おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

夕陽に赤い俺の顔

2024-08-04 07:13:18 | 映画
「や」行です。

「夕陽に赤い俺の顔」 1961年 日本


監督 篠田正浩
出演 川津祐介 岩下志麻 炎加世子 渡辺文雄 小坂一也

ストーリー
詐欺と不正を働く水田建設の水田専務(菅井一郎)は殺人業マネージャー大上(神山繁)の紹介で殺し屋を雇うことになった。
殺し屋のメンバーは、猟師の娘でいつも山羊を連れ人を殺すが獣を殺すのはいやというナギサ(炎加世子)。
ガダルカナル戦当時より小銃を使い実戦で鍛えた腕を誇る伍長(内田良平)。
殺し屋という仕事を合理化して株式組織にしようとしている大学生のビッコの殺し屋フットボール(渡辺文雄)。
殺し屋と医者を使いわけるドクター(水島弘)に、香港帰りのレディ・キラー香港(諸角啓二郎)。
ドスに腹巻きスタイルでナイフを使う戦前派、越後一家(三井弘次)。
今まで殺した九十九人の写真をアルバムに貼り眺めて泣いているセンチ(平尾昌晃)。
文学青年で詩を愛している殺し屋詩人(小坂一也)、の八人。
腕の優劣を決めるためとった方法が、競馬場で一着に入ってくる馬の騎手の帽子を射ち落すといった方法がとられた。
殺し屋が手を出せないでいるうちに、ガンマニアである石田春彦(川津祐介)がいたずらに射ち落してしまった。
大上は早速、春彦を水田のところに連れていった。
水田の頼みは建築業界誌の記者有坂茉那(岩下志麻)を殺すことであった。
茉那は水田の悪質な手口にかかって自殺に追いやられた父の遺児で、復讐のため水田建設及び水田の不正を裏づける資料を集めていた。
それを横取りして水田に売りつけようとする左井(西村晃)は情婦でストリッパーしかも殺し屋を兼ねているユミ(柏木優子)に茉那を狙わせていた。
プロの面目にかけても素人の春彦に仕事は任せられないと殺し屋は春彦殺害を企むが、ナギサが春彦に惚れ、春彦が茉那に恋したことから事件はもつれはじめた。
殺し屋達は大上を春彦と誤って殺し、春彦は茉那を助けて水田を敵に廻すことになった。


寸評
寺山修司の脚本で篠田正浩がメガホンを取ればもう少し面白い作品になっているかと思ったが、コメディでもなくミュージカルでもなく見どころの少ない作品となっている。
逆に言えば、寺山もこの様な脚本を書いていたんだ、篠田もこんな作品を撮っていたんだということで物珍しい作品となっている。
平尾昌晃に小坂一也、おまけにデユークエイセスまで出演しているのだが、音楽のリズム感に脚本と演出がついていけていない感じである。
殺し屋グループにやたら人数がいるのだが、果たして8人も必要だったのか。
その為にそれぞれのキャラクターが全く描かれていなくて、かろうじて赤いセーターを来ている炎加代子の女殺し屋だけが存在感を示していた。
際立ったコスチュームも生かされていたとは思えないが、色彩感覚が取り柄となっているこの映画の一翼を担っていたのだろう。
ギャグとしては医者が殺し屋を兼ねていて理屈をいう所だけは面白かった。

ポップな主題歌から始まり、タイトルも役者の写真をうまくはめこんだ凝ったものになっている。
一人の少年が頭にリンゴを乗せていて、そのリンゴに向かって次々と妙な出で立ちの殺し屋らしい人物がピストルやらナイフでリンゴを撃っていく。
最後に子供が倒れ、死んだと思わせるがにやっと笑ったところでタイトル。
この時点では期待させるものがあったのだが、本筋が始まると途端にだらけてしまっている。
ただし、はみ出したような色彩感覚に加えてシャープなカメラアングルだけは最後まで健在であった。
真っ赤な夕陽や黄色や赤の原色の服を着た人物たち、俯瞰の階段や斜めの人物カットなど、点で見れば楽しくなる部分を有している。

岩下志麻は水田建設の為に自殺に追いやられた父の復讐の為に、不正の証拠を得ようと業界紙の会社で西村晃の秘書として働いているのだが、証拠集めの苦労も証拠の品も示されていないのでスリル感がなくヒロインとしての存在感が薄い。
この頃、日活の無国籍アクションがもてはやされていたから、それを茶化すようなコメディアクションをお遊びで撮ったような所があるから、本格的サスペンスの雰囲気は排除したのだろう。
団地の中を覆面をしたコスチュームの子供たちが走り回っていたりしているのもお遊びである。
日活なら宍戸錠を主演にして鈴木清順が撮っていそうな作品であるが、そうならそちらの方が断然いい出来栄えだったように思う。
水田の還暦祝いのパーティーの会場でコーラスグループのデユークエイセスが歌っているシーンは楽しい。
この頃のコーラスグループと言えばデユークエイセスとダークダックスだった。
音楽はクレジットされているから山本直純なのだろうが、作詞は誰だったのだろう。
たぶん寺山修司その人だったのではないかと想像する。
最後に川津祐介の正体が分かり、岩下志麻との恋愛物語で終わるのも安易だなあと思ってしまう。
篠田正浩と寺山修司が意気投合して撮った作品なのだろうけれど、完全な失敗作だ。


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