中学の同級生に誘われ、漁労長に紹介されて
宮城県、気仙沼市の大型流し網漁船
「第１８徳寿丸」 288ｔ に乗船する事が決まりました。
この船は遠洋鮪延縄漁を改造し、流し網漁に転換する
初の航海という事で、当時、主流だった
母船式鮭鱒流し網漁に乗り組んでいた方々が
公海上での「ムラサキイカ」を漁獲する漁（イカ流し）を
新規に行うというこの船に期待して集まってきていました！
自宅で17歳の誕生日を過し、2月初旬、ついに出港！
この航海は「イカが禁漁時期」の為「大目流し」
（カツオやトンボ、カジキ等を漁獲する大きな目の網）
気仙沼港からの出港でしたので
家族や中学の同級生（高校生）に見送られての出港です。
静岡からの出港では感じなかった事、
「目頭が熱くなる」を感じ、
うつむいていた事を憶えています。
同級生2人が乗船しており、同室・上・下・隣の寝台
でしたので航海中は共通の話題が多く楽しかった。
しかし、操業が始まると、流し網漁の経験者！と
新人である自分との経験の差がはっきりと出た！
カツオ漁の経験はここではあまり役にたたない
「漁種」である事を痛感した！
（竿で釣っていた魚を、網で獲る。）
最初はとまどいが多く、同級生のしている
仕事を真似るしかなかった。（情けなかった）
当然、乗組員の方々の目からは差が歴然で
早く仕事を覚えたい！早く同級生に追いつきたい！と
思いながらの毎日であり苦しく、辛かった！
が自分の中で、同級生の真似ではなく、
他のベテラン大先輩の方々の仕事を真似てみようと
考え、それまで並んで仕事していた同級生と離れ
年輩の方々の隣に積極的に移動し作業した。
怒鳴られながらも、毎日毎日・・・
操業も後半となった頃、ある方から
「仕事は覚えろ！ではなく、慣れろ！だ」
「真似だけでなく、自分の型を作る！」
「自分のやりかたで同じ結果ならそれが型だ！」と
言われた事で周りがよく見えるようになった。
たしかに皆、似たような感じで作業しているが
各自、オリジナルな動きや手さばきがあり
自分のやりやすい手さばきになるように
いろいろやってみた。
しかし1航海で当たり前になるような、そんな
生易しい仕事では無く、あせらずこの船で
網仕事に慣れよう と考えました。
「1日1日の積み重ねでいろんな事を経験すれば慣れに繋がる」
これが当時考えた仕事に対する心構えでした！
私は親父の船に乗り込んで（小型船）漁師になったのでアトムさんのように遠洋航海という環境下での経験はありませんが・・
わたしは漁師ってやつは年齢にかかわらず、できるやつが”師”であって”漁師”と言える人を目指して常日頃仕事をしています。
今は亡き親父には口をすっぱくするほど「漁師は機転を利かせろ！」と叩き込まれてきました。
「漁師に言い訳はない！結果がすべてだ！」まさにその通りなんですが時には不運に見舞われ愚痴をこぼしますが冷静に考えるとやっぱり修行が足りないと思うことも多々ありますね。
私が思う漁師（漁師って言ってもそれぞれに色々な担当がありますが・）は毎日が勉強、おそらく日々変化する自然界では死ぬまで勉強という職種ではないかと思います。
私も漁師成り立ての頃は仕事終わってから他の船に積極的に行って業を見て盗んできたもんでした（笑）
「どうするの？どうすればいいの？」なんてな野暮な事聞くのは嫌いだったんでけっこう遠回りしたかも知れません（爆）
でも昔の先輩達はその辺はわかっていて口にはしませんでしたがけっこう「よく見ていけよ」的に仕事終わった後にでも「今から沖に行って遊んでくるかぁ」なんて他所の若衆乗せて術技指導してくれたものでした。
今まさに私もその頃の先輩くらいの年代になりこれからの若人を育ててあげないといけないなぁと思うこの頃です。
＞「仕事は覚えろ！ではなく、慣れろ！だ」
エキスパートにならないとだめなんで自分に合った方法で体で覚えないとだめですよね（笑）
考えなくても先に体が動くこの動作が海では明暗を分けますからね。
やはり、いまでも日々勉強です！
そんなことをふまえ、過去の乗船中の事を思い起こしています。
諸事情で仕事していない、今だからこそ
更新できるネタかな、と思いながら！