃぐしゃにならないか心配のまま、眠りに落ちた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

惑髪

2010-02-05 23:15:55 | 美容師
あたしのビューティフルライフ②の、
美容師は来月ここを去ることになった。

今日いつものよに予約をとって
美容師に会いにいくと

「今日が最後かもしれない」と言われた。

いつかそんな日が来ると知ってたから
別段驚きもしなかったけれど

髪の毛を切ってもらう過程で
どんどん悲しさではない何かが髪の毛の先からしみ出した。

6年前に一目惚れしてから

電話番号もゲットしたし
年賀状も送ったし
写真もいっしょに撮ったから

思い残すことはないのだけれど
やっと見つけた美容師の代わりを今度はどうやって見つければいいのだろう。

あたしを鏡で見つめられるよな
あたしにしてくれた美容師を。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

削身

2009-10-10 02:43:08 | 美容師
もうすっかり「旅する小林亜星」の存在を忘れてたはずの美容師から

「また ブログが おもしろくなってきたな~」とメール。

NZに行ってからというもの、
あたしは昔のブログを書いてきたあたしに嫉妬してきた。

もう二度とあんな言葉たちは紡げないと。
思考の片隅に浮かんできたりしないと。

でもいいのだと。
あたしは長年かけて築いたルサンチメンに解放されたのだからと。

そんな惰性のブログでも美容師におもしろいと言われれば
頬の筋肉は緩むわけで。

最近のあたしのブログがおもしろくなってきたと35歩譲ったとして
それはあたしが万歳して幸せなわけではないから。

うつの恩返しと言わんばかりに

不幸を纏って身を削ってしか
おもしろい言葉を紡げないのなら

あたしは甘んじて幸せであることを選ぶ。
小さくまとまったとしても。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

裏切

2008-09-07 21:48:17 | 美容師
日本で最後に美容師に髪を切ってもらってから
早4ヶ月。

すごく気に入ってた髪形だったし

4年前に美容師に出会ってからというもの
ほかの男には髪の毛を触らせたことがなかったし

郷に入っては郷に従えポリシーで
NZに来てるのに日本人の美容師に行くのも癪だったし

かと言って行き当たりばったりで入った美容院で
どういう髪型にするのか日本語でも説明する自信がなかったし

そんなところでいっしょにバドミントンしてる中国人の嫁が美容師で
東京で言うと銀座みたいな場所で美容師をしてるというので

しかも友達割引で切ってくれるというので行ってみた。

「どんなふうにしたいの?」と聞かれ
雑誌なども彼女は示してくれたけれど

件の美容師にはいつも
「適当に切ってください」と言ってたので

彼女には
「ストレンジな感じに切ってください」とお願いしてみた。

彼女はなんとかあたしの言わんとすることが掴めたらしく
今のアシンメトリを活かしたまま

不思議ちゃんに仕上げてくれた。

剃刀が髪の毛に当たる感覚が心地よい。

件の美容師がまだ宿ってる気がした。

4年前のあのときと同じよに
鏡の中のあたしに見惚れた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

浮草

2008-05-19 00:15:22 | 美容師
東京を出ようとしてる美容師に

「参考までに日本で東京以外にどこでも住まわしてやるって言われたら
 どこに住みたい?」と聞かれ

うんうん考えてみたけれど
屋久島以外には思いつかなかった。

ここ数年は国内けっこうあちこち行ったというのに。

毎年言ってる小豆島はあたしには歩く島であって、住む島ではないし。
旅行だけでなく住みたいと思える場所はなかなかない。

その中でも屋久島だけは
本気で住むことを想像した場所。

南の島だったらどこでもいいんじゃないのという美容師の突っ込みに

いやいや、南の島と言えば
沖縄本島と三島村(硫黄島・黒島・竹島)しか行ったことがないけれど

南ならいいってわけじゃなくて
やっぱり屋久島がいいのだと。

でも結局は住めば都かと。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

完結

2008-05-18 22:11:36 | 美容師
これから一年髪を切らなくていいよに
短めに切ってくれる美容師。

「最近セックスすることが面倒で、あまり気持ちよくないんです」というと

「なんでかわかる?愛がないからだよ」と耳元でささやく美容師。

散々愛のないセックスを繰り返してきた美容師が
愛するひとをとうとう見つけてしまったみたい。

結局一度も美容師とセックスできないままに。
代わりにこれから先ずっと本の話ができる関係に。

東京を離れようとしてる美容師にまたあたしを切ってもらえますよに。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

茜空

2008-02-28 00:31:09 | 美容師
「今日の夕焼けはあたしよりきれいだ。」

そんなメールを送って
カーテンを開けてみてくれそうなのは美容師かなと、思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蛇女

2007-11-25 00:55:56 | 美容師
美容師が大絶賛してた、見世物小屋の「蛇女」。

21世紀になっても
そんなアナログな芸が見れるなんて。

美容師の情報、
花園神社の酉の市で見れること
蛇女の名前は小雪太夫といい、
「ゴキブリコンビナート」の女優さんということ。

けれど花園神社のサイトからも「ゴキブリコンビナート」のサイトからも
蛇女が何時からどうやって見れるのかはわからず仕舞。

膨大なインターネットの、きっとどこにも
正式に書かれてないのがまたいいのかも。

最後の手段で花園神社に電話をかけてみれば
「見世物小屋や出店を仕切ってる団体があるけれど
 その名前や連絡先は教えられないことになってる」とのこと。

仕方ないので実際に行ってみる。
夕刻。

大蛇を丸呑みする女、というイメージ。
・・・を覆されて、小蛇をひと口齧るという感じだったけれど

エンターテイメントとしては最先端。
次にはどんなすごそなものを見れるのだろうと煽られる、昭和臭が鼻をつく。

ビックリボックスから小峰太夫が奇跡の生還を果たしたと思ったら
あたしの鞄から財布が奇跡の脱出を図った模様。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

前髪

2007-10-01 00:48:51 | 美容師
日曜の美容室。
雨で細い客足。

久々に真剣に切ったという美容師が
あたしという、その作品を見てひと言。

「モード系。
 かわいい。」

今度こそ伸ばそうと思っていたのに
くすぐったくて我慢できなくなった襟足。

頬にかかる長い前髪。
あんみつ姫みたい。

かわいい。

新しい髪型と新しい気持ち。
今日から、ここから。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奴隷

2007-09-30 22:19:37 | 美容師
バドミントンをした。
映画を見た。
オナニーした。
好きなだけ寝た。
部屋を掃除した。
食べたいものを食べた。
自転車ミーコの点検・修理をしてもらった。
買い物をした。
本を読んだ。

それでも居た堪れなくなって
美容師に会いに行った。

言葉の奴隷に成り下がったなと言われ。
考えるのではなく感じろと。

言葉から解放されるには
ではどうしたらいいのだろう、と早速思考に走るところ
すでに言葉の病気なのかもしれない。

徐々に言葉離れを試みてみる。

言葉から解放されない限り
あたしは誰と恋愛してもうまくいかないのかもしれない、
と考えてるあたしもすでに言葉に隷属していて。

これってデカルトみたいだ。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする