おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

天地明察

2022-11-28 08:16:20 | 映画
「天地明察」 2012年 日本


監督 滝田洋二郎
出演 岡田准一 宮崎あおい 佐藤隆太 市川猿之助 横山裕 笹野高史
   岸部一徳 渡辺大 白井晃 市川染五郎 中井貴一 松本幸四郎

ストーリー
江戸時代前期。
安井算哲(岡田准一)の生まれた安井家は将軍に囲碁を教える名家であるものの、算哲自身は出世欲のない不器用な男だった。
星の観測と算術の問いを解くことが好きで、あまりにも熱中しすぎて周囲が見えなくなることもしばしばだった。
本能八幡宮に和算家の関孝和(市川猿之助)による設問が掲げられ、算哲はその問題を解くことに熱中する。
算哲が設問者の関に会えると思い村瀬塾を尋ねると、              村瀬義益(佐藤隆太)から関の校本を渡された。
そこで算哲は行儀見習いに神社に行かされている村瀬の妹えん(宮崎あおい)と出会う。
算哲は将軍の前での形ばかりの勝負となった囲碁に次第に疑問を抱き、真剣勝負の場に身を置きたいとの願いを持つようになる。
そんな算哲を、将軍・徳川家綱(染谷将太)の後見人である会津藩主・保科正之(松本幸四郎)は暦の誤りを正す任に抜擢する。
800年にもおよび使われてきた中国・唐の時代の暦がずれてきたため新しい暦を作るというこの計画には、星や太陽の観測をもとに膨大な計算を必要とし、さらには本来なら朝廷の司る改暦に幕府が口を出すという朝廷の聖域への介入という問題をはらんでいた。
算哲は御用頭取の             建部伝内(笹野高史)、御用副頭取の             伊藤重孝(岸部一徳           )らと全国北極出地の旅に出る。
算哲は師や友人、算哲を慕いやがて妻となったえんや、彼のよき理解者であった水戸光圀(中井貴一)らに支えられながら、この難関に誠実に取り組んでいく……。


寸評
僕は和算の天才関孝和の名は知っていたが、暦作りに功績のあった渋川晴海の存在を知らないでいた。
映画は渋川晴海と改名する前の安井算哲の活躍を描いているが、暦作りと言う地味な題材だけに盛り上がりに欠けていたように感じる。
日本各地の神社には算額と称される数学問題が奉納されているらしい。
西洋数学でなく和算による面積問題が多いらしいのだが、そのようなことに熱中していた日本人の知的水準の高さを誇りに思うし、それが開国後の近代化に寄与したことも事実であろう。
モノローグでも算哲が関孝和の出した難問を必死で解く姿が描かれ、算哲と関の係わりも描かれていくのだが、数学の苦手な僕は関の数学的能力がどのように係わったのかが分からなかった。
関も暦を研究していたようなので、二人はライバルでもあったと思うのだが、互いに認め合う美談となっている。
算哲は水戸光圀の庇護を受けるが、なぜ水戸光圀が算哲を庇護したのかの説明がなく、その食生活の描写などから単なる殿様の道楽だったのかと思ってしまう。
名前を聞いたことがある実在の人物が登場して興味を引くのだが、その描き方は深くはない。
したがって描かれた登場人物の人物像は表面的なものとなっており、そのことで僕は盛り上がりを感じることが出来なかったのかもしれない。

映画には女性も不可欠なのだが、作中で女性と言えるのはえんの宮崎あおいだけで、誰彼が登場して話をゴチャゴチャにしていないのは評価できる。
ただし算哲を待つことを諦めて他家へ嫁いでいった経緯や、離縁された理由などは全く描かれていない。
本題とは関係ないので割愛したのだろうが、その為に算哲とえんが結ばれる感動はない。
これは恋愛映画ではないのだなと分かる。
算哲たちは会津藩主・保科正之の命で全国北極出地の旅に出るのだが、その旅の様子が興味深かった。
伊能忠敬の測量なども似たようなものだったのだろうが、こちらは結構楽しそうな旅である。
だけど全国北極出地の目的と意義がよくわからんかったなあ・・・。

新たな暦を作る中にあって、日食、月食がいつ起きるのかを予測するのを見どころとしている。
その為に関の計算式が必要とされるのだが、どのような計算でそれが導き出されるのかは知らされない。
僕のような者にそれを説明してもチンプンカンプンになるだけのことだったのかもしれない。
算哲は旧の暦との戦いに二度挑み、一度目は失敗するが二度目に勝利し、作成した大和暦の採用に成功する。
予測した日時に日食が起こる劇的場面は、直前に雨が降るなどしてスリル感を出しながら描いていくが、どうも自然現象の神秘さを民衆が感じる様子、予言が見事に証明された驚きの様なものが希薄だった。
切腹を覚悟し、刀を握りしめた手から血が出ていたはずだが、抱きしめたえんの着物が血で汚れないのはなぜなんだと変なところに目が行った。
それでも、どの時代にも天才とか努力家とかはいるものだし、僕などは及びもつかない頭脳でもって時代を切り開いた人を知ることは楽しいものがある。
僕にとっては安井算哲=渋川春海を知ることができたことが一番の収穫。