摂関政治 シリーズ日本古代史⑥

2012-01-11 08:47:11 | 日記
古瀬奈津子著  岩波新書

第⑤巻を読んだのは昨年の6月29日だから、最終巻の本書が出るまで約半年待ったことになる。これほど間が開くと、本書を読む前に前5巻の目次を読み直さなければならなかった。ところで、本書にはこれまでの通説に反して、最新の研究成果に基ずく歴史展開が解説されているので、読んでみる価値は十分ある。
平安時代の後期の主役と言えば藤原道長であるが、これまでは王権の簒奪者という評価が一般的であった。しかし、本書ではまったく違う展開が解説されている。
まず、第一点。道長は太政官制を無視して摂関政治体制を創ったが、この意味は大きい。というのも太政官に属する人々は天皇家創立に協力した古代豪族の末裔だったということ。つまり、天皇家の「同志・お友だち」が専制する朝廷を、律令制に基ずく国家体制に舵を切ったということ。
第二点。この結果政治権力の枠組みから天皇家が徐々に排除され、その後の院政期を最後に政治権力は摂関家に移行した(院政時代も実質は摂関家が握っていた)ということ。
先取りすれば、この後は平氏を経て鎌倉・室町・江戸時代を通して征夷大将軍=武士階級が政治権力の中枢を担っていく端緒となった。
しかし、天皇制は消滅しなかった。何故なのだろう? それを説明する責は著者にはないのは分かっているのだけれど……。つまり、平安時代をもって、日本の古代は終焉したのである。
全六巻を通して言えることは、平安時代とは「日本」という国号を確立し、唐の律令制を日本風にアレンジしながら「天皇を中心」に国家体制を成立させた時代だった。もしくは、その後の日本の統治体制の骨格を創った時代だった、と言っていいのかもしれない。