税理士試験改正案
はじめに
会長諮問 「次なる税理士法改正について」を制度部で検討した論点の中間答申を先の支部長会理事会で報告しました。その中で関心の高い税理士試験の項目についての報告を紹介いたします。
税理士試験(法第5条、法第6条、法第7条)
「税理士試験は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的」(法第6条)と規定されています。近時、税理士試験受験者数が低減している状況にあることは、税理士制度の危機として捉えられます。もっとも近年、税理士試験だけではなく、司法試験、公認会計士試験、司法書士試験などの資格試験受験者も低減し、それは少子化社会や経済情勢など諸々の要因が考えられます。現在の税理士試験制度は、昭和26年の税理士法制定時から基本的に変わっていませんが、「多くの若い世代が参入するような試験制度の構築を」目指すためには税理士試験の特徴である科目別合格制を維持し、過度に暗記力や計算スピードを重視することなく、合格まで約10年を要するといわれている受験年数を約3年、3回程度の受験で「必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定する」制度とすべきです。
例えば、受験資格(法第5条)は撤廃し㊟1、多様な人材からの受験を容易にすることを検討すべきです。現行の会計学に属する科目の簿記論、財務諸表論の2科目は1科目として統一し㊟2、年2回の試験の機会を設けます㊟3。税法に属する科目は所得税、法人税、相続税、消費税を必須とし㊟4現行の5科目受験を維持します㊟5。国税通則法、民法、憲法、会社法、地方税、税理士法、外国語、ITスキル、コミュニケーションなど税理士実務に必要とされる項目については、登録時前研修等で対応する仕組みを構築します㊟6。修士学位取得者の一部免除は廃止とし、資格別新規登録者数に占める試験合格者の割合を現在の約30%(税理士界1340号平成28年5月、試験合格者32.24%、試験免除者47.92%、公認会計士17.46% 、弁護士2.31%)から80%へ引上げることを検討すべきです。また将来的な検討課題として会計学に属する科目は資格の共通一次試験とし税理士、公認会計士を目指す人たちの共通の受験とし、税理士に進む人たちには二次試験により税法に属する科目を受験する新たな試験制度を検討します。
㊟1.受験資格(法第5条)は撤廃⇒26年法改正の当初要望、規制緩和からの要請で広く
多様な人材を求められる。また、規制改革・納税環境整備等対策室の実施した税理士試験受験者に対するアンケート予備調査でも指摘されています。
㊟2会計学に属する科目の簿記論、財務諸表論の2科目は1科目として統一し⇒会計ソ
フトの普及を考えると1科目に統一してもよいのではないでしょうか。
㊟3 年2回の試験の機会を設けます⇒昨年、日税連会長が専門学校TACのインタビューで発言しています。受験機会を増やし、若い人たちが挑戦しやすいようにという配慮ではないでしょうか。
㊟4税法に属する科目は所得税、法人税、相続税、消費税を必須とし⇒試験合格者は一定の水準を維持しなければなりません。消費税が実質、歳入の柱となり、相続税も日常業務となりつつあること考えると国税基本4法は習得する必要があります。(結局、実務に入るのならば勉強しなければなりません)
㊟5現行の5科目受験を維持します⇒税理士試験合格者は科目別合格制に愛着があり、働きながら受験ができるというのが特徴、一方、科目別合格制が試験を難しくさせ、長期化している原因になっているという批判があります。
㊟6税理士実務に必要とされる項目については、登録時前研修等で対応する仕組みを構築します⇒国税通則法などを税理士試験の受験科目にするという意見が従前からありますが
試験は基本5科目とし、税理士実務に必要とされる項目については、日税連で現行の登録時研修を改善し、登録時前研修等でフォローする仕組みが考えられます。ネットの発達、普及から全国統一で同じカリュラム、同じ講師の講義が可能であり、試験合格後に合格者自身が希望する大手、中堅の税理士事務所、税理士法人に就職できなくても同程度のスキルの習得が可能となり実務的な経験不足の不安や将来独立への障害が少なくなります。
おわりに
優秀な若い人材をどのようにして税理士試験に向かわせるか、試験合格後に税理士登録をした者は、その時点で優れた見識と一定の知識を持っているというのが望まれます。税理士試験制度改革は受験生に与える影響が大きいので、改正には慎重を要します。㊟7
㊟7 報告は中間答申ですので最終答申で変わる場合があります。
はじめに
会長諮問 「次なる税理士法改正について」を制度部で検討した論点の中間答申を先の支部長会理事会で報告しました。その中で関心の高い税理士試験の項目についての報告を紹介いたします。
税理士試験(法第5条、法第6条、法第7条)
「税理士試験は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的」(法第6条)と規定されています。近時、税理士試験受験者数が低減している状況にあることは、税理士制度の危機として捉えられます。もっとも近年、税理士試験だけではなく、司法試験、公認会計士試験、司法書士試験などの資格試験受験者も低減し、それは少子化社会や経済情勢など諸々の要因が考えられます。現在の税理士試験制度は、昭和26年の税理士法制定時から基本的に変わっていませんが、「多くの若い世代が参入するような試験制度の構築を」目指すためには税理士試験の特徴である科目別合格制を維持し、過度に暗記力や計算スピードを重視することなく、合格まで約10年を要するといわれている受験年数を約3年、3回程度の受験で「必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定する」制度とすべきです。
例えば、受験資格(法第5条)は撤廃し㊟1、多様な人材からの受験を容易にすることを検討すべきです。現行の会計学に属する科目の簿記論、財務諸表論の2科目は1科目として統一し㊟2、年2回の試験の機会を設けます㊟3。税法に属する科目は所得税、法人税、相続税、消費税を必須とし㊟4現行の5科目受験を維持します㊟5。国税通則法、民法、憲法、会社法、地方税、税理士法、外国語、ITスキル、コミュニケーションなど税理士実務に必要とされる項目については、登録時前研修等で対応する仕組みを構築します㊟6。修士学位取得者の一部免除は廃止とし、資格別新規登録者数に占める試験合格者の割合を現在の約30%(税理士界1340号平成28年5月、試験合格者32.24%、試験免除者47.92%、公認会計士17.46% 、弁護士2.31%)から80%へ引上げることを検討すべきです。また将来的な検討課題として会計学に属する科目は資格の共通一次試験とし税理士、公認会計士を目指す人たちの共通の受験とし、税理士に進む人たちには二次試験により税法に属する科目を受験する新たな試験制度を検討します。
㊟1.受験資格(法第5条)は撤廃⇒26年法改正の当初要望、規制緩和からの要請で広く
多様な人材を求められる。また、規制改革・納税環境整備等対策室の実施した税理士試験受験者に対するアンケート予備調査でも指摘されています。
㊟2会計学に属する科目の簿記論、財務諸表論の2科目は1科目として統一し⇒会計ソ
フトの普及を考えると1科目に統一してもよいのではないでしょうか。
㊟3 年2回の試験の機会を設けます⇒昨年、日税連会長が専門学校TACのインタビューで発言しています。受験機会を増やし、若い人たちが挑戦しやすいようにという配慮ではないでしょうか。
㊟4税法に属する科目は所得税、法人税、相続税、消費税を必須とし⇒試験合格者は一定の水準を維持しなければなりません。消費税が実質、歳入の柱となり、相続税も日常業務となりつつあること考えると国税基本4法は習得する必要があります。(結局、実務に入るのならば勉強しなければなりません)
㊟5現行の5科目受験を維持します⇒税理士試験合格者は科目別合格制に愛着があり、働きながら受験ができるというのが特徴、一方、科目別合格制が試験を難しくさせ、長期化している原因になっているという批判があります。
㊟6税理士実務に必要とされる項目については、登録時前研修等で対応する仕組みを構築します⇒国税通則法などを税理士試験の受験科目にするという意見が従前からありますが
試験は基本5科目とし、税理士実務に必要とされる項目については、日税連で現行の登録時研修を改善し、登録時前研修等でフォローする仕組みが考えられます。ネットの発達、普及から全国統一で同じカリュラム、同じ講師の講義が可能であり、試験合格後に合格者自身が希望する大手、中堅の税理士事務所、税理士法人に就職できなくても同程度のスキルの習得が可能となり実務的な経験不足の不安や将来独立への障害が少なくなります。
おわりに
優秀な若い人材をどのようにして税理士試験に向かわせるか、試験合格後に税理士登録をした者は、その時点で優れた見識と一定の知識を持っているというのが望まれます。税理士試験制度改革は受験生に与える影響が大きいので、改正には慎重を要します。㊟7
㊟7 報告は中間答申ですので最終答申で変わる場合があります。