子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日。
▼ 紅蓮(ぐれん)のポケット ▲
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2・ハーフドーム登頂記
前日にヨセミテ・カレービレッジ入りして、当日の食料買い出しと、登り口のハッピーアイルの場所を確かめた。
これは、正解だった。早朝、行動開始した時は、全くの暗闇で、車道でさえ、どの道がどちらの方角に行くのが、わからなくなってしまうほどなのだ。
前夜は、カネゴンさんの「ハーフドーム登頂記」のホームページをコピーしたものをもう一度読んだ。ほかにも、参考になるホームページはいくつかあったが、いくつも持っていけないので、カネゴンさん1本にしぼって、参考にさせてもらった。(カネゴンさん、ありがとうございました)
当日は、4時起床。
娘はタコス、私はホットドッグのパンに、チーズとキュウリをはさんだものと、ジャムをはさんだものを、朝食、昼食にする。
その用意をしつつ、牛乳、ジュースを飲みながら、朝ごはんを半分を食べる。
その他に準備した食料は、日本から持ってきたウィダ・イン・ゼリー1パック。トマト2個。プラム2個。バナナ1本。水は、3.5リットル。
宿を出たのが、5時少し前。車で駐車場までいき、真っ暗闇の中、ハッピーアイルまで歩く。
5時半、ハッピーアイルを出発。歩きながら、滝の横についたミストトレイルと、ジョン=ミュアトレイルのどちらのコースにしようか考えたが、知らぬ間に、ジョン=ミュアトレイルの方に入っていた。結果的に、こちらの方が、距離は1.6マイル長いが、なだらかな登りなので、体力を温存するのに、よかったと思う。暗いので、懐中電灯の明かりを頼りに歩く。
6時半頃、朝ご飯の残り半分を食べる。これから後、昼ごはんは、暑いのと疲れたのとで、パンはのどを通らなかったので、まともな食事はここが最後になった。
その頃、後ろから何人かが追いついてきて、登る仲間と出会い、ほっとした。日本人3人(女性1人、男性2人)もいて、抜きつ抜かれつ、同じルートを目指した。
7時40分。ネバタ滝の上に着く。そこからかなり大きくハーフドームが見えた。が、まだ行程は三分の一くらいか。道は、ドームを回り込んでついているので、そこからが長い道のりだった。最後のトイレのあるリトルヨセミテを通り過ぎ、8時45分、ハーフドームトレイルに入る。カネゴンさんの記録にも書いてあったが、このトレイルは、ドームが見えない森の中をえんえんと続いていて、精神的にも肉体的にも、くたびれる所だ。
あまりに疲れた上、水もそんなには飲まずにきたので、途中で、1リットル捨てて、荷を軽くした。
そして、ようやく10時15分。ショルダーの下に着いた。もう最後の岩場は目と鼻の先。
のっぺりした岩に、小さく人が張り付いているのが見えた。あんなところを登るのかと、ちょっとゾクッとした。

私が疲れて、ペースが落ちたのを見て、娘が、そこに荷物をおいていくようにといった。私は水だけ持ち、食料は娘が持っていってくれることになった。ウィダインゼリーを飲んで、エネルギー補給。
娘も、最低限の水と食料だけリュックに詰めて、登り始めた。
娘は岩場を見ると、がぜん張り切りだして、私を置いてさっさと登っていく。山は私の方が登っているが、体力がちがうなと思う。
ショルダーも、けっこう急な岩場なので、私はマイペースで行く。
11時、最後の岩壁の下に着いた。1メートルほどの間隔で、2本のワイヤーが張ってあり、両手でそれをつかみ、登っていく。途中、ずっと3メートルくらいのところに、鉄の棒が打ってあり、そこに横木がわたしてあるので、木に足をかけて、滑り落ちる心配がなく休むことができる。一気に鉄の棒まで登り、横木に足を置いて休み、また一気に次の鉄の棒まで登る。それを繰り返して登る。

(写真は下りの時の)
ワイヤーが、鎖とはちがって、滑るような感じがした。山道具屋さんで買った、手のひらにゴムのイボイボがついている手袋をはめていたが、どことなく心もとない。
上から人がおりてくると、先に通してあげて、前の人が、次の棒のところにいないのを確かめつつ、少しずつ登っていった。
下を見ると、人が豆粒のようだ。こわいので、なるべく前方上だけを見るようにした。
途中、日本人がおりてきたので、挨拶すると、ハーフドームの岩登りをしてきた帰りということであった。その人からみたら、ワイヤーが張ってある岩など、らくらくだろう。
最後の岩場では、腕の力も相当使った。日の光をさえぎるものもなく、急なので、息が切れた。
そうして、11時30分。ついに登頂。
頂上は、すごく広いのでビックリ。かけっこもできそうなほどだ。が、ゆだん大敵。端はすっぱりと切れ落ちた岩壁である。
ハイシェラの山々が、遠くまで続いているのが見える。空は広く、山のてっぺんにいるというのは、なんという気持ちのよさ。登ってよかった、と思う瞬間である。

昼ご飯を食べることにしたが、疲れ切って、食欲はない。のどを通ったのは、バナナとプラム、トマト。チップムンクというリス(ネズミの一種か?)が、食べ物をねだって、近寄ってくる。でも、自然の中で生きるものに、食べ物をあげてはいけないということである。
1時間ほどそこにいて、12時30分、下ることにした。あの急な岩壁を下るのはどんなだろうと思ったが、いざ下ってみると、登りほど大変でもなく、さほど怖くもなかった。行きは下を見ると、かなり怖かったので、高度になれたのだろう。するすると、下におりていった。
下で、また少し食べる。が、パンはやはり、のどを通らなかった。こういう時おむすびならなあ、と思うけど、外国では無理な話し。
1時半。ハーフドームトレイルを下り始めたが、何がどうしたのか、道を間違えてしまった。アメリカ人のカップルと一緒に、森の中の踏み後をたどっていったが、どうもあたりに見覚えがないような感じがしていた。それでも、もう一組いるのに安心して、そのまま下っていった。カップルは、途中から急ぎ始め、そのうち、見えなくなってしまった。
気がつくと、ほかには登って来る人も、下る人も、誰もいない。おかしい。かなり下った後なので、いやだあと思ったし、娘が、そのまま行けば道に出るよと楽観的なことをいうが、全く初めてのコースなので、もどることにした。
再び、ショルダーの下あたりに着いたのは、2時半。1時間もロスしたことになる。くたびれていたところに、打撃であった。でも、道に迷ったと思ったら、元に戻るのが一番の早道。
下りの森の道、ハーフドームトレイルは、行きにも増して、くたびれた。
足取りも重く、ネバタ滝の上に着いたのは、もう4時15分。30分まで、川のほとりで過ごす。
ところが、ミストトレイル(滝の横の道)に行こうとして、またもや、下りすぎていたのがわかった。滝の上まで下らずに、トイレのところで、道に入らなくてはならなかった。もう一度登って、ミストトレイルに入る。すごく急な道なので、どうかなと思ったが、滝が見られたり変化に富んだコースで、帰りそちらのルートにしたのは正解だった。疲れているので、石段から足を踏み外さないよう、慎重にくだる。
ようやく、ハッピーアイルに着いたのは、6時15分。13時間近くかかったことになる。長い1日だった。
翌日、足はだいじょうぶだったが、腕が筋肉痛になった。
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