575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

根岸にて

2020年07月04日 | Weblog


「雨だれの 音一人聴く かたつむり」 <麗子>

雨中のかたつむり。誰もが目にする風景を
さらりと詠んでいます。憧れの佳句。とこ
ろで「一人」の是非。私感では中七「一人」
を是と考えます。ただ、ひらがな表記にし
た方が字面が整うと思われます。

「雨だれの 音ひとり聴く かたつむり」

この句はかたつむりの視点。擬人法で詠ん
でいます。擬人法の名著といえば夏目漱石
の「吾輩は猫である」でしょう。彼の日本
文学での最大の功労とされる点は、美辞麗
句の著書が多かった明治期の文学界で、英
文に翻訳できる平易な文体で書いたことだ
といわれています。

夏目漱石。本名、夏目金之助。彼と子規は
無二の親友。 「余は,交際を好む者なり」
と子規は記しています。そのため、根岸の
子規庵には、夏目漱石や愛弟子の高浜虚子。
そして多くの門弟が集まり、膠着していた
俳句に新風を吹き込みました。ところで、
子規は漱石の句に対し奇想天外と揶揄して
います。子規と漱石の笑い声が聞こえてき
そうな句を記してみます。

「雷の 図にのりすぎて 落ちけり」<漱石>

正岡子規。 日本の俳人 34歳にて死去。墓
誌の最後には子規が勤めた日本新聞の給与
が記されています。日本新聞の社主は陸羯
南。彼の存在なくして子規の俳句はなかっ
たといっても過言ではないでしょう。下記
は子規の墓誌。

正岡子規又ノ名ハ處之助又ノ名ハ升
又ノ名ハ子規又ノ名ハ獺祭書屋主人
又ノ名ハ竹ノ里人伊豫松山ニ生レ東
京根岸ニ住ス父隼太松山藩御
馬廻加番タリ卒ス母大原氏ニ養
ハル日本新聞社員タリ明治三十口年
口月口日没ス享年三十口月給四十圓

子規庵は簡素で小さく、訪れた日には子規
が愛した糸瓜の蔓が伸びていました。ふと、
子規の妹 律を思い出しました。きっと律も
糸瓜の世話をしていたでしょう。子規終焉
の庵。台東区の根岸にあります。


文と写真 <殿>
コメント (1)
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