おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ディス/コネクト

2022-11-19 09:10:55 | 映画
「つ」は少なかったですが、「て」も少なくなりそうです。
前々回は2019/11/16の「ディア・ドクター」から「ディストラクション・ベイビーズ」「ティファニーで朝食を」「テキサスの五人の仲間」「テス」「デトロイト」「天使のはらわた 赤い教室」「転校生」「天国と地獄」「天然コケッコー」と続き、
前回は2021/6/13の「ィア・ハンター」からィナーラッシュ」「ディパーテッド」「鉄拳」「鉄道員」「デルス・ウザーラ」「天国から来たチャンピオン」「天国の日々」「天井桟敷の人々」「天と地と」を紹介しました。

それでは紹介を始めます。

「ディス/コネクト」 2012年 アメリカ 

                         
監督 ヘンリー=アレックス・ルビン                        
出演 ジェイソン・ベイトマン ホープ・デイヴィス フランク・グリロ
   ミカエル・ニクヴィスト ポーラ・パットン
   アンドレア・ライズブロー アレキサンダー・スカルスガルド
   マックス・シエリオット コリン・フォード

ストーリー
内気な少年ベン(ジョナ・ボボ)はイタズラとは知らずにSNSで知り合った女性相手に自分のはずかしい画像を送ったばかりに、その画像をネット上にばらまかれてしまった。
彼はショックのあまり自殺未遂をして意識不明に。
その父親で仕事中毒の弁護士リッチ(ジェイソン・ベイトマン)は、自殺の原因を突き止めるべく調査に乗り出す。
一方、加害少年の一人であるジェイソン(コリン・フォード)の父親で元刑事のマイク(フランク・グリロ)は、ネット専門の探偵をしていた。
彼のもとにはネットでカード詐欺に遭ったハル夫妻(アレキサンダー・スカルスガルド、ポーラ・パットン)から捜査の依頼が持ち込まれる。
妻がチャットにはまり、知らぬ間に個人情報を盗まれていたのだ。
さらに、リッチが顧問弁護士をするローカルTV局の女性レポーター、ニーナ(アンドレア・ライズブロー)は、カイル(マックス・シエリオット)という少年を通じて違法ポルノサイトの取材に成功し、全国ネットでも放送され注目を集めるが…。


寸評
ネット社会は便利な社会だとは思うが、怖い要素もはらんでいる社会だとも思う。
実際ここでは、なりすまし、ハッキング、遠隔操作、アダルトサイトの氾濫、個人情報漏えいによるカード詐欺などネット犯罪がもたらす世界が描かれている。
バーチャルな世界の恐ろしさである。
しかし、バーチャルな世界にしか救いを求められない人種が登場しているのも事実で、今時の映画ではある。
この時代の映画としては中々の出来だった。

登場する少年ベンは友だちもいなくて、ネットでの友人(なりすましという仮想友人なのだが)とのやり取りにすがっている。
姉は弟を心配しているようでもあるが、両親はそんな彼の孤独感が分かっていない。
彼は食事中もスマホを離せない世界にいる。
それを注意する父親も、仕事のためとはいえ携帯を手放せないでいる。
誰も救ってくれなかった少年カイルは、サイト運営者に救われた格好でネットによる性犯罪に加担している。
弁護士の妻であるシンディは夫との違和感を打ち明けることが出来ず、ネット上でその不満を呟いている。

バーチャルな世界でしか自分を出せない彼等は現実社会ではそれぞれ言われぬ問題を抱えている。
そのバーチャルなネット世界と、現実のリアルな世界とのギャップの対比がこの映画を支えているもう一方の支柱で、ネット犯罪もさることながら現実の家族における問題の描き方がリアルで観客を釘づけにする。
親子の断絶、夫婦のすれ違いから、マスコミの怖さ、戦争の後遺症などが上手い具合に挿入され、その手際の良さに感心させられた。

ひとたび問題が起これば、なかなかその狂い始めた歯車の動きを止めることが出来ないネット社会の脆弱さ。
それはいつ我が身に起こるかもしれない怖さでもある。

三つのエピソードをうまくクライマックスに持って行く手際も鮮やかで、それぞれにまつわるシーンをオーバーラップさせるようなイメージでつないでいく。
その映像処理もなかなか巧みであった。
単純なハッピーエンドに持ち込まず、わずかに残るかすかな希望の火だけを残すラストは、よくある手法とは言えやはり余韻を残す。
家族の温かさはバーチャルな世界には存在しないものなのだ。