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『命もいらず名もいらず 上 幕末篇』 山本兼一

2010年05月14日 | 
幕末から明治を生きた、山岡鉄舟を描いた大作
『命もいらず名もいらず』上巻を読みました。
山本兼一さんは、『利休にたずねよ』で直木賞を受賞され
それがきっかけで著作を読むようになりました。
どの本も面白く、新作を楽しみにしていました。

歴史小説に凝っている頃、さかんに幕末の志士の本も読みましたが
山岡鉄舟という人物については、登場人物の一人というだけで
その人を描いた作品は、読んだことがありませんでした。

上巻は、飛騨高山で暮らした少年時代から、
剣・禅・書に励み修行を続け、真っすぐな心を育み、
江戸へ出て山岡鉄太郎と名乗るようになり、
否応無く尊王攘夷の嵐の中に巻き込まれていくまでが描かれています。



身長六尺二寸(188センチ)、体重二十八貫(105キロ)と大柄な体格に
ふさわしく、剛毅にあふれ、純粋で、正直な生き方を貫いていく。
理屈がきらい。
何事も心で感じるがまま、ありのままの己を信じる姿が
とてもとても魅力的に描かれています。

そして何より、志の高さ。
その道を極めていこうとする厳しさ。
読んでいて、剣の修行というものは生き方を教えてくれる
素晴らしいものだと思いました。
その道を極めていこうとすればするほど
生き死にの条理に迫り、人を大きく成長させていく。
鍛錬、という死語に近い言葉を思い出しました。

 「命もいらず名もいらず、官位も金もいらぬ人は始末に困るもの也。
  此の始末に困る人ならでは、艱難を共にして国家の大業は成し得られぬ也」

これは、西郷隆盛が山岡鉄太郎を評していったと伝えられているそうです。。


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