やさしいキスをして

月曜日はどうかしてた。
男の傷は男で埋めようと
あたしの触覚を刺激する桜貝のひとを勢いで飲みに誘い
14日に会う約束をとりつけた。

その直後に忙殺されてるW子さんから
14日に定時で上がる予定だから飲もうとオファー。

セックスで寂しさを紛らわすよな痛い女にはなるなという
神の思し召しなのだと理解して
桜貝のひととの約束をキャンセルし
W子さんと会うことにした。

桜貝のひととはよほど縁がないのだろうと思った。

今日になってやはりW子さんが会うのは忙しさで厳しい局面だったので
桜貝のひとに謝って会うことを打診した。

月曜日よりは幾分冷静になって
あたしは桜貝のひとをやはり欲していた。
これは神のゴーサインと受け取ることにした。

けれどフられたのでセックスしたいです、では
ただの痛い女でしかないので

セックスしたいです、と
秋葉原のTOMPOOYAというアジアンダイニングの２畳ほどの個室で
酔いに任せて打ち明けた。

桜貝のひとはセックスする代わりに
猫が飼い主を舐めるよにやさしいキスをしてくれた。

左唇にそっとキスしてくれた。

桜貝のひとの肌に触れるだけで
桜貝のひとに肌に触れられるだけで
やさしい気持ちになり満たされた。

桜貝のひとは乳を触るというより
包み込むよに愛撫してくれた。

こんなふうに触れられたのは初めてだった。
女体を知り尽くした分別のあるひと。

快感と癒しが交互にやってきて
セックスより暖かいものをもらった。

抜き差しだけがこの世の全てではないことを
知った。