7・ディープインパクト一色となった第133回天皇賞(春)。
単勝1.1倍。圧倒的な1番人気となったディープインパクトは前走よりも4kg減の438キロであったが、とりたてて細いというような印象はなく、ほぼ完璧な作り。
スタート。やはり出遅れた。
しかし菊花賞のときとは違ってその後の反応は実によく、1周目のホームスタンド前では完全に折り合いをつけていた。
先頭は17・ブルートルネード。5・トウカイトリック、8・ビッグゴールド、15・シルクフェイマスあたりも差なく続く。
2番人気の11・リンカーンは5~6番手の位置。3番人気の2・マッキーマックスは中団よりやや後ろ。さらにその後ろに4番人気の9・デルタブルースが続く。そしてディープインパクトは後ろから5頭目ぐらいの位置でホームスタンド前を通過。
2角で気合をつけたディープは、坂の手前あたりでゴーサインが出され、坂の上で一気にごぼう抜き。その動きにリンカーンなど後続グループが反応できず、あっという間に坂下途中で先頭に。
直線に入ってもしっかりとした脚取りで内ラチ一杯を走るディープを追う馬はリンカーンしかいなかったが、差は一向に縮まらない。
結局終わってみればディープインパクトは3分13秒4という、マヤノトップガンが持っていたJRAレコードをなんと1秒も上回るレコード勝ち。2着に3馬身半差でリンカーン。さらに5馬身差の3着争いを1・ストラタジェムが制して3着に入った。
古馬に入っていい意味でズブさが出てきたディープインパクト。
直前の追い切りでは遅れをとってしまい、一抹の不安も感じられたが、武豊騎手は、
「昨年の秋から調教では走らなくなっているし、 菊花賞よりも成長が伺えた。まずまずの動きだった。」
と全く動じなかった。
実際に今回のレースを見ても、3歳時のディープであれば多少馬を怖がるしぐさを見せたりして道中掛かりっ放しの状態が続いていたのに、それが全く感じられなかった。
また、道中の動きも全く余裕といった表情だったし、武豊がいつどこでゴーサインを出すかだけを感じ取っていた走りであった。
今回の天皇賞は本当に完璧な走り。確かにスタートでまたもや出遅れたのは頂けないが、それで慌てなくなっていることで馬の大きな成長が伺える。
ということは、ディープインパクトという馬は気性面については、通常の4歳馬よりも半年ほど「遅れている」ような印象。つまり、年齢こそ4歳だが、現段階ではまだ4歳馬に「なりきっていない」様相が伺える。
となれば、この馬が今後順調に仕上がっていけば、今秋には馬格に加え、気性も最高潮に達するものと思われる。
もしそう考えるならば、凱旋門賞での戦いは面白くなる。もちろん、凱旋門賞というレースはスタートからゴールまで「完璧」にレースを進めないと勝てない世界最高峰レベルのレースであるが、同時に、馬の成長が頂点に達した馬が大体勝っている。
今後はどのようなローテーションを組まれるのかは現時点ではわからないが、この天皇賞を勝ったことにより、陣営も究極の目標は凱旋門賞ということを確証付けたのではないか。
となれば、凱旋門賞を「確実に勝つ」ためには、できれば次走は宝塚記念ではなく、キングジョージのほうを目指してもらいたいもの。
キングジョージのような大レースに対してこのようなことを言うのは何だが、ディープインパクトにとって、キングジョージはあくまでも「チャレンジ」のレースでしかない。だから、「負けたとしても」、レース内容がよければそれで構わないのである。
逆に言えば、キングジョージがダメでも、凱旋門賞があるというような考え方もできてこよう。それが「大事」なのではないかと考える。
これまでエルコンドルパサー以外の日本調教馬が凱旋門賞で全くいいところなく敗れ去ってしまったわけは、凱旋門賞を勝つためにはどうすればいいのか、という考え方が欠けていたからだと考える。
しかも世界最高峰のレースにもかかわらず、「世界へチャレンジ」という話ばかり繰り返してきた。他の出走馬が勝つために出走してきているというのに、「チャレンジ」という意識では結果が伴うわけがない。
凱旋門賞に出るということは当然至極、
「勝つためのレース」
でしかないのである。
そう考えると、ディープインパクトにとって、凱旋門賞は「勝つためのレース」ではないのか。チャレンジのレースではない。そのあたりをしっかりと陣営が考えているならば、本当に「夢が実現する」ような気がしてならない。リンカーンも走破タイムからいえばマヤノトップガンのJRAレコードを0.4秒上回っており、この馬の現時点での最高のパフォーマンスを見せてくれた。
ただ、ディープが捲っていったときに反応できなかったことが悔やまれるか。もし反応できていれば勝つのは無理にしてもそこそこいい勝負ができていたと思う。
今回は相手が強すぎて勝てなかったが、ハーツクライは不在だし、ディープもこのあと海外遠征となれば国内最強は今のところ、リンカーンであろう。待望のG1制覇も目前に待ち構えている気がする。