美しい書物

2012-01-28 15:25:55 | 日記

栃折久美子著  みすず書房刊

著者は装丁家。国際製本工芸家協会認定のマイスターでもある。仏語でルリユールという。久しぶりで著者のエッセイを読んだ。といっても、本書は『製本工房から』(1978年)と『装丁ノート』(1987年)、「ルリユール二十年」を加えたアンソロジーのようなもので、前二書は所蔵しているので、読み返した本といってもいい。
おそらく装丁も御本人だと思うが(どこにも明記されていない)、手に馴染む、丸背の開き易い本である。中扉の「美しい書物」の細明朝のグリーン文字が綺麗だ。
それにしても、この二書が発表されたのはざっと三十年前、すでに製本の衰退が始まっていたことに驚く。その当時でさえ造本の退化は酷いものだった。今やそれに輪をかけて酷い。大抵の本は長期の蔵書に耐えられないし(膨れるし、取り出すとパカッと割れてしまう)、読むのにも苦労する。
それにしても、懐かしい単語に出会ったものだ。「半革装」「天金」などという単語を知っている人がどのくらいいるのか分からないが、モロッコ皮の継ぎ表紙の「総天金張り」の本を、ようやく手に入れたのは何十年前だっただろうか。