おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

マリー・アントワネットに別れをつげて

2024-07-30 06:50:57 | 映画
「マリー・アントワネットに別れをつげて」 2012年 フランス / スペイン   
                           
監督 ブノワ・ジャコー                                
出演 レア・セドゥ ダイアン・クルーガー ヴィルジニー・ルドワイヤン グザヴィエ・ボーヴォワ ノエミ・ルボフスキー ミシェル・ロバン ジュリー=マリー・パルマンティエ ロリータ・シャマー

ストーリー
1789年7月14日。バスティーユが陥落し、フランス革命が勃発したその日、ヴェルサイユの人々はまだ何も知らず、いつもと変わらぬ華やかな一日を送っていた。
王妃マリー・アントワネットだけは、予知したかのように悪夢に目覚め、早朝からお気に入りの朗読係、シドニー・ラボルドを呼び出し、自分に心酔するシドニーと話すうちに落ち着きを取り戻す。
7月15日。バスティーユ陥落の報と286人の処刑リストが出回り、騒然となるヴェルサイユ宮殿。
処刑の筆頭は王妃で、3番目には王妃に最も愛され、有り余る富と特権を享受しているポリニャック夫人が記載されていた。
深夜。王妃からポリニャック夫人への情熱的な恋心を打ち明けられたシドニーは、王妃のために、呼び出しに応じないポリニャック夫人を説得して連れてくると申し出が、自宅で睡眠薬を飲んで熟睡するポリニャック夫人の寝姿を、嫉妬と羨望の眼差しで眺めて引き返す。
王妃は取り乱しながらも逃亡の準備を始めるのだった。
7月16日。ヴェルサイユ宮殿は混乱していたが、王は逃亡せずに留まることを決定し、王家の運命は新政府に委ねられることになった。
絶望のあまり立ちすくむ王妃に歩み寄ったのは、光り輝く緑のドレスを纏ったポリニャック夫人だった。
しっかりと肩を抱き合って部屋へ向かう2人の背中に、シドニーは燃えるような視線を投げかける。
ところが、王妃が逃亡を勧めると、ポリニャック夫人は素直に応じてしまい、その一部始終をシドニーは見守る。
自殺者まで出し、更なる混乱の一夜が明けた翌朝、シドニーは王妃に改めて忠誠を誓うが、王妃から召使いに変装してスイスに逃げるポリニャック夫人の身代わりとして彼女に同行するよう言い渡される。
王妃の残酷な命令と冷たい視線と死の恐怖。
シドニーに待ち受ける運命は…?


寸評
バスティーユ監獄の襲撃に端を発したフランス革命と共に、断頭台の露と消えた王妃マリー・アントワネットの名を我々は世界史の授業を通じて知っており、マリー・アントワネットは我々にとって一番有名な王妃の一人である。
物語の語り手となるのはそのマリー・アントワネットではなく、宮廷で王妃の朗読係として働く若い女官のシドニーとしているところがこの映画のミソ。
王や貴族たちはバスティーユ監獄襲撃をどう受け止め、どう対処しようとしたのか。
それを克明に描いた歴史再現ドラマなのだが、イマイチ緊迫感がなく盛り上がりに欠ける内容だった。
バスティーユ襲撃の日の朝から始まる4日間を描いているが、歴史を俯瞰している我々と違って、当時宮殿の中で生活していた人々は、事の重大さの自覚がまったくないままに過ごしていた平凡さを狙っていたのなら、むしろ、それも一つの描き方だったのかもしれない。
貴族たちは宮殿で、いつも通りの生活をしている。
小間使いたちは雑事に追われ、女官たちは王族の身の回りの世話に駆け回り、貴族たちは王やその家族へのご機嫌うかがいで忙しい、いつもと同じ生活を送っている。
しかしそれはほんの数日で消え去ってしまう。
映画はその劇的な歴史を描くのではなく、歴史の陰に隠れた小さな物語を描いている。
ヴェルサイユ宮殿で撮影したとのことだが、歴史映画の楽しみの一つであるところの、その時代にタイムスリップさせてくれる絢爛豪華な宮廷絵巻は登場しない。
あくまでも「フランス革命」という大事件の中で、登場人物たちが抱える小さな出来ごとの積み重ねを描き続ける。
面白いのは、評判の悪いマリー・アントワネット王妃だが、シドニーにとって王妃は憧れの人であり、毎日そわそわとした気持ちでマリー・アントワネット王妃の寝室に向かう姿は、まるで恋人のもとへ馳せ参じるかの如くであることだ。
さらには、その王妃がポリニャック夫人に恋こがれていて、その関係が同性愛的な三角関係の中にあることにつきる。
恋人とも言えるポリニャック夫人への思いに苦悩するマリー・アントワネット王妃。
王妃への恩義と愛情に後ろ髪を引かれながらも、自分自身と家族を守るため宮殿から逃れていくポリニャック夫人。
王妃に同性愛的な思慕の念を抱きながらも忠誠心からポリニャック夫人の逃亡を手助けせざるを得ないシドニーの苦しみ。
終盤のこのあたりの心理劇は観客をスクリーンに引きつける力を持っていた。
身代わりとなったシドニーの微笑みが余韻を残す。


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