人生いろは坂

人生は山あり谷あり、そんなしんどい人生だから面白い。あの坂を登りきったら新しい景色が見えてくる。

隣国から見た日本・その2

2010-05-25 04:05:23 | Weblog
 韓国は、ある時期まで近くて遠い国だった。その理由は戦前の日本との
関係にある。日韓併合などと言う日本の植民地的な扱いを受けたことによる
朝鮮民族の反発によるものだ。

 韓国は太平洋戦争後も長く軍事政権下にあった。李承晩ラインなるものが
日本と韓国の間の洋上に線引きされ、そのラインを越えると強制連行された。
日本の漁業関係者が何度も強制連行されては、その都度、両国間の関係が
ぎくしゃくしていたことがあった。

 今も両国間の問題が全て解消した訳ではない。竹島の問題など領土問題が
くすぶり続けている。しかし、軍事政権が民政に変わり、漫画やアニメと言った
日本文化が受け入れられ、韓国からは多くの映画が入ってくるようになった。

 今回は同じツアーに韓国の映画が大好きだというおばちゃん達もいて
賑やかなことであった。免税店の屋上にあったイケメン俳優の立て看板の
横で一緒に写真を写したのだと言って大喜びであった。

 この国は単に文化だけでなく風物も非常に良く似ている。今でこそ日本
の松は、多くがマツクイムシにやられてしまったが、一昔前の近隣の山々を
彷彿とさせるほど松の木が多く、その他はドングリなどと思われる雑木で
あった。杉や檜と言った植林は、ほとんど見かけなかった。松は道路脇や
市中の並木にも使われるほど韓国のシンボルツリーである。

 朝鮮半島は一時期まで漢字文化圏であった。李王朝の頃、ハングルなる
文字が発明され、以来、漢字文化とは離れてしまったが、発音はまさしく
今も漢字文化の影響下にあり、共通する部分も少なくない。聞きように
よってはそうも聞こえると言った程度の違いである。

 しかし、宗教は大きく異なるようだ。この国にはキリスト教会が多い。
いつの頃から、この国にはキリスト教が入ってきたのであろうか。かつては
中国の影響下で色濃く儒教が浸透していたはずだ。

 今でも家庭や地域では、儒教が精神面を強く支配しているようだ。しかし
若者世代は異なるようだ。マザコンが多いとか、晩婚化が進んでいるとか、
子供は必要ないという世代が多くなったとか、モンスターペアレンツが多く
なったとか、親とは同居したくないと言う若夫婦が多いとか、日本と同じ
ような状況が、この国にもあるようだ。経済的に豊になればなるほど国の
状況は似てくるものなのだろうか。

 この国は遡れば仏教国であった。今回の旅の中でも石窟庵、仏国寺など
多くの仏教遺跡を見学した。特に長く山中に埋もれて顧みられることの
なかった石窟庵の釈迦如来像など、実に見事なほどの遺物が残されている。
これだけのものが一時期とは言え、何故、人々の目から遠ざかっていた
のだろうか。

 そして仏国寺は往時の仏教文化の粋を極めたような壮大な建物群であった。
この寺は秀吉軍に攻められた際に、ことごとく焼失してしまった。その時の
火の勢いを今に止めるほど石垣には劫火の跡が色濃く残っている。今は
こつこつと再建事業が進められ最盛期を偲ぶほどの建築物が建ち並んでいる。

 そして、この日の最後に訪れた寺院は海印寺という名刹であった。八万本
とも言われている木版製の仏教の教典が今も大切に保管されている。未だに
一枚の虫食いもないと言うほどに保存状態は良い。

 と言うのも建物の構造と工法によるものらしい。蜘蛛さえも糸を張らない
と言うほどの建物の中には整然と木版の教典が収められている。教典の
数もさることながら、ここもまた壮大な建物群である。

 実は、この国の旅行スタイルらしく、一度もホテルや宿舎で食事をした
ことがない。全ては外食であった。そして、どの食事にも出てきたのが
キムチであった。その店ごとの味わいがあって、出されたもの全てを食べ
尽くした。

 私にはキムチ独特の匂いや味、そして唐辛子の辛さに抵抗はない。まさに
この国はキムチなくしては考えられないほどのキムチ文化の国であった。

 その他の食べ物で美味しかったのは昼食に出たサムゲタンという鳥料理
であった。朝鮮人参など素材だけの味に塩を好みに応じて付けて食べる。
非常にあっさりとした薬膳料理であった。

 土産物に見るべきものはほとんどない。と言うより私自身が興味を持って
いなかったからかも知れない。同行した人の多くが免税品だとか何とか
言って下車するたびに買い物に夢中になっていたが、私が買ったのは男女の
顔を形取った木製のお面(ハフェタル)と中国の画家が描いたという扇面
だけであった。

 この国は発展途上国だと言うが、経済的には成熟した国のように見える。
ただ、やたら道路網が拡大基調にあり、それに呼応するかの如く広大な
土地が開発途上にある。

 また、都市近郊に人口が集中し、首都ソウルには実に全人口4000万人
の4分の1が集中しているという過密ぶりである。世界的な経済の冷え込み
で失業率は高い。失業者が多いのも日本と同じである。

 とは言うものの都市近郊では高層建築が今も建設途上であり、果たして
かくまでも住宅は不足しているのだろうかと驚きを隠せない。すごい数の
高層建築物が、どこを走っても建ち並んでいる。

 また、車がやたら多い。日本の高速道路が貧弱に思えるほど車線が多く
その道を高密度に走り回っている。北から南まで驚くほどの台数の自動車
が走り回っている。運行効率が良くないのではないかと言う印象を免れない。
車の大半は韓国製の国産車である。

 この国に来て省エネだとか自然保護などと言うのは、よそ事のように
思えることである。建築ブームだとは言え、集合住宅であるから太陽光発電
など個人レベルで設置することが出来ないからか、ほとんど見かけることは
なかった。

 今もこの国は省エネを目指すより経済発展を最優先にしているようだ。
それが国策なのか、公共投資による景気刺激策なのか聞き漏らしてしまった。

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