2日の日経新聞夕刊に野元賢一氏が、
「ジャパンカップに出走する外国馬に対してファンの目が肥えてきている。招待馬の中では格落ちであるアルカセットが3番人気であることがそれを裏付ける」
というように述べていた。
確かに「肥えてきた」部分もあるんだろう。でも、「ヤネ」にその期待をかけていたからこそだろう。その「ヤネ」とは、ランフランコ・デットーリのこと。
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デットーリといえば欧州競馬界を席巻する、「ゴドルフィン軍団」の主戦騎手として名高いが、まさにプレーは「天才はだし」そのもの。
日本の騎手なら「怖がって」突っ込めないラチ沿い一杯を通らせてあっという間に勝たせてしまったり、はたまた「デットーリ・ジャンプ」などのオーバーアクションでも有名だろう。
デットーリは世界でも類をみない「魅せる」ことができる騎手であると同時に、彼が乗ると突然変異を生じたかのように勝ってしまうケースは少なくあるまい。
2002年のジャパンカップダート。NHKマイルカップ勝利のあと極度のスランプに陥り、やっとこさG3重賞を勝つのが精一杯だったイーグルカフェに騎乗したデットーリは終始最内を通らせてアドマイヤドン、ゴールドアリュールという当時の3歳2強の叩き合いを尻目にうまく内を掬って快勝した。
ちなみにデットーリの騎乗はこのとき限りであったが、イーグルカフェはその後1勝も挙げていない。
翌日のジャパンカップ。デットーリは当時イタリアでは最強だが、欧州全体としてはまだ「二流」の域を出ていなかったファルブラヴに騎乗。するとアメリカのサラファンとの激しい叩き合いを「ハナ差」制して連日のG1勝利を果たした。そしてファルブラヴは翌年英国へ主戦場を移し、マイル・ミドルの「世界王者」に君臨することになる。
なお、デットーリはジャパンカップを3勝しているが、いずれも「ハナ差」勝ち。逆に言えば、「ハナ差」で負けたことは一度もないのである。
この差が実は大きいという他ないような気もするんだが。
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日本の、とりわけJRAの騎手全般に言えることなんだが、あまりにも大事に乗りすぎるきらいがしてならない。
確かに「先生」の指示通りに事を運ぶことは大事なんだろうが、馬をいい意味で「騙す」テクニックが欠けているような気がしてならない。
その点においては、地方競馬の騎手のほうが一枚「長けている」といっても良かろうか。
地方の騎手の騎乗ぶりについてはあまりにもムチを入れすぎるとか、馬を引っ張りすぎるという批判も少なからずあるようだが、彼らとてむやみやたらにムチを放ったり、はたまた引っ張っているということなどしていないだろう。
安藤勝己がJRAの騎手になりたてのころ、笠松当時の豪快なフォームが消えてしまい、明らかに「よそ行き」の騎乗ぶりだったことに懸念を覚えたものだが、兄・光彰がやはりそのことに気づいて、
「フォームを元に戻したらどうか」
といってその通りしたところ昨年は何と日本ダービーを含めJRA・地方でG1を7勝も挙げた。馬の能力を最大限発揮させるためには、馬をその気にさせないとムリなのは当然の話。そして「言うことを聞かない」と思ったときにいい意味での「手心」を加えるわけである。
欧州の平地シーズンが終わって外国騎手の短期免許取得が相次ぐや、重賞競走は外国人騎手のワンツーラッシュが続いている。武豊ら数人を除くと今やJRAでは、外国人か、はたまた地方出身か、はたまた地方所属騎手が幅を利かせている。また彼らは調教師連からの信頼も厚い。
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藤沢和雄調教師はとかく外国人騎手を重用する。昨年まではペリエ、今年はデザーモと言った具合に自身の管理する有力馬をことごとく騎乗させる。また、彼らは勝てないまでもいい着を必ず拾ってくるので、乗り替わりというケースもほとんどない。
福永祐一が今年アメリカG1などG1勝ちを量産しているといっても調教師の評価はいまだ概ね高くない。やはり、少々まだ「不安」な部分を抱えているからだろう。「負けたときに」納得できる負けなのか?はたまたそうでないとでは大きく違ってくる。
JRA「生え抜き」騎手で「負けても納得できる」なんていう評価が下されるのはせいぜい武豊らを含めて数人。それならば、外国人騎手かはたまた地方の騎手のほうがまだ「納得できる」ということなんだろう。
そういった意味において、ファンはそうした事情をちゃんと把握しているということ。分かってないのは案外、日ごろ取材する立場であるマスコミ連なのかもしれない。
そういえば私だって例えば福永と大井の内田博幸を比較した場合、どちらが信頼を置けるかといえば、
「やはり内田」
だって中央のレースでも思ってしまうもんな。