吉原御免状・かくれさと苦界行  読み返した本 7

2011-02-15 14:32:37 | 日記
隆慶一郎全集 第一巻  新潮社刊
これは同じ主人公をテーマにした、2部作。
隆慶一郎が素晴らしい作家だということは、前回述べた。ここでは、氏の博覧強記について述べたい。
例えば、「花柳界」の語源が唐の平康里(ピンカンリー)にあることは本書を読めばわかるが、「花柳病」までは今の若い人には分からないだろう。随所に引用されている都々逸にしても同じ。「君が為雪の待乳を夕越えて」のどこが面白いのか分からないだろう。掛詞や洒落が分からなければ、猫に小判,豚に真珠である。「道々の者」にしても、門付けや正月に来る漫才師、家々の門前で経を読むお坊さんを見たこともない人には、イメージしにくいだろう。
しかし、これらはほんの40年ほど前には見知られた、町の風物であった。だから、読者は行間に昔みた景色を思い出しながら、「そうだ、そうだったよ」と共感することができた。
氏の博覧強記を楽しめない人々が、多くなって来たのが残念だ。