代品民さんのコメントにこんなくだりがあった。
BODさんは企業の所得が増えても個人の所得は増えなかった。だから、企業に肩入れするのは無意味という考えなのでしょうが、それは企業と個人の所得分配率が問題なのであり、企業経営が傾きリストラされれば、失業者が増えるだけです。
失業保険だって、満足な金額が貰える訳ではないです。その間に職探しをしなくてはいけませんが、すぐに見つかる訳ではない。
再就職の場合、ヘッドハンティングを除けば大体、給与は下がるケースが多いそうです。そもそも中高年になれば募集の段階でアウトというケースもあり再就職が非常に困難なケースもあるのではないでしょうか?
いざなぎ景気を超える景気上昇局面と言われながらも、個人所得が減ったという例については、日本では恐らくこれまでなかった。
バブル崩壊時代、労働分配率が75%という高率となり、そのため、当時は「中高年切り」というものが盛んに行われた。結果、労働分配率は、景気上昇局面前には約10%ほど下げることができた。
これについてはあまり異論を唱える声はなかった。ま、中高年切りという姿勢そのものがけしからん!という声はあったが、逆に言えば、その頃に大鉈を振るっていなければ、バブル崩壊経済が終焉したところで、企業の体力は失われたままの状況であったことだろう。
ところで、輸出主導型大企業が中国バブルの恩恵を受ける形で業績を急回復させていったが、一方で、労働者の賃金は日本よりも中国を中心としたアジア地域のほうが低く、現地生産したほうが製造コストが安上がりとなるため、国内における製造業の空洞化が懸念されるようになった。
それを食い止めるべく施されたのが製造業における派遣労働の解禁。
私も一時期、製造現場にいたが、前々から、外国人の派遣労働については暗黙の了解という形で各企業は受け入れてきた。それが、日本人についても解禁になったことで、製造業は、単純労働である現場作業については、製造の最前線については派遣労働者を中心に行う形を取った。
つまり、日本の景気回復局面といえば、断然製造業によるところが大きかったため、派遣労働者の働きが大きく貢献したといってもいい。
その観点だけを見れば、製造業の派遣解禁は成功だったかもしれない。問題なのは、正社員でもできる仕事を派遣にやらせているだけ、という企業経営側の姿勢に問題があった。結果、昨年突然起こった(ように見える)大不況下では、派遣労働者は続々と契約打ち切りの憂き目にあった。
それはつまり、企業経営側はその間、次につながる付加価値の高い業種を生み出さねばならなかったのに、目先の仕事に追われるあまり、そうしたところに着手できなかった。そうした仕事を寸時でも怠ると、下の人間に瞬く間に影響を及ぼす。
しかも、こうした姿勢では仕事は増えていかない。経営者の仕事といえば、仕事を作り生み出すことが最も求められるわけで、とりわけ、大企業は中小とは違って人材も豊富なわけだから、それなりの余裕はあったはずなのだ。
となれば、経営者は一体どんな仕事を行っていたのか?という疑問に帰着する。
景気回復局面前と比較して、上場企業経営者の報酬は倍に膨らんだという。確かに業績が上向いたため、結果責任を求められる経営者にはそれなりの評価が与えられた結果、といえるが、逆に労働分配率は景気上昇局面でありながら下がってしまった。これでは、労働者はあほらしくて、何のために毎日残業に次ぐ残業を行ってきたのか分からない、というもの。
昨日深夜、朝まで生テレビで、環境問題の話が論点になっていたが、いわゆる、経営者団体の関係者は一人として出演していなかったことを、司会の田原総一朗氏が最後に激怒していたが、逆に言えば、国際競争力が求められている大企業であるならば、せっかくこうした機会を設けられているのであれば、積極的に参加すべきであろう。恐らく、欧米の経営者団体であれば、間違っているとしても、積極的に持論を展開しに行っていたはずだ。
逆に言えば、環境分野は格好のビジネスチャンス。しかしながら、日本の大企業経営者は、国が着手しきれていないものには手を出せない、という姿勢なのだろう。
これで本当の意味で、国際競争力がつくのだろうか?
そういえば民主党は、できるかどうか分からないが、3年後に企業団体献金の禁止を打ち出している。となれば、仮に民主党政権が誕生すれば、経団連を中心とした経営者団体と距離を置くことになる。反面、民主党は労働組合との関係が深いが、逆のアプローチから考えた場合、かつての社会党系労働組合のような形にならなければ、むしろ労働組合主導の経済体制ができるのは面白い気がする。
というか、これまで日本の労働組合はあまりにも働かなさすぎた。しかも、御用組合、労働貴族化し、経営者側の犬に成り下がっていた、という見方もできる。労使関係に緊張感がないから、若手社員の労働組合離れも進んでいった。
一方で、派遣切りが続く情勢が続く中、小規模労働組合の結成が少なからず誕生し、加えて派遣切りは違法といった判例も少なからず出ている。
問題は、正社員労働者組合団体。ここが今、はっきりいって御用化しているため、経営者側のいいなりに成り下がってしまっていること。したがって、長年来、緊張感が全く漂わない春闘が続いている。
来年からはそうならないようになってもらいたいもの。ま、政権交代が実現すれば、多少は変わるかもしれないな。