趣味は読書。

気ままな読書記録と日々思うこと、備忘録

「朗読者」ベルンハイト・シュリンク

2009年07月17日 | 
公開中の映画『愛を読むひと』の原作、
世界的ベストセラーとなった「朗読者」を読みました。
映画は先月観に行って、とても良かったので
原作を読むのを楽しみにしていました。

読みながら、映画は原作を丁寧に映像化していると思いました。
原作は映画を、映画は原作をまるで補うような感じです。
そして、主演のケイト・ウィンスレットは
渾身の演技でハンナを演じたと思いました。

原作はミヒャエルの視点のみで語られるので
ハンナの気持ちは分からないのです。
彼の感じたままの描写であり
想像なので
多くは語られません。

でも、映画は違います。
ハンナが語り、ハンナの表情が伺えます。
それは多分映画の製作者の解釈だと思いますが
私はそれがはずれていないと、読みながら思いました。
ですから、映画だけ観た時はミヒャエルの気持ちの方に
不明な感じを持ったのですが
原作を読むことで、別な視点が得られたのでした。

立場の違う‘倫理’
立場の違う‘正義’
立場の違う‘法律’というもの。

映画を観た後、ミヒャエルはハンナを罰したのだと思っていました。
だから手紙の返事を書かなかったのだと。
でも、原作ではずっとハンナに対して罪の意識を持っていたとありました。
たぶん、複雑で相反する気持ちだったのでしょう。
‘罪と罰’

この本は、簡単に読み飛ばしていくことができませんでした。
行きつ戻りつしながら
丁寧に何度も読んだ箇所が多々あります。
悩み多き主人公ミヒャエルの心の旅の物語。
彼の心に癒しは訪れるのか
幸せというもののうつろいを
考えさせてくれる物語だと思いました。。