公営競技はどこへ行く

元気溢れる公営競技にしていきたい、その一心で思ったことを書き綴っていきます。

有馬記念回顧

2005-12-25 18:55:14 | 大レース回顧集

まさかこんなことになるとは・・・

久々に当日入場券発売がなく、全て前売りという形で入場制限が敷かれた中で開催された第50回有馬記念。だが、ほとんど当日来場したファンあのハイセイコーが日本ダービーで負けたとき以来の「脱力感」を覚えたんではないだろうか。

スタートは9・タップダンスシチー16・オースミハルカが揃う形でハナに立とうとしたが、このレースで引退、そして最終レース終了後に引退式を行なうタップダンスが最後の主導権を握って先頭。1周ホーム通過時点では他を若干離し気味にして先頭。さて、6・ディープインパクトは?

スタートは最後方からという競馬。しかし1周目スタンド前では後方から3~4頭目ぐらいに漸進。悪くない位置に来ているとは思ったが、「案の定」、馬は掛かり気味であった。

10・ハーツクライがいつもとは違う、3番手あたりと前々の競馬。それを交わして今回、五十嵐冬樹に鞍上が戻った4・コスモバルクがハーツを交わして3番手。

14・リンカーンがほぼ中団。その後ろに15・デルタブルース3・ゼンノロブロイが並んでいく。

勝負どころの3~4角。前の集団が固まった状態になったが、ディープインパクトが外からじわっとといった感じで上昇していった。申し分のない手ごたえのようにも取れ、史上初の無敗の4冠馬はこれでもらった!とさえ感じられたが・・・

直線に入ってコスモバルクが一旦は先頭。しかし満を持してハーツクライが先頭に立つ。そして外からディープインパクトがやってきたが、はっきりいって、「いつもの」ディープインパクトの伸び脚とはいいがたい。ハーツクライは前々勝負策がうまくいって念願のG1制覇。ディープは半馬身差及ばず初黒星。3着リンカーン、4着は大健闘のコスモバルクが入った。

これまで、ジリ脚っぽいところが災いして勝てそうで勝ちきれない競馬が続いていたハーツクライ。最後の伸び脚は鋭い部分があっても終わってみれば2着が精一杯という典型的な善戦マンタイプの馬であったが、今回でそれを返上した。

ジャパンカップでは欧州の名牝・ウイジャボードを一瞬怯ませるほどの戦慄を覚えた強烈な追い込みを演じ、勝ったアルカセットとの長い写真判定に持ち込んだ。普通に考えれば今回の最有力候補に間違いはなかったが、何せディープインパクトという存在が大きく、しかもこの馬は前述したように「ジリ脚」っぽいところがあるんで、ファンの多くも過大なる評価ができなかったのでは?

しかし、今回は完全に作戦勝ちだった。ディープインパクトという存在がある以上、鞍上のクリストフ・ルメールは前々での競馬といういつもとは全く違う競馬に転じた。

さらに前にいたコスモバルクの気合いも良かったんで、バルクマークに出て行けたことも勝因。そして中山は直線が短い。ディープインパクトが来る前に先に競馬を行なうというまさに理想的な競馬。日本ダービー宝塚記念、ジャパンカップと3回もG1で惜敗した苦い経験を一気にここで晴らした感じだ。

鞍上のルメールも過去に日本のG1では2着が5回となかなか勝ちきれなかったが、ついに念願のG1制覇。そして、この勝利は後世にも語り継がれる「歴史的一勝」であるのは間違いなかろう。そしてこのような競馬ができるんであれば、中長距離戦線では今後も主役を演じれることだろう。

リンカーンも早めに先頭集団に加わり、直線半ばまではいい勝負を演じるも3着どまり。こちらのほうは善戦マンどまりのまま。一方、コスモバルクの今回の走りは見事。結果は4着だったものの、鞍上が五十嵐冬樹に戻ったのが良かったのかもしれない。いつもなら引っかかるところがあるのに今回はそれがなく、一時は先頭に立って満場のファンを大いに沸かせた。

ゼンノロブロイは向正面でデザーモの手が動き苦しい競馬。8着に終わる。やはり馬のピークは昨年までだったのかもしれない。デルタブルースも全くいいところなく11着と惨敗。タップダンスシチーも最後までよく逃げたが、やはり往年の走りではなかった。

さて、なぜ負けたのか?ディープインパクト。

まず、馬体重が440キロとデビュー以来最低体重になったことも原因として挙げられるだろう。また、陣営は「順調にきた」と盛んに言っていた調教でも、雪の影響から水曜追いが満足にできず、金曜にもう一本追い切りをせざるを得なくなったことも影響した形となった。そして一番の問題が輸送。

当初は雪の影響による大渋滞を予想して、23日午後8時に栗東を発つ予定が、名神高速道路が栗東インター地点で70キロ渋滞という道路情報を察知して24日午前5時前に変更。当日正午過ぎくらいに到着したようだが、これまでになかった環境の変化が馬の調子を微妙に狂わせたのかもしれない。

http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2005/12/25/01.html

そしてそれ以前の問題として、これまであまりにも「常識外れ」の競馬をやりすぎたことも挙げられよう。とりわけ3冠馬達成となった菊花賞は歴代の名馬であっても道中引っかかりながら最後勝ったなんてことはなかったからだ。ものすごい競馬をこれまでやりすぎたことに加え、これまでの環境とは違った変化も影響。確かに今回はいつもにはない理想的な競馬を進めたとは思うが、ディープインパクトが持つ爆発的な瞬発力は全く感じられず、普通の名馬というような印象でしかなかった。

これで終わるような馬ではないだろうが、今後は前々勝負といった競馬を覚えることが必要になってこよう。古馬になればズブさが出てくるし、これまでの常識外れのような形の競馬では今後勝つのは厳しいんではなかろうか。

とりあえずはしばらく鋭気を養い、来年、新たな気持ちを持って戦いに挑んでもらいたいものだ。

追伸

ハイセイコーがダービーで負けた原因は序盤のオーバーペースだったといわれている。その要因を作ったのがボージェストという馬で、当時騎手だった池江泰郎調教師が騎乗。しかしながら、今度は自分の管理馬でファン・マスコミを落胆の底に突き落とすとは思っても見なかったことだろう。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中山大障害回顧

2005-12-25 10:29:19 | 大レース回顧集

伝統の第128回 中山大障害は24日行われた。

今年は有力馬が何頭か揃い、混戦ムード。1番人気は1年ぶりの出走となったイルミネーションジャンプSで2着の昨年同レース2着、12・メジロオーモンドが1番人気。未勝利を勝った後出走した京都ハイジャンプで快勝した6・テイエムドラゴンが2番人気。東京オータムジャンプを勝った11・バローネフォンテンが3番人気。

1・マイネルマルカートが先頭に立ち、バローネフォンテン、10・メジロベイシンガー、9・アズマビヨンドあたりが続き、テイエムドラゴンが中団、メジロオーモンドは後方の位置で最初の大関門・大竹柵障害へ。

全馬全て飛越を終え、逆回りに入った時点でバローネフォンテンが先頭に立つ。少し離れて5・マイネルユニヴァースあたりがやってきたが、それほど順番の入れ替わりがなく、続く大関門の大生け垣障害へ。

ここも全馬飛越を終えた。順回りに戻ってメジロオーモンドが一気に仕掛けると動きが熾烈になっていき、向正面では5~6頭ぐらいが固まる展開となったが、3角あたりでテイエムドラゴンが一気に仕掛けると他はついていけなくなり、メジロオーモンド、バローネフォンテンといったあたりはズルズル後退。4角では完全にテイエムドラゴンが先頭に立った。

中山グランドジャンプとは違い、直線に置き障害がないことからテイエムはその後後続を大きく引き離すばかり。2着争いはメジロベイシンガーと3・テレジェニックが争っていたが、直線半ばで、2・メルシーエイタイムが一気に浮上して2着。テイエムはメルシーに何と9馬身の差をつける圧勝だった。3着はメジロベイシンガー。

バローネフォンテンは11着、メジロオーモンドは12着と大敗した。

3歳馬の中山大障害制覇というのは68年12月に行なわれた第61回のタジマオーザ以来37年ぶり2回目の快挙。そもそも3歳馬の時点で障害転向をする馬も少ないことから歴史的快挙となったテイエムドラゴンだが、かつての秋の京都大障害時代を振り返ってもいわゆる秋の「両大障害連覇」というのも88年のヤマニンアピール以来なく、これまた快挙。となれば、まだ3歳の身だし、唯一障害馬としてJRA顕彰馬に輝いているグランドマーチスの再来という見方も十分できるというもの。

しかしながらテイエムドラゴン、平地時代は全く見どころがなく、7月函館の未勝利戦以外は馬券の対象にさえなっていなかったという馬だった。

ところが3歳平地の未勝利戦がなくなり、「普通ならば」リストラやむなしの状況に追い込まれて障害転向したところ、10月の京都未勝利戦を圧勝すると、続くG2京都ハイジャンプは西谷誠が騎乗してこれまたアズマビヨンドを4馬身ちぎって優勝。ちなみに今回騎乗の白浜雄造はそのときアズマビヨンドに騎乗していた。

この圧勝により、未勝利戦で勝利させた白浜に鞍上が戻った今回も京都ハイジャンプと同様に、道中中団あたりをキープし、勝負どころで一気に勝負をかけるという競走で他をまたぶっちぎった。

飛越がうまいというよりも、レースの仕方が実にうまいという馬。これからもタイトルを量産していくだろう。久々に現れた障害の超大物といっても過言ではなかろう。

メルシーエイタイムは前がバテたところを一気に追い込んで2着を確保。10番人気であったことから波乱に一役買った。こちらも3歳馬で、伝統ある中山大障害史上初めて3歳馬のワンツーフィニッシュとなったわけだが、こちらは今年2月の小倉新馬を勝ったもののその後勝利できず、平地は見切りをつけられて未勝利を勝っただけで今回の一戦に臨んできた。

テイエムドラゴンとは実力差がまだ大きいものの、来年以降はテイエムと障害界を牽引していくことだろう。

メジロベイシンガーはしぶとく前々勝負したものの最後バテてしまった。メジロオーモンドは向正面で勝負をかけたところで終わり。バローネフォンテンは距離が長すぎたか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする