おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ツリー・オブ・ライフ

2022-11-18 09:34:33 | 映画
「ツリー・オブ・ライフ」 2011年 アメリカ


監督 テレンス・マリック
出演 ブラッド・ピット ショーン・ペン ジェシカ・チャステイン
   フィオナ・ショウ ハンター・マクラケン ララミー・エップラー
   
ストーリー
ジャック・オブライエン(ショーン・ペン)は実業家として成功していたが、人生の岐路に立つ。
そして深い喪失感のなか、少年時代を回想する――。
1950年代半ばの中央テキサスの小さな田舎町で、幸せな結婚生活を送るオブライエン夫妻とジャック、2人の弟たち。
一見平穏に見える家庭だったが、ジャックにとって心安らぐ場ではなかった。
社会的な成功と富を求める父(ブラッド・ピット)は、力こそがすべてだと考える厳格な男で、母(ジェシカ・チャステイン)は自然を愛で、慈愛に満ちた心で子供たちを包み込む優しい女だった。
11歳のジャックはそんな両親の狭間で2つに引き裂かれ、葛藤していた。
父に反感を抱きながら、父に似た成功への渇望や力への衝動を感じ、暗黒の淵に囚われそうになりながらも2人の弟との楽しい時を過ごすジャックだったが…。
そんな彼を光のさす場所にとどめたのはなんだったのか、数十年の時間を経て思いを巡らすとき、すべてを乗り越えつながり続ける家族の姿に、過去から未来へと受け継がれる生命の連鎖を見出す。


寸評
カンヌでグランプリを取った作品らしいが、まずもってカンヌ好みの映画で、全くと言っていいほど面白くない。
面白くないのに138分もの時間をスクリーンに引き止めたのは繰り返し映し出される美しい映像に圧倒されるものがあったからだ。
実際、写真に写し撮っておきたいような美しい景色が有ったかと思えば、大自然の驚異とでもいうタイトルが似合いそうな映像も続く。科学のドキュメンタリー放送を見ているような地球誕生物語の様な映像も繰り返し映し出される。まるで映像見本市とでも呼ぶにふさわしいものがスクリーンに展開され続ける。
僕などはほとんど会話のない冒頭の40分間ぐらいは、この映像でもって引っ張られた。
その映像はその後も続くが、しかしそこからは長く感じる。いや実際長い。
観念的な言葉が発せられて、なんだか宗教映画を見ているようだ。
分かるのは、父親が自分勝手な厳しさで息子たちを育てていて、息子たちはそれに反感を持ちながらも逆らうことが出来ないでいるということぐらい。
付け加えるなら、そんな子供たちを母親が優しく包んでいるが、その母親も父親には逆らえないでいるということ。
やがて長男のジャックも父と同じような年齢になって父を理解するようになったのではいかということかな(子供の頃に父と似ていると言っていた)。その他は何が何だか理解するのに苦労する。

地球が誕生し、やがてそこを舞台に万物が創造され、やがてそれらが成長、進化して人類が誕生するが、それらの上に絶対的な者としての神が存在しているといったようなものが感じ取れた。
しかし、僕はキリスト教徒でもないのでそんな宗教観は持ち合わせていない。
思えば太古の昔から弱肉強食で、強いものが生き延びて進化してきた事実があることは確かなことなのだ。
今のところ進化の到達点である人間にとってもそれは言えることで、力有るもの、富める者が社会的優位に立てることは、自由主義社会では自明のことである。
父親はその観点からのコンプレックスがあり、さらに現実の問題として工場も閉鎖され自らは職を失ってしまう。
そのコンプレックスから息子たちには自分の様にはなるなと諭す。
しかし、その思いの強さからの指導は子供たちには受け入れられないし、父親のとる行為は母親すら反感を抱いているようなのだが、そんな状況を描くのならよくあるごく普通の家庭ドラマのテーマで、映画の出来不出来はその描き方一つに係わってくると言える。
ところがこの映画は単純な家庭を舞台としたドラマではない。いや、単純なドラマを難解にしているともいえる。

母は人にも花にも優しくしなさいと言う。それは今世界で起こっている紛争を初めとする争いごとに対して発せられているようでもあったが、そこまで深読みする必要もなさそうだ。
父親は子供たちにとっては頼もしい存在であると同時に巨大な脅威でもある。
ひねくれた描き方だが、ジャックはこの圧倒的な力に対して先ず恐怖心を抱き、次に反発を覚えるのだが、最終的には和解するという描き方だ。
裏を返せば何の変哲もない少年の成長物語なのだ。それを哲学的なメッセージで表現しているとしたらひねりすぎだ。
最初と最後に出てきたCG映像、あれは一体何だったのだろう?