旅する小林亜星

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To be or not to be, それは選べない。

2004-12-07 00:50:30 | 
彼女の父親に会ったのは
3年くらい前だ。
あたしがたまたま売ってた医療保険を買ってくれた。
病気ひとつしたことないらしく健康そのもの。

そんな彼が癌に冒されたのは去年のことだった。
早期発見だったし、手術をして仕事復帰してたので
完治したものと思っていた。

ひと月ぶりに彼女と会うと
「もぅお父さん、ダメなの」と
彼女は言った。

肝臓に転移していて
手の施し様がなく、
年を越せるか、越せないかの様態。

彼は今月還暦を迎える。

すごく大切なひとの、すごく大切なひとが
いなくなろうとしている。
生きているのに、死を受け入れること。

きっと自分の命以外だったら
もしかしたら自分の命を犠牲するくらいの
どんな代償を払っても守りたい命が
今消えようとしている現実を受け入れられる筈もないのに
彼女は涙をこぼさなかった。

ただひとこと、
「お父さん大事にしなよー」と。

親孝行したいときには親はなし、と
いつか必ず後悔しそうだと思ってるくせに
彼らを大事に思ってることを素直に伝えられないあたし。

今一番の親孝行といえば
隣りの区に住んでる彼らと同居することだ。

もぅちょっとだけ、
折角手に入れた自由を満喫したい、ひとり暮し5年。
照れ隠しにオレオレ詐欺に万が一遭遇したときのために
あたしが働いてるオフィス直通の電話番号を母にメールしといた。

そして、
父親の死を覚悟した彼女にしてあげられたことは
話を聞くことと
ひたすら笑わせること。
それと、あたしが決して泣かないこと。
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