影武者徳川家康  読み帰した本 5    

2011-02-03 15:12:44 | 日記
隆慶一郎全集 第三巻  新潮社刊
徳川家康影武者説をテーマにした小説の中では、最も秀逸なものだと思っている。
なによりも素晴らしいのは、様々な異説、伝説、史実を巧みに綯い交ぜに構成されていることだろう。したがって、読み手は本当かもしれないと思ってしまう面白さが堪らない。最近の時代小説が、文献をそのまま書き写しているのではないかと思えるのに対し、これらを全て自家薬籠中のものにして、小説を展開いく手法がたまらない。
私に馴染みの伝記小説家が亡くなってから、ようやっとでてきた作者で、この人の小説であと何年か楽しめると思っていただけに、早世が悔やまれる。
長編小説の醍醐味をたっぷり楽しめる一冊である。特に、還暦を過ぎた男性には元気と活力与えてくれる(ええ、いろいろな意味で‥‥)。なぜか、つい最近亡くなられた歌舞伎役者の中村富十郎さんを思い出してしまった。