天才が語る サヴァン、アスペルガー、共感覚の世界

2011-02-24 15:01:40 | 日記
ダニエル・タメット著  講談社刊
サヴァン(自閉症)、アスペルガー症候群(高機能自閉症)、共感覚の症状を3つを持つた人間は何をどう感じ? そして、その体験から自分を取り巻く世界をどう理解したのか? これが本書のメインテーマである。著者(彼自身がこの3つの症状を持っている)が自分の脳を゛実験台゛にした著作である。
私自身は幸いというか、残念というか、彼の数学についての能力については羨ましいくらいだ。しかし、専門家に言わせると、生まれて4、5ヵ月の赤ちゃんはこうした能力は誰でも持っていて、成長するにつれて自然と淘汰されるのであって、彼らは今現在も保持しているだけなのだという。
彼は自ら被験者となった経験をとうして、こうした症状を含めて(アルツハイマーなど)に対して、様々に開発されている治療薬に対して疑問を呈している。化学者や医師、製薬会社が、いつも正しい認識を持っているとは限らないと言うのだ。その弊害についても言及している。
本書を通読して思ったのは、人間はとても複雑な生き物で、替わりとなるものなどないのだ、というである。つまり、人工知能やロボトミーが人間とつて代わることは出来ないということだ。
どうでもいいことかもしれないが、タイトルの「天才が語る」というのはどうだろうか? 原題は「Embracing Тhe Wide Sky」だから、「広い空に抱かれて」というほうが著者の意図に叶っているように思う。前書きで著者言っているように、原題はエミリー・ディキソンの詩「頭の中は空より広い」から想を得たといっているのだから。