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…漁師アトムの航跡… ~ある沖乗り漁師の綴記~

回顧記 14話 「近海Ⅰ、鮪漁」!

2006年02月26日 | 船上回顧記

「北バチ」~「ジョンストン沖」での航海を終え、

3月末に東京、築地港に入港、水揚げし

母港、気仙沼港へ帰り、3ヶ月ぶりに帰宅した!

しかし、5月からの「北洋」前にもう1航海

鮪漁を行う為、急いで次の航海の準備となった。

「遠洋鮪延縄漁」は漁獲した魚を急速凍結して

港まで運び水揚げしたが

今度は「近海鮪延縄漁」、凍結せず生(氷漬け)で

港まで運ぶ事になる為、短期間操業となる。

気仙沼港を出港し5日程で操業開始です。

4月ですので時期的には冬の日本近海より

海は荒れないと聞いていたが、

連日の大時化で時化休みが多かった!

八丈島沖の瀬が漁場だったのですが

三角波から船を支える状態は恐怖でした。

時化が治まり、操業準備をしなおす時

荒天準備の時に、きちんとロープで括っていた

ラジオブイ2台が、サイドから飲んだ波で

あとかたもなく消えていました。

操業は遠洋と違って枝縄は短い物を使い

幹縄も海面から浅い、「浅縄」(メカ縄)という類でした。

(遠洋は「深縄」でした)

浅縄で枝縄が短い分、その間隔も短く

前航海以上に忙しく、まさに息が抜けない!!!

漁獲を狙うのは「メカジキ」「キワダマグロ」等

比較的浅いところを回遊している魚

当然「サメ」も多いが一番厄介だったのが「シャチ」

これは枝縄の先に付いた釣りにせっかく、

かかった魚を横取りし、すれすれまで喰い

うまい具合に頭だけ、や魚の口元の釣、

ぎりぎりを残していく!

一つ、頭が揚がれば、その日のその後の揚縄は

ほぼ全滅!揚げ後は海区を移動しなければ

連日「シャチ」の被害に遭う事になる!

海区を移動してもダメな事もある。

その反面、稀ですが、「シャチ回し」といって

シャチの群れから逃げている魚が連続で

大漁に釣れる事もあります!

そういう魚の釣れ方でシャチの動きを読む事は

漁労長のスキルでした。