アラブの春は終わらない

2012-01-06 15:12:30 | 日記
タハール・ベン・ジェルーン著  河出書房新社刊

『アラブの春は終わらない』どころか、どう決着がつくのかも読めない2011年の時点で、敢えて本書を執筆した著者の勇気に感心した。文筆家は、結末の付いていない時事ネタについて書くのは好まない(自分の歴史観・洞察力を傷つけかねないからだ)。
ところで、私はこの一連の動静を「アラブの春」とか「ジャスミン革命」という謳い文句をつけたメディアに些か違和感を感じている。「春」どころか「灼熱の嵐」、「革命」というには「リーダーもいないし、目標も明確ではない」からだ。
ここで、民衆が要求したのは貧困の解消などではなく、「自由」「尊厳」「人権」だった。ここに「アラブの春」の深刻な闇が横たわっているように思える。アラブ諸国の支配層に何の疑念もなく存在している、国土・国民・資源の私有化という思想に、このスローガンの全ての根幹がある。そして、それを黙認し、自国の利益を図って来た先進諸国の責任は大きい(日本も例外ではない)。
最後に本書のタイトルだが、原題の直訳『火花ーーアラブ諸国の民衆蜂起』の方が、本書の内容に合っている。「アラブの春」には、やっぱり抵抗がある。