ある日、子供たちを学校へと送り出したワタシは、
そのまま庭の手入れを始めた。
庭には塀があるので、しゃがんで作業していたワタシが見えなかったのだろう。
塀の外から、義祖母とその友人(近所に一人で住んでいる)の声がし始めた。
少々、タイミングを取ることに難のあるワタシは、
挨拶すべきタイミングを見計らっていた。
その時、なんとなく聞こえる話は、ワタシのことであると気付いた。
これは、出にくい。
どうしよう。
しばらく、そのまま草むしりをして、話が途切れた瞬間に、
ワタシは立ち上がった。
「あら、おはようございます!」
もちろん、笑顔で、聞こえていなかったとばかりに。
その時の義祖母は、表情一つ動かさずいたのだけれど
義祖母の友人はたじろいで、義祖母になにやら話しかけていた。
それを諫めている義祖母。
見ていて“やっぱりな”と思った。
確実に、ワタシの悪口を義祖母の友人は言っていた。
義祖母は、策士だ。
友人の悪口を聞いているだけで、一切発言はしていない。
そうやって、きちんとした【事実】を作る人なのだ。
そして、自分は悪いことはしていないと言い張る。
もちろん、その通りなのだ。
悪いのは、友人のみ。
義祖母の友人は、近所でも評判の表面的にうるさい人で、
今までも、近所のことでまくしたてて
かなりひんしゅくを買っている人だった。
そんな人だったから、ワタシは別に気にせずに済んだのだけど。
どっちみち、ワタシの人生には関係のない人たちだったので、
案外、気にしいのワタシでも、悪口を言われても平気だった。
義祖母の周りの連中は、義祖母の発言をまんま受け止めていたので
ワタシの評判は、悪かったと思われる。
ワタシに言わせれば、周りの連中こそが可哀そうだった。
それは、義祖母の残された日々を見れば、一目瞭然だった。