秀明記(syuumeiki)

着物デザイナーが日々感じたこと、
全国旅(催事)で出会った人たちとのエピソードなど・・・
つれずれなるままに。

今日も少し着物話。

2007年08月24日 20時26分31秒 | 着物話
                   
今日からワタクシ、堅気のサラリーマンになります。(嘘です。)

一週間催事で大阪通い。京福、京阪、地下鉄を乗り継ぎ天王寺へ。
(あ~、考えるだけで疲れますわ。でもそれが日常ってのが世間なんですよね。)

そこで気持ちを切り替えねば、と2日続けての「着物話」。

といってもそんなタイソーなモンでも無いんで、お気楽に・・・。

先日テレビで高齢者などに次々高額な着物を売るつける業者に対応するための
百十番が開設された、というニュースが流されていましたね。

少し遅すぎた感はいなめませんが良い事だと思います。

昨年、さんざん業界を叩いて金儲け、あげくは業界の一業者の顧問弁護士に
収まった人もいたけど、今回はいたって真面目なセンターのようです。

ま、それはともかく、高齢者に対しての販売は、今は販売店も神経を尖らせて
おります。

ワタクシがお世話になっている所もそうでして、70才を越えたお客様は、
たとえ現金であろうと保証人が必要です。

考えてみれば失礼な話でもありますが、これは痴呆症の方に次々販売した業者も
いたので仕方ありませんね。

お客様によっては「何で、自分の金で着物買うのに保証人がいるのよ、イイワよ、
あんたのトコではもう買いません!」と怒って帰ってしまう方もおられます。

今日はそんな厳しい現在、ちょっと嬉しい思いをさせて頂いた催事でのお話。

その方は仮に「キクチャン」と呼ばせていただきます。年齢はもうすぐ90に
手が届こうか、という辺り。

150cmにも満たない、和服と日本髪がとても似合う、チャーミングな御婆さん
です。常にニコニコされていて、彼女の周りはいつも朗らかな輪ができてます。

その「キクチャン」、我がコーナーで一つの作品をじっと見ておられます。

モミジ柄の付け下げです。「キクチャン、お気に召しました?」、とワタクシが
聞くと(年上なんだけど、そう呼ばせてもらえる雰囲気なんです。もっとも周りは
全部キクチャンより年下ですけどね。)

「う~ん、来年の踊りの演目、奥山のモミジなんだよねぇ。まだ練習も始めて
ないんだけどね。」

普通ならオイオイ、そのお年で来年着る着物の話かい?というトコロなんですが、
それを言わせぬオーラが彼女から発散されてました。

「これ着る前に死んじゃうかもしれんけど、それを励みに長生きしようかね。」
貴女は~絶対~死にませ~ん!おもわず言ってしまいましたね。

もちろん、生活にゆとりもあるし、保証人の問題もクリアーしてるからOKです。

が、その後が大変。ワタクシのコーナーにもモチロン帯はあるんですが、演目に
関係あるものを、といわれると難しい。

そこで二人で会場を隅から隅まで探しまわって、結局キクチャン自身が見つけ
出してこられました。

「この横笛の柄がいいね、演目にも関係あるし。」
ワシャ、踊りの内容まで知らんがな。・・・でも楽しい時間でした。

帰りがけ、「こうして、パラり、と巻き手紙を広げてね。」とクルリとひとさし
舞ってくださいました。色気ありましたよ、キクチャン。

しっかりお金をもって老後を過す事が一番大事。でもいっぱいお金残しても
それが原因で子供たちが仲たがい、なんて話もよく耳にします。

ほどほどでいいんです。でもキクチャンみたいな人(老人とは言いたくない)に
出会えると、まだまだやね、自分も、と思うし、力も与えてもらえます。

来年、見事な舞を見せてくださいね、キクチャン!