まさかこんなことになるとは・・・
久々に当日入場券発売がなく、全て前売りという形で入場制限が敷かれた中で開催された第50回有馬記念。だが、ほとんど当日来場したファンはあのハイセイコーが日本ダービーで負けたとき以来の「脱力感」を覚えたんではないだろうか。
スタートは9・タップダンスシチー、16・オースミハルカが揃う形でハナに立とうとしたが、このレースで引退、そして最終レース終了後に引退式を行なうタップダンスが最後の主導権を握って先頭。1周ホーム通過時点では他を若干離し気味にして先頭。さて、6・ディープインパクトは?
スタートは最後方からという競馬。しかし1周目スタンド前では後方から3~4頭目ぐらいに漸進。悪くない位置に来ているとは思ったが、「案の定」、馬は掛かり気味であった。
10・ハーツクライがいつもとは違う、3番手あたりと前々の競馬。それを交わして今回、五十嵐冬樹に鞍上が戻った4・コスモバルクがハーツを交わして3番手。
14・リンカーンがほぼ中団。その後ろに15・デルタブルースと3・ゼンノロブロイが並んでいく。
勝負どころの3~4角。前の集団が固まった状態になったが、ディープインパクトが外からじわっとといった感じで上昇していった。申し分のない手ごたえのようにも取れ、史上初の無敗の4冠馬はこれでもらった!とさえ感じられたが・・・
直線に入ってコスモバルクが一旦は先頭。しかし満を持してハーツクライが先頭に立つ。そして外からディープインパクトがやってきたが、はっきりいって、「いつもの」ディープインパクトの伸び脚とはいいがたい。ハーツクライは前々勝負策がうまくいって念願のG1制覇。ディープは半馬身差及ばず初黒星。3着リンカーン、4着は大健闘のコスモバルクが入った。
これまで、ジリ脚っぽいところが災いして勝てそうで勝ちきれない競馬が続いていたハーツクライ。最後の伸び脚は鋭い部分があっても終わってみれば2着が精一杯という典型的な善戦マンタイプの馬であったが、今回でそれを返上した。
ジャパンカップでは欧州の名牝・ウイジャボードを一瞬怯ませるほどの戦慄を覚えた強烈な追い込みを演じ、勝ったアルカセットとの長い写真判定に持ち込んだ。普通に考えれば今回の最有力候補に間違いはなかったが、何せディープインパクトという存在が大きく、しかもこの馬は前述したように「ジリ脚」っぽいところがあるんで、ファンの多くも過大なる評価ができなかったのでは?
しかし、今回は完全に作戦勝ちだった。ディープインパクトという存在がある以上、鞍上のクリストフ・ルメールは前々での競馬といういつもとは全く違う競馬に転じた。
さらに前にいたコスモバルクの気合いも良かったんで、バルクマークに出て行けたことも勝因。そして中山は直線が短い。ディープインパクトが来る前に先に競馬を行なうというまさに理想的な競馬。日本ダービー、宝塚記念、ジャパンカップと3回もG1で惜敗した苦い経験を一気にここで晴らした感じだ。
鞍上のルメールも過去に日本のG1では2着が5回となかなか勝ちきれなかったが、ついに念願のG1制覇。そして、この勝利は後世にも語り継がれる「歴史的一勝」であるのは間違いなかろう。そしてこのような競馬ができるんであれば、中長距離戦線では今後も主役を演じれることだろう。
リンカーンも早めに先頭集団に加わり、直線半ばまではいい勝負を演じるも3着どまり。こちらのほうは善戦マンどまりのまま。一方、コスモバルクの今回の走りは見事。結果は4着だったものの、鞍上が五十嵐冬樹に戻ったのが良かったのかもしれない。いつもなら引っかかるところがあるのに今回はそれがなく、一時は先頭に立って満場のファンを大いに沸かせた。
ゼンノロブロイは向正面でデザーモの手が動き苦しい競馬。8着に終わる。やはり馬のピークは昨年までだったのかもしれない。デルタブルースも全くいいところなく11着と惨敗。タップダンスシチーも最後までよく逃げたが、やはり往年の走りではなかった。
さて、なぜ負けたのか?ディープインパクト。
まず、馬体重が440キロとデビュー以来最低体重になったことも原因として挙げられるだろう。また、陣営は「順調にきた」と盛んに言っていた調教でも、雪の影響から水曜追いが満足にできず、金曜にもう一本追い切りをせざるを得なくなったことも影響した形となった。そして一番の問題が輸送。
当初は雪の影響による大渋滞を予想して、23日午後8時に栗東を発つ予定が、名神高速道路が栗東インター地点で70キロ渋滞という道路情報を察知して24日午前5時前に変更。当日正午過ぎくらいに到着したようだが、これまでになかった環境の変化が馬の調子を微妙に狂わせたのかもしれない。
http://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2005/12/25/01.html
そしてそれ以前の問題として、これまであまりにも「常識外れ」の競馬をやりすぎたことも挙げられよう。とりわけ3冠馬達成となった菊花賞は歴代の名馬であっても道中引っかかりながら最後勝ったなんてことはなかったからだ。ものすごい競馬をこれまでやりすぎたことに加え、これまでの環境とは違った変化も影響。確かに今回はいつもにはない理想的な競馬を進めたとは思うが、ディープインパクトが持つ爆発的な瞬発力は全く感じられず、普通の名馬というような印象でしかなかった。
これで終わるような馬ではないだろうが、今後は前々勝負といった競馬を覚えることが必要になってこよう。古馬になればズブさが出てくるし、これまでの常識外れのような形の競馬では今後勝つのは厳しいんではなかろうか。
とりあえずはしばらく鋭気を養い、来年、新たな気持ちを持って戦いに挑んでもらいたいものだ。
追伸
ハイセイコーがダービーで負けた原因は序盤のオーバーペースだったといわれている。その要因を作ったのがボージェストという馬で、当時騎手だった池江泰郎調教師が騎乗。しかしながら、今度は自分の管理馬でファン・マスコミを落胆の底に突き落とすとは思っても見なかったことだろう。
確かに他の陣営にとって、ディープインパクトを「特別扱い」している現状を、面白くないと感じた人も少なくないと思います。私も連日の報道にはうんざりした事がありました・・・・。
確かにディープインパクトは強い馬に変わりは無い事は確かですが、少なからず「運」にも恵まれた面も否定できないように思います。
それにしてもハーツクライが、こんな前で競馬ができるなんて・・・・。昨年の不振が嘘みたいに感じます。外国人騎手(ルメール)の騎乗の素晴らしさも感じました。そういえば、2002年以降、日本人騎手が有馬記念を勝っていませんね・・・・。
場内の雰囲気は、多分そんな様な感じというか、皆が皆何ともいえない表情をしていましたよ。ただ、私の周りではハーツクライを買ってたファンが多くいたみたいで、結構大はしゃぎしてましたね(苦笑)。
確かにそうでしたね。とりわけ公平な立場であるべきJRAがまるで「商魂丸出し」といった感じでディープインパクトに肩入れしすぎている面が前々から気になりました。
また、ディープインパクトについていえば、負けたからこんなことがいえるのかもしれませんが、これまでの7戦があまりにも劇的な勝ち方でありすぎ、こんな勝利がそう何回も続くわけがないと思っていました。
ま、来年からは「普通の名馬」に戻るんで、そうなれば陣営も肩の荷が下りて普段どおりの競馬もできるんではないでしょうか。
ジョカトーレ・Fさん
お疲れ様でした。そして残念でした、というべきなんでしょうか?
私もサイレンススズカの天皇賞のときは愕然としましたが、やはり競馬に絶対というものはなく、それを鵜呑みにしすぎると落胆しきりでしかないわけで、今回は多くのファンがそうなってしまいましたね。
でも、勝負ごとというのはこういったことは何度もあるわけですから、何年か経てば「いい思い出」になるのかもしれません。