趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

『騎士団長殺し』 村上春樹

2017年04月06日 | 村上春樹


久しぶりの更新は、やはり村上春樹さん。
何かと話題の新刊です。

やはりその題名に、なになにと引き寄せられ、その不穏な感じを抱きつつ
どんどん読み進める読書となりました。

読みながら思ったことは、今までと少し感じが違うということでした。
文体はあまり変わらないのですが、
小さな表現の仕方がとても流麗な感じがして、感銘を受けました。
そのことが、物語にがぜん深みを与えてより濃度が増すように感じられました。

そして、やはり一作ずつ物語がより身近に感じられるように進化している気がします。
正気を保ったまま「地下二階」に降り、
「壁を抜ける」ということを実況してくれてように感じました。

人間の喪失感というのは、怖いものですね。
それにともなう悲しみやつらさやあきらめや・・・
心の底何があるのか、閉じ込められてしまった思いはどこに行くのか・・・。

この作品には、子どもの誕生があるのです。
これまでの作品にはなかったと思うのですが。

読みながら、青豆さんと天吾くんの子どもの事に思いを馳せました。

村上春樹さんの物語についていきたいと心から思いました。。

『村上さんのところ』 村上春樹

2016年04月11日 | 村上春樹
このところ図書館で予約した本を何冊か読んでいたのですが、
気持ちがいま一つな感じで、読み終わってもぐずぐずしていました。

心に気がかりな事があったり、気持ちが乗ってこない時などは、
こんな本がいいですよね~
河合隼雄さんのいつもの本のあと、また引っ張り出したのです。



この本、昨年出版されるとすぐに購入して何度も読み返したりしていました。

本を読む前にも‘村上さんのところ’というサイトもずっと読んでいましたし、
実際村上さんに相談メールも送ったのです。

てきとうなページをパッと開いたところから、好きなように読み進み、
くすくす笑って終わりにするのですが、ホントに気持ちが温かくなるのです。

深刻な内容からナンセンスな話題まで、実にその相談内容は多義にわたります。
それらをうま~くユーモアに包み、答える文章がまたステキです。

こういった本は、ファンの人以外にはどんな風に受け取られるのかちょっと興味がありますね。
何といってもファンにはたまらない一冊だと云う事は、確かです。。

『職業としての小説家』 村上春樹

2016年01月29日 | 村上春樹
今年最初の一冊は、やはりこの本かな。

本当は昨年出版されると同時に、読んでしまっていたのですが、
ヴェネチアの旅行記ダラダラ書いていて、
時期を逃してしまいました。

本の感想と云うのは、やはり時間をおかずに書くのがいいですね~

時間がたってしまうと何だか熱も冷めて、やたらに冷静に考えすぎてしまう気がします。

何度か画面の前で固まってしまい、結局また読み直してしまいました。


表紙がかっこいいですね~

初めて本を手にした時、しばらく眺めてしまった事を覚えています。

そして、珍しい、と思ったことも。

そんな風にいつもとの違いを感じる読書となりました。

内容は、実に小説家という職業について様々な角度から語られています。

ご自身がどのようにして本を書くようになったか、
書き続けていくと云う事が、どう云う事であるのか、
また書き続けていくための様々な努力のことなどなど。

実に具体的に分かりやすく、いつものクールな文章とはちょっと違う、
ぐっと読者に近づいたエッセイだと思いました。

そして、ずっと京都での講演を思い出していました。
あの時の、ファンに向けての語りにとても近いと感じました。

村上さんは、ファンや読者思いなのですね、きっと。。


気持ちが鎮まる。

2015年02月23日 | 村上春樹
「村上さんのところ」というサイトがあって、
読者のメールに村上春樹さんが答えるというものなのです。

質問の受け付けは終了してしまいましたが、メールのやり取りが公開されているのです。
私はこれを読むのが楽しみで楽しみで・・・。

本当にさまざまな問いかけや、無駄話にあふれていて、
よくそんな質問にも答えるよな~と思うこともしばしばです。

でも、村上さんのお答えはとってもステキなのです。

お陰で最近愚痴が減りました。
そうだよね、そんなの気にしても仕方ないですよね~なんて村上さんに向かってつぶやいたり。

メールのやり取り読んでいるだけで、心がほんわかしてくるのです。
まさに心のサプリですね~

実は私も、ほ~んとにくだらない質問メールを出したのです。
さてさて、お答えメールは届くのでしょうか??

『女のいない男たち』 村上春樹

2014年05月29日 | 村上春樹
koboに現を抜かして、すっかり紙の本から遠ざかっていました。
紙の本、なんて変な言い回しですね。
でも、他に旨い言葉が見つかりません。

村上春樹さんの短編集が出ることも、また出たことも十分承知でしたが、
今回の反応は鈍かったのです。

実際、6篇の中の2篇は既に読んでいたので、
ぐずぐずして中々買いに行かなかったのです。

重い腰を上げ、書店に出かけ、本を手にしたら、
そんな気持ちもどこかに吹っ飛んでしまいました。



今回の短編集は、6編から成ります。

「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「木野」の4編は月刊「文芸春秋」に、
「シェエラザード」は文芸誌「MONKEY」に発表され、
表題作の「女のいない男たち」は、この短編集のために書き下ろされたそうです。

いずれの作品も、様々な事情で女性に去られた、あるいは去られようとする男性を描いていると、
著者ご本人のまえがきにありました。
こんなまえがきも珍しい・・・。

読み始めてすぐに思ったことは、「ああ、本はいいなぁ・・・。」

読書は、字を追うだけではなく、手に取った本の質感、重量感、装丁やら雰囲気やら、
一冊の本という個体を楽しむものなのだな、と思いました。
そして、そうして手に取った本のページをめくる、わくわくするあの高揚感。

最初の「ドライブ・マイ・カー」は、既に読んでいたのですが、
月刊「文芸春秋」で読んだ時と、まるで印象が違っていました。
どうしてなのか分からないのですが、今回の方がより共感する部分が多く感じられました。
そして、ふと、ある予感めいたものが沸き上がってきたのです。

こんな風に、自分の中に予感を持ちながら村上作品を読むことは、多くないです。
どちらかというと、これまでは見えないものの中に手探りで導かれるような感覚を持っていました。

そういえば、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んでいるときにも、
同じことを感じた事を思い出しました。

そんな風に変化を感じるのが、自分の年齢によるものなのか、村上作品の変化なのか全く分からないのですが。
ただ、作品の中に高い温度を感じることと、より物語が身近に迫って来るように思うのです。

深い喪失の物語は、切ない。
時に怒り、闇にさまよい、分かっていても引き返すことなどできない、思い通りにはならない。
読みながら、反対側の女性たち、というものを考えてしまいました。

とてもとても興味深く、面白い短編集だと思いました。。



村上春樹さんに会いに 3

2013年05月17日 | 村上春樹
25分のスピーチの後、休憩無しで「公開インタビュー」へ。

会場は、ファンの熱気で暑いくらいで、
インタビューの前にジャケット脱いでおられました。
濃紺のTシャツに白紺のチェックの半そでシャツをお召しでした。

インタビュアーは、湯川豊さん。
デビュー以来の作品と内面の変化をたどっていきました。


「人間は、2階建ての家のようだ。
1階に玄関があり、リビングがあり、人が集まる場所である。
2階はそれぞれ個室に別れている。地下は、人々の記憶の残骸がある。
そして、地下2階・・・底がどこにあるのか分からない、
本当の人の心の奥底にある物語。」

「地下2階へは、下まで行く通路を見つけた人でないと行かれない。」

「地下1階の、記憶の残骸だけでも作品を作る事はできるけれど、
それは、温泉のお湯と、家庭風呂のお湯ほど温かさに違いがある。」

「地下2階へ降りていく作業は簡単ではないけれど、
ボクは、正気を保ったまま地下2階へ行きたいと思っている。」

「そこにある物語の主人公と共に体験していきながら、次はどうなるのだろうと
楽しみながら書いた小説である。」(最新作)

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に触れ、
最初は「世界の終り」と「ハードボイルド・ワンダーランド」の二つ作品だったが、
なかなか上手くいかず、結局一つの作品になったと。
「世界の終り」は、悪くはないが引きずりこむ力が足りないと思っているので
いつか書き直したいと思っていると、話されました。

『ねじまき鳥クロニクル』で重層的な世界を作ろうと試み、
書きながら主人公と共に壁抜けを体験したと。
そうして、さらに上のレベルに上がることができたと思うと話されました。

さらに『1Q84』では、初めて全部三人称で小説を書こうと試みたと。
それによって、描ける世界が格段に広がり、
感応する物語、共感を呼ぶ物語へと魂のネットワークを作りたいと、話されていました。


最初に、本来は自身の作品を読み返したり、
解説したりしないと明言されていたとおり、こんな風に胸のうちを明かすことは
好きではない事なのだと感じました。

尊敬する河合隼雄先生の魂に報いるため、公の場に出られたこと、
一つ一つに答える姿は、とても率直で正直な人柄がうかがえました。
イヤだと思うときには、嫌そうでしたし、
自分の感覚と違う部分には、明快に否定されていました。
インタビュアーに向かって、というよりも、
目の前のファンのために、ファンに向かって言葉を発していらっしゃいました。

「ちょっといいですか」と話を付け加えるように、
ファンに向かって、率直に、自分の言葉を伝えようとなさっている姿がありました。

まだまだたくさん話されていましたが、最後に
作家という仕事に対する矜持、手抜きをしないで物語を書いている事を
静かに、熱く語ってくださる姿がとても印象深く残っています。

まとまりなく長々書いてしまいました。
この日のことは、すぐに新聞やネットで記事になっていました。
ああ、そうそうこういうお話だったと読みながら感心してしまいました。
上手に要約されていますよね~

その場にいたものとしてできればその時の空気の熱さを、お届けできれば幸いです。。

村上春樹さんに会いに 2

2013年05月14日 | 村上春樹
せっかくの京都なのに、デジカメ忘れてしまいました!

携帯のカメラですが、写りはいかに・・・。

 
京大正門前。
正面に見えるのが会場となった、時計台記念館 百周年記念ホールです。

 

他人のことを「先生」と呼ぶことはまずないと、村上さん。
でも、河合隼雄さんは、違うのだと。
自然と河合先生と呼んでいたと話されていました。

そして、初めてお目にかかった時、一風変わった出会いだったと。

30分位の時間だったのだが、河合先生はほとんどしゃべらず、
あのどろんと重く深みのある眼差しで見つめていらしたと。
それは怖いくらいで、まるで、自分という人間を
判断しないで保留しておくというような感じだったと。
会談の中で沈黙の方が多かった気がすると、話されていました。

それが、2回目に逢った時は一転して顔つきも明るく、快活で、
よくしゃべり、よく笑い、和気藹々と楽しい時間を過ごしたと。
その後はずっとそんな調子でお付き合いが続いていったとのことでした。

最初の一風変わった出会いのことを振り返り、
たぶん、相手のありようをそのまま受け取めるという事をされていたのでは、と
話されていました。

「人の魂の奥底にあるもの、その物語を共有し、人と人を深いところで結びつける、
 深い場所に降りていくという事を共感してくれた人は、
 河合先生の他にはいない。」

「自分の物語を丸ごと受け止めてもらったのは、初めてのこと。」

「キャッチボールを受け止めて、フィードバックするような、
 有り難く、うれしいことでした。」

・・・・・と、最初のスピーチでした。

続きます。。

村上春樹さんに会いに

2013年05月10日 | 村上春樹
晴天の続いたゴールデンウィーク最終日の6日、京都にいました。

「村上春樹 公開インタビュー in 京都-魂を観る、魂を書く」のチケットが当たったのです。
とてもとてもうれしかったのですが、
当選を知ったのが、父の通夜の前日でした。
頭の中は大混乱の中にあり、とりあえず胸にしまっておきました。

ひと段落して自宅に戻ってきた時に、「さて、どうするか」と
考えました。

行くと決めても、GW最終日、新幹線のチケットは取れないし、
大混雑で帰って来れそうもないのです。

「さて、どうするか」
車なら何とかなりそうだという夫に頼み、前日5日から京都行きを決めました。

それから、中断していた『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を
もう一度読み始めたのです。
読み始めると一気に読んでしまい、結局何度も読むこととなりました。
この時感じたものを忘れないように、メモして京都に向かいました。

6日の京都は気温が上って暑いくらいでした。
京都大学の中に入るのは初めてです。
時間が近付くにつれ、報道陣の数が増えていきました。
ホールの前でインタビューされている人も何人か見受けられました。
何故だか緊張してしまいます。

会場内はほぼ満席で、若い人の姿が多いと思いました。
私は中央ブロックの前から2列目で、とても見やすい席でした。
オペラグラスも持参したのですが、いらないくらいでした。
私の斜め前の席に、作家の小川洋子さんが座ってらっしゃいました。

時間どうりに始まり、5分の紹介の後、
拍手の中、村上春樹さんが登場されました。
濃い茶系のジャケットにオレンジ色のパンツ姿です。
初めて聞く肉声は、思っていたよりもずっとよく通るテノールだと思いました。

最初は少し緊張した雰囲気で、とてもシャイな印象を持ちました。
でもそれは、想像していた通りですが。
そして、人前に出ることを普通にイヤだと思う、普通の人だという印象を持ちました。

最初のスピーチは、河合隼雄さんへの敬愛の念がにじみ出た温かいものでした。
河合隼雄さんの口調を真似して、おやじギャグを披露されたり、
河合隼雄さんに逢うのを薦めたのは、河合さんのファンであった奥様である事、
初対面での、河合さんの怖かった眼差しについてなどと披露され、
エピソードに事欠かない感じがしました。


取り留めなく、長々書いてしまいました。
今日は、ここまで。。

『色彩を持たない多崎つくると 、彼の巡礼の年』 村上春樹

2013年05月08日 | 村上春樹
手に取ることを心待ちにしていた新刊です。
開いてもすぐに読まずに、少しずつ少しずつ丁寧に読んでいこうと思っていたのに、
読み始めると止まらない・・・。

半分ほど読み進んだ頃、父が亡くなりました。



葬儀にまつわるあれやこれや、本当にあわただしい日々でした。
ちょうどゴールデンウィークに入ったので、時間が取れてよかったです。

読書が再開できたのは、多分この本だったからだと思います。
ただ、時間が開いてしまったのでまた最初から読み返すことにしました。

それでも、少し前に読んだ時の印象と変わらないことに気付いたのです。

痛々しい、生の感情というものを一番に感じました。

いつもの、乾いた感じのするクールさとは違う、
一歩人間の前に進み出た、痛みを感じる文章、描写だと思いました。

『ねじまき鳥クロニクル』から一作ごとに、
少しずつ少しずつ人間に近付いているような、
より具体的な感覚や感情のほとばしりを感じるのです。

これまでずっと遠巻きに見えていたものに、
だんだんと近付いているような錯覚に陥りました。
それは、まぎれもなく人の成長の姿なのかもしれません。

闇に紛れ、闇に閉じ込めてきた心の叫びに、耳を傾け、正面から向き合うという
強さ。
その強さを、成長することで人は身につけていくのかもしれないと思いました。
そうして、悲しみや痛みを受け止めることが本当にできるようになるのかもしれません。

今回初めて自分自身の物語として感じる事ができて、
何故だかとても不思議な心持ちがしているのです。
年齢のせいなのか、時間的空間のせいなのか、はたまた???

とても余韻の深い物語だと思いました。。



『パン屋を襲う』 村上春樹

2013年04月09日 | 村上春樹
『パン屋を襲う』 とくれば村上春樹ファンは、やはり『パン屋襲撃』
『パン屋再襲撃』を思い出しますよね。

細かな内容は忘れてしまいましたが、乾いた感じの外国映画を観ているような
感じがしたことを覚えています。



ドイツ人のカット・メンシックさんのイラストがステキです。
装丁もとてもクール。
暴力的で不穏な雰囲気が、この短編集を見事にアートにしていると思いました。

この絵本化にともなって、『パン屋襲撃』『パン屋再襲撃』を改稿し
改題したと、著者ご本人があとがき書かれていました。
本を手に取ると、ピカピカで全く違う物語の世界に入り込んだようです。
確かに、改題のほうがよりイラストに合っているような気がします。

村上春樹さんといえば、3年ぶりの書き下ろし長編小説が、
もうすぐ発売になりますよね~
楽しみで、そわそわしてしまう感じです。。

『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』村上春樹

2011年08月24日 | 村上春樹
10年ぶりに帰ってきた、アンアン連載の伝説のエッセイ
『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』。
村上さん曰く
「“日本でいちばんおいしいウーロン茶”を目指して書いた」エッセイだそうです。



前作『村上ラヂオ』と同じく挿絵は、大橋歩さんのステキな銅版画です。

日本でいちばんおいしいウーロン茶って・・・思わずクスリと笑ってしまいますね~
そんな短いエッセイが詰まった一冊です。

‘肩の力を抜いて、気楽にご賞味ください。’とあるように、
リラックスして、ゴロゴロしながら、ちょっとずつ読んでしまいました。
手に取った感触も好きな感じです。
軽くて、シンプルで、ひかえめな感じ。
あっちこっち行ったり来たりしながら、何度も読んでしまいました。

このところインタビュー集やエッセイなどの村上さんを読む事が続いたので、
語る言葉と、書く言葉の違いを強く感じています。
書く言葉の方が圧倒的に雄弁だと思います。
当たり前と言えばそれまでですが、流石だと思いました。

以前は、どちらかというと語る言葉の印象を持っていたのですが
エッセイや雑文集などを読んでみると、とてもとてもホットな人柄がにじみ出ていて
もう少しばかり身近な存在に感じられるのです。
多分それが読者を思う村上さんの心意気なんだと思います。

頭のこりをほぐしてくれる一冊です。。


「非現実的な夢想家として」

2011年06月15日 | 村上春樹
作家の村上春樹さんが、9日スペインのカタルーニャ国際賞授賞されました。
おめでとうございます!!

そしてその授賞式で配布された受賞スピーチ原稿がネットで公開されていて、
全文読むことができました。
(私は「毎日JP」で読みました)

そのスピーチは、「非現実的な夢想家として」と題されて
3月11日の震災と福島原発事故について話されました。

大きな戸惑いの中にあり、語る言葉を失って
どのように、どんな切り口であの震災について語るのか、
村上春樹さんでなくてもとても注目してしまいます。

読んで一番強く感じた事は、‘王道’ということ。
どこにも逃げず、隠れもせず、強がりもせず、はかなみもせず、
平易な言葉で、分かりやすくそして尚且つ力強い言葉で語ってくれました。

私も、「非現実的な夢想家として」生きる事を学びたいです。
迷いや戸惑いは消せなくても、言葉はつないでいかねばなりません。
声を上げ、メッセージを発信する事で前に向く事ができる・・・。

心にわきあがる疑問や戸惑いを言葉にして、
たとえ拙い表現であったとしてもその言葉に責任を持ち、
自分の心を受け止める・・・。
ああ、もう人任せにしていてはいけないのだな。

まっすぐな心のメッセージが、スペインから届いた気がしています。。

『村上春樹 雑文集』 村上春樹

2011年03月01日 | 村上春樹
ちょうど図書館の本が途切れたので、今がチャンスと読みました。
というより、読み出したら止まらなかったというのが本当の所です。

本当に村上春樹さんの文章が好きなのだと思いました。
選ぶ言葉や、切り口や展開の仕方などなど。
そして何より、文章のリズムがいいのです。

村上さんの小説でも同じことが言えるのですが、
ちゃんと物語を追っていけないことも度々あります。
途中ではぐれてしまい、道に迷うというような・・・。
でも、ちっとも嫌ではないのです。
流れに任せて読み進めばいいのだと分かっているので。

でも、こういった雑文やエッセイの類は、とっても気楽ですね。
心地いい文章に身をゆだねて、ただただ楽しめばいいのですから。
もしかすると村上春樹さんの小説が苦手な人は、
エッセイなど読まれるといいかもしれません。
とてもすっきりした、リズムのいい文章で読み易いと思います。



読み出したら止まらなくなったのには訳があります。
最初のほうに‘牡蠣フライについて’というくだりがあるのですが、
この表現の仕方が面白くて、ついつい読み進めてしまったのです。

読者の質問に答えた文章でした。
その答えが実に村上さんの創作活動を表していて、興味深かったです。

もっとも印象深かったのは、地下鉄サリン事件について
アメリカの雑誌の依頼を受けて書かれたものです。
結局この文章は掲載されなかったそうですが、
とても心に響く内容でした。

また、改めてエルサレム賞受賞のスピーチを読むと、
‘システム’という言葉がじわじわ迫り、
決意のような、村上春樹という人の何かが
胸に迫ってくるような感じがしました。

音楽についてもたくさん書かれていて、
ホントにあれこれ楽しみな一冊です。
おすすめしま~す。。

『ノルウェイの森』 村上春樹

2010年09月02日 | 村上春樹
今この時期‘ノルウェイの森’と検索すると
映画版の方の記事がずらりですね~
ベネチア映画祭への出品と、大見出しがありました。

いつもいつも、いつか読み返したいと思っていても
手元に溜まった読まねばならぬ本手近な本を手にしてしまい
なかなかなかなか再読できずにいました。

それが急に図書館の予約本が途切れたのです!!
これはチャンスと、何十年かぶりの再読しました~

なんだか学生時代の古い友人に再会したような、感慨がありました。
物語の詳細はすっかり忘れていて、
所々に記憶の断片を見つけることはありましたが
物語にすんなり引き込まれてどんどんどんどん読んでしまいました。

こんな風に若き女性の胸の内、描いていたんだと驚きもあり
馴染みの、やれやれもあり、
出版された当時、すぐに買って読んだ当時の自分を
思い出そうとしました。

この本が書かれた年に私は結婚し、
この本が出版され、読んだ時には娘が生まれていました。
ただただ夢中な日々の中にあり、
自分の趣味の読書はこの後めったにしなくなるのです。
今よりももっともっと感じていることを言葉にできずにいましたし
読後の‘死’のイメージが強く残っています。

今回は、再読、というよりも、改読??という感じがしています。
改めて読んだ、という感じ。
新鮮でした。懐かしい香りがするのに、新鮮な読みになりました。

ワタナベと緑の会話に大笑いし、
キザキの文字に緊張して、
レイコさんに和んだり・・・。
直子という名前には、やはり心震えました。
やはり、ワタナベの中に春樹さんのかけらを見つけてしまいますね~
どの著作の主人公にも通じているような・・・。

そんなワタナベに、もっとも共感してしまう自分。
でも、それは自分とは違う、と分かっている。
自分の中にもそういうところがあるんだな、と感じさせてくれるから。
それを素直に表現すればいいんだと、背中を押してくれる・・・。
何ともいえない安心感が広がるのです。
モテルわけですね~

何とも言えず、胸に迫る本だと改めて思いました。。

村上春樹 ロングインタビュー@考える人

2010年07月16日 | 村上春樹
季刊誌「考える人」夏号が出ることを楽しみに待っていました。
作家の村上春樹さんへのロングインタビューの特集の事を
新聞広告で知ったので。
へぇ~そんなに長いインタビューに応じたんだと
意外に思っていました。
買い損ねてはならないと、本屋さんに注文しました。

届いて、びっくり!!
表紙のモノクロ写真は、村上春樹さん。
ファンにはたまりませんね~



インタビューは、箱根のホテルで2泊3日をかけて行われたようです。
ホテルで撮影された数枚のモノクロ写真が、落ち着いた雰囲気を醸し出しています。
箱根のあの有名な老舗ホテルだとわかります。

本当に長い長いインタビューです。
それだけに内容が濃く、読み応え抜群です。
印象的なのは、春樹さんが、普通に、素直に語られている感じがすること。
今までの作品についての周辺事項や、作品と作品のつながりや
関係性など、とても興味深く語られていていました。

作家自身の言葉があるとまた違った発見があるものだな、と思いましたが
それによって作品への思いが変わるわけではありません。
むしろ、そうやって各々の胸に湧き上がる物語を大切に、と
背中を押されているような感覚がありました。

そして、やはり何度も読んでみるのがいい、と
もう一度読んでみる事で、見えなかったものが見えてくると
強く思いました。

長い長いインタビューは、作品の事だけでなく
オウム真理教の裁判の事や、子どもの頃の話、
国内外の作家の話、私生活の断片などなど
多義にわたり、本当に読み応えたっぷりでした。

『1Q84』BOOK1~BOOK3のことについても語られています。
やはり、読んでからこちらを読まれるのがいいと思いました。。