先日、大原から滋賀県へ車を走らせていて、目にとまった「百井」への道標。
そういえば、若い頃、毎週のように「尾越」の民家で宴会していたっけ。
その「尾越」へ向かう途中の村が「百井」でした。「百井」を越すと、車一台が
やっと通過できるような切り通しの峠があり、そこを越すとドン詰りの村が「尾越」
1~2軒はまだ人が住んでいたけど、今はどうなっているんでしょうね。その切り
通しの峠の手前に草生した墓場がありました。
昔は寺もあったそうですが、その当時はすでに跡形も残されていませんでした。
通称マムシ寺、と呼ばれていたそうですが、確かにマムシが好みそうな地形でしたね。
それを教えてくれたのは怪人O氏。摩訶不思議な人でしたが、今はどうしているん
でしょうね。風の便りでは市長に脅迫状を出して逮捕された、なんて聞いたけど。
尾越の古民家はO氏が、どんなウソ八百を並べたのかは知りませんが、持ち主から
タダ当然で借りていました。(家主は京都市内に暮らしていたそうです)
別荘代わりのように毎週末利用していたのですが、ある夜のことです。娘を助手席
に乗せて百井の村を通過。なにしろ舗装もされていない夜中の山道、周りは漆黒の闇。
峠に差し掛かろうとしたそのとき、前方に真っ白な煙玉のようなモノがポカリと浮かんで
いるのが見え、思わずブレーキを踏んでスピードを緩めたそうです。
それは地上2メートルほどの位置で、ゆらりゆらり、と形を少しづづ変えながら漂って
います。行くか戻るか一瞬考えたけど、ままよとアクセルを踏んで前進・・・・。
その物体というか気体の下を目を瞑るようにして通過。本当は全速で走りぬけたい
ところですが、急坂の登り道、しかも狭い地道ですからスピードは出せない。
数メートルを走ったところで、後ろを振り向いた娘が絶叫、「お父さん!ついてきてる!」
O氏がバックミラーで確認するとそいつは、親鳥を追うひな鳥のように車を追いかけて
きています。今思うとあんな真っ暗ななかで、それをはっきりと目視できたのは不思議
でしたな、とO氏は語ってくれました。
パニック状態の娘をなだめつつ、ようやく峠を登りきったO氏がもう一度バックミラーで
確認すると、それは峠までついてきたところで追跡を諦めたようです。
まるで、旅人を見送りにきた里人のようにゆらゆらと空中を浮遊したいた気体の正体
は、なんだったのでしょう・・・。それから何度も夜間にその場所を通過したけど、そんな
経験はその後は一度もなかったそうです。
「尾越」の村は正確には廃村ではないのですが、滋賀県の永源寺の奥にある廃村、
ここでブロック積職人Mやんも同じような経験をしています。
現場が山中だったので、数日泊り込んでしていたのですが、ある夜、空腹に耐えかね
て下の町までラーメンを食べに出た、その帰り道のことです。
軽トラックを走らせ、その廃村にさしかかったとき、ヘッドライトに浮かんだ白いモヤの
ような影。それは追いかけてはこなかったけど、Mやんの前を右から左へユラ~リと
横切って、スウッと消えうせたそうです。
あくる日、その話を現場監督にしたところ、「あ~、あの場所は、あもよん(九州の方言で、
化け物のこと。)が出るばい。だれも夜中にはあそこはいかんとよ」と言われたそうです。
どちらも人の形はとらず、気体のような形態だったそうです。長く人間が暮らしていた村
などは、なにかしらの「念」のようなモノが残留しているのでしょうか。
そして、マレに人が近づくと恋しさに姿を現したり、追いかけたりするのかも知れませんね。