転送されてきた相手方の弁護士からの文書には、
その女性とは性的関係はないが、女性側に迷惑をかけたくないので
慰謝料としてではなく、解決金として支払いたい、とあった。
それも、不貞離婚慰謝料としての一般的請求額の、満額だった。
なんとなく、相手方の弁護士の文章からは、
もう手に負えないし賛同したくないので、ここら辺りで折り合いつけて解決したい
という雰囲気を読み取ったのは、ワタシの都合よさなのだろうか(苦笑)
ちょうどその頃、娘たちが夫のFacebookアカウントを見つけた。
どうやら、ワタシが家を出てから作成したとみられ、
SNSに疎い夫が、わざわざ作ったということに、目的を感じてしまってドン引きだった。
夫が付き合っていた若い女性も、SNSアカウントを持っていて
関係が分かった時点で、ネットに強い娘がある程度、彼女の出身校や交友関係など、
押さえていたのだった。
家を出る前、娘がなんとなくテレビ番組にかこつけて、
夫の前で匂わせていたのだけれど、夫は全くと言っていいほど
自分のことだとは思っていなかった様子だった。
その夫のアカウントに、ある写真があった。
愛犬と同犬種の写真があった。
その写真を見て、嫌な予感がした。
その犬の、これからの人生ならぬ、犬生と
なんとなく、第六感的な、ものだった。
今までの、夫側との平行線の、不毛なやり取りはなんだったのかと思うくらい
その後は加速度的に話が進んだ。
こちらの条件をすべて飲む形で、解決へと向かった。
1.愛犬はそちらに渡してもいい。動物保険の契約者変更にはすみやかに対応する。
2.離婚には応じます。記入した離婚届を、弁護士宛に送ります。
3.解決金を支払います。ですが、一度には無理なので、一部分割払いでお願いします。
ということで、落ち着いた。
1.の契約者変更にあたり、保険会社に概要を伝えたところ
事情が事情なので、特別に、契約者の承諾なく手続きをさせてもらいますということだった。
2.については、1ヶ月ほど過ぎたころに、弁護士からのお手紙として送られてきた。
3.については、ないところからは取れないので、誠意として受け取った。
弁護士からは、報酬として、一括して受け取った現金分からいただきます、ということで
本当に良心的にしていただいた。
(後にわかったのだけれど、ワタシが相談していた時、弁護士の彼女は結婚していた。幸せの絶頂期に、このような暗い話をお願いしてしまって、申し訳なかったと思う……いくら仕事とはいえ)
夫から受け取った『解決金』で、三女の居住費を払えた。
これが、ずいぶん助かった。
そして、離婚届をもって、自宅近くの役所へ行った。
(勤務先から帰宅する途中にあるので)
離婚成立まで、一年、かかった。
提出した日は、大好きだった実祖母の誕生日だった。
(終)