ひとあし先に人妻になった、珠玉のたまにの
珠玉な結婚式でのこと。
久々に知らないひとばかりの中に放り込まれ
ちょっと知ってるひともいたのに
「ゴブサタデスー」と言って輪に入っていく気力やスキルをすっかり無くしてたせいで
立食なパーティの間
ほぼトイレにこもってた。
どうしてこうしてつまらない女になった。
パーティが1時間ほど過ぎたころ
それでも時間を持て余してひとりでぽつねんと座っていたところ
あまりに物欲しそに見えたのか、
2人組の男のひとが話しかけてくれた。
ちょっとほっとして
3日ぶりに食べ物をもらった犬のよに尻尾を振ってみる。
彼らはたまにの書道サークルのひとたちと名乗り
2人組のひとりが小話的に筆跡鑑定を勉強してるとのこと。
ひとが名前を3回書けば
その筆跡から、ある程度の性格は読み取れるらしい。
「これ、合コンのネタには最高ですね」と言うと
鑑定男は左手の薬指を見せて苦笑。
鑑定男の連れの男が名前を書いたあと
あたしもその鑑定をしてほしくて
というか、その鑑定男に名前を知ってほしくて
名前を書いて、それを鑑定してもらった。
鑑定男は、んーと言いながら
「最初は適当に始めるけど、最後だけはちゃんと貫きたいひとでしょ」
「自分の空間にあまりひとに立ち入ってほしくないひとでしょ」
「10個物事があったら、ひとつだけ自分らしいこだわりがほしいひとでしょ」
と言った。
最後のひとつしか首肯できなかった。
こんなときかわいい女というのはどれも当たってるふりをするのだろうかと
鑑定男に肯定してほしいという思いが頭を過ぎる。
あたしがもうすぐ結婚することや
鑑定男の結婚式の話や他愛のないことをグダグダ話してるうちに
あっという間にパーティは終わってた。
飲み物ラストオーダーの連絡が来たけれど
お尻が重くなってたあたしはもう飲まなくていいやと座っていたら
鑑定男が「何か飲みますか」と訊いてくれた。
すべての所作が完璧な鑑定男。
彼はかわいそうな女に慈善事業を施し、深入りせずに佇んだだけなのだろう。
深入りしたい。
帰るときに
クロークからコートを受け取る列でまたいっしょになったので
ひとことだけ伝えたかった、
「いろいろとお気遣いいただきましてありがとうございました」と言った。
どこまでも如才ない身のこなし。
これ以上いっしょにいたら
連絡先を聞きそうになってしまうので
エレベーターを降りたところでさよならする。
小さい恋の終わりだった。
数年前には持ち合わせていたはずの
知らないだれかと話すスキルを、知らないだれかを知ろうとする好奇心を
どこに置いてきちゃったんだろう。
珠玉な結婚式でのこと。
久々に知らないひとばかりの中に放り込まれ
ちょっと知ってるひともいたのに
「ゴブサタデスー」と言って輪に入っていく気力やスキルをすっかり無くしてたせいで
立食なパーティの間
ほぼトイレにこもってた。
どうしてこうしてつまらない女になった。
パーティが1時間ほど過ぎたころ
それでも時間を持て余してひとりでぽつねんと座っていたところ
あまりに物欲しそに見えたのか、
2人組の男のひとが話しかけてくれた。
ちょっとほっとして
3日ぶりに食べ物をもらった犬のよに尻尾を振ってみる。
彼らはたまにの書道サークルのひとたちと名乗り
2人組のひとりが小話的に筆跡鑑定を勉強してるとのこと。
ひとが名前を3回書けば
その筆跡から、ある程度の性格は読み取れるらしい。
「これ、合コンのネタには最高ですね」と言うと
鑑定男は左手の薬指を見せて苦笑。
鑑定男の連れの男が名前を書いたあと
あたしもその鑑定をしてほしくて
というか、その鑑定男に名前を知ってほしくて
名前を書いて、それを鑑定してもらった。
鑑定男は、んーと言いながら
「最初は適当に始めるけど、最後だけはちゃんと貫きたいひとでしょ」
「自分の空間にあまりひとに立ち入ってほしくないひとでしょ」
「10個物事があったら、ひとつだけ自分らしいこだわりがほしいひとでしょ」
と言った。
最後のひとつしか首肯できなかった。
こんなときかわいい女というのはどれも当たってるふりをするのだろうかと
鑑定男に肯定してほしいという思いが頭を過ぎる。
あたしがもうすぐ結婚することや
鑑定男の結婚式の話や他愛のないことをグダグダ話してるうちに
あっという間にパーティは終わってた。
飲み物ラストオーダーの連絡が来たけれど
お尻が重くなってたあたしはもう飲まなくていいやと座っていたら
鑑定男が「何か飲みますか」と訊いてくれた。
すべての所作が完璧な鑑定男。
彼はかわいそうな女に慈善事業を施し、深入りせずに佇んだだけなのだろう。
深入りしたい。
帰るときに
クロークからコートを受け取る列でまたいっしょになったので
ひとことだけ伝えたかった、
「いろいろとお気遣いいただきましてありがとうございました」と言った。
どこまでも如才ない身のこなし。
これ以上いっしょにいたら
連絡先を聞きそうになってしまうので
エレベーターを降りたところでさよならする。
小さい恋の終わりだった。
数年前には持ち合わせていたはずの
知らないだれかと話すスキルを、知らないだれかを知ろうとする好奇心を
どこに置いてきちゃったんだろう。