To You ・A Tribute To Mel Lewis / The Mel Lewis Jazz Orchestra
先日、まつきり三郎のライブで久々にサド・ジョーンズのTo Youを聴いて、思わず他のアルバムを紹介したが、大事な一枚を忘れていた。
サドメルオーケストラが、リーダーの一人サド・ジョーンズがバンドを去って残されたメルルイスが、色々苦労はあったがバンドが生まれ育ったビレッジバンガードでの演奏を続け、
今のバンガードジャズオーケストラに引き継いだのはご承知の通り。メルルイスの踏ん張り、そしてそれを支えたメンバー達の努力があければ、今のVJOは無かったということだ。
サド・ジョーンズが抜けたといという意味は、単にリーダーが抜けたという以上に影響が大きかった。というのも、サドメル時代はレパートリーの大半をサド・ジョーンズのアレンジで構成していた。残されたメルルイスはしばらくサド・ジョーンズの曲を封印した時期もある。当然代わりの曲が必要だが、そこでの救世主は、昔のメンバーでありメルルイスとも昔からの仲間であったボブブルックマイヤーだった。結果的にボブブルックマイヤーのアレンジャーとしての活躍の場ができたという事にもなるが。さらに、メンバーの中から新たなアレンジも多く登場した。中でもピアノのジム・マクニーリーの存在が大きく、サドメルの後継バンドとしてメルルイスオーケストラの位置づけが確固たるものになった。
そのメルルイスが、この世を去ったのが1990年2月。がんと闘いながら死ぬ直前までプレーをしていたようが、亡くなった数日後にはビレッジバンガードの24周年の記念ライブも予定されていたという。サドメルを引き継いで12年が経っていた。メルルイスオーケストラとして最後のアルバムは、1988年の本拠地ビレッジバンガードでのライブ“Soft Light Hot Music”だと思う。
メルルイスが逝ってしまった後、バンドの存続に尽力したのは、ジム・マクニーリーであり、今のリーダー格であるサムモスカ、そしてディックオーツ達である。その残されたメンバー達が、亡くなったメルルイスに追悼の意を込めて作ったアルバムが、このアルバムである。
タイトルは”To You”。
かっての盟友サド・ジョーンズが作編曲したこの曲が、手向けの曲として最後に捧げられている。という経緯の中で演奏されているこのTo Youはメンバー皆の気持ちが籠っているように思う。
サドのアレンジはアップテンポの曲に関しては、サド独自のイントネーションを上手く再現するにはそれなりのテクニックが求められる。一方で、このようなバラード曲は美しいハーモニーと同時に、プレーヤーの情感が籠った演奏が不可欠である。先日、堀恵二のメローサキソフォンアンサンブルで「難しい譜面を間違いなく吹くだけであれば音大の学生なら誰でもできる。その譜面をどう解釈して吹くのかがプロなんだ」といっていたが、まさにそのようなことなのだろう。
“To You”以外の他の曲も、このアルバムでピアノを担当しているケニーワーナーが3曲提供しているが、その内一曲はこのオーケストラに関係が深いボブブルックマイヤーそのものをタイトルにした曲、他にもマクニーリーやテッドナッシュのオリジナル、スタンダードのナイチンゲールはメンバーのエドノイマイスターのアレンジ。そしてブルックマイヤーの作品でサドメルのファーストアルバムにも収められているABCブルースも取り上げている。
このアルバムを本当はアルバム2、3枚にしたかったそうだが、予算の都合でこの一枚に。サドメル時代からの歴史を語るには確かに物足りないが、新旧の作品を持ち寄り皆でメルを悼んで演奏したアルバムとして意味ある一枚。ちょうどメルルイスオーケストラとバンガードジャズオーケストラの狭間で節目となる一枚のアルバムだ。
主の居なくなったバンドというものはなんとなく寂しい演奏になりがちであるが、これはそのようなことはない。立派な後継者がたくさん現れてメルルイスも安心してあの世に旅立てただろう。
早いものでそれから24年経ち、後を継いだバンガードジャズオーケストラのこれらの遺産を大事に引き継きながら元気に活動しているようである。過去の名声と遺産だけで生き残っているオーケストラはいくつもあるが、メンバーやリーダーが代替わりをしてもコンセプトを引き継ぎ進化し続けるオーケストラはめったにない。
「月曜日の夜のビレッジバンガードに皆で集まる」という基本コンセプトはいつまでも続いて欲しいものだ。
1. Paper Spoons Jim McNeely 9:03
2. 5 1/2 Weeks Ted Nash 7:07
3. A Nightingale Sang in Berkeley Squar Eric Maschwitz / Manning Sherwin 8:08
4. Nocturne Kenny Werner 8:21
5. ABC Blues Bob Brookmeyer 14:01
6. Bob Brookmeyer Kenny Werner 10:50
7. To You Thad Jones 4:51
The Mel Lewis Jazz Orchestra
Earl Gardner (tp,flh)
Joe Mosello (tp,flh)
Jim Powell (tp.flh)
Glen Drewes (tp,flh)
John Mosca (tb)
Ed Neumeister (tb)
Earl McIntyre (btb)
Douglas Purviance (btb)
Dick Oatts (as,ss,fl)
Ted Nash (as,ss,fl)
Ralph Lalama (ts,cl)
Joe Lovano (ts.ss.cl)
Gary Smulyan (bs)
Stephanie Fauber (french horn)
Kenny Werner (p)
Dennis Irwin (b)
Dennis Mackrel (ds)
Produced by John Snyder
Engineer : Joe Lopes & Jay Newland
Recorded on September 10, 11 &12,1990 at BGM Studios, New York
先日、まつきり三郎のライブで久々にサド・ジョーンズのTo Youを聴いて、思わず他のアルバムを紹介したが、大事な一枚を忘れていた。
サドメルオーケストラが、リーダーの一人サド・ジョーンズがバンドを去って残されたメルルイスが、色々苦労はあったがバンドが生まれ育ったビレッジバンガードでの演奏を続け、
今のバンガードジャズオーケストラに引き継いだのはご承知の通り。メルルイスの踏ん張り、そしてそれを支えたメンバー達の努力があければ、今のVJOは無かったということだ。
サド・ジョーンズが抜けたといという意味は、単にリーダーが抜けたという以上に影響が大きかった。というのも、サドメル時代はレパートリーの大半をサド・ジョーンズのアレンジで構成していた。残されたメルルイスはしばらくサド・ジョーンズの曲を封印した時期もある。当然代わりの曲が必要だが、そこでの救世主は、昔のメンバーでありメルルイスとも昔からの仲間であったボブブルックマイヤーだった。結果的にボブブルックマイヤーのアレンジャーとしての活躍の場ができたという事にもなるが。さらに、メンバーの中から新たなアレンジも多く登場した。中でもピアノのジム・マクニーリーの存在が大きく、サドメルの後継バンドとしてメルルイスオーケストラの位置づけが確固たるものになった。
そのメルルイスが、この世を去ったのが1990年2月。がんと闘いながら死ぬ直前までプレーをしていたようが、亡くなった数日後にはビレッジバンガードの24周年の記念ライブも予定されていたという。サドメルを引き継いで12年が経っていた。メルルイスオーケストラとして最後のアルバムは、1988年の本拠地ビレッジバンガードでのライブ“Soft Light Hot Music”だと思う。
メルルイスが逝ってしまった後、バンドの存続に尽力したのは、ジム・マクニーリーであり、今のリーダー格であるサムモスカ、そしてディックオーツ達である。その残されたメンバー達が、亡くなったメルルイスに追悼の意を込めて作ったアルバムが、このアルバムである。
タイトルは”To You”。
かっての盟友サド・ジョーンズが作編曲したこの曲が、手向けの曲として最後に捧げられている。という経緯の中で演奏されているこのTo Youはメンバー皆の気持ちが籠っているように思う。
サドのアレンジはアップテンポの曲に関しては、サド独自のイントネーションを上手く再現するにはそれなりのテクニックが求められる。一方で、このようなバラード曲は美しいハーモニーと同時に、プレーヤーの情感が籠った演奏が不可欠である。先日、堀恵二のメローサキソフォンアンサンブルで「難しい譜面を間違いなく吹くだけであれば音大の学生なら誰でもできる。その譜面をどう解釈して吹くのかがプロなんだ」といっていたが、まさにそのようなことなのだろう。
“To You”以外の他の曲も、このアルバムでピアノを担当しているケニーワーナーが3曲提供しているが、その内一曲はこのオーケストラに関係が深いボブブルックマイヤーそのものをタイトルにした曲、他にもマクニーリーやテッドナッシュのオリジナル、スタンダードのナイチンゲールはメンバーのエドノイマイスターのアレンジ。そしてブルックマイヤーの作品でサドメルのファーストアルバムにも収められているABCブルースも取り上げている。
このアルバムを本当はアルバム2、3枚にしたかったそうだが、予算の都合でこの一枚に。サドメル時代からの歴史を語るには確かに物足りないが、新旧の作品を持ち寄り皆でメルを悼んで演奏したアルバムとして意味ある一枚。ちょうどメルルイスオーケストラとバンガードジャズオーケストラの狭間で節目となる一枚のアルバムだ。
主の居なくなったバンドというものはなんとなく寂しい演奏になりがちであるが、これはそのようなことはない。立派な後継者がたくさん現れてメルルイスも安心してあの世に旅立てただろう。
早いものでそれから24年経ち、後を継いだバンガードジャズオーケストラのこれらの遺産を大事に引き継きながら元気に活動しているようである。過去の名声と遺産だけで生き残っているオーケストラはいくつもあるが、メンバーやリーダーが代替わりをしてもコンセプトを引き継ぎ進化し続けるオーケストラはめったにない。
「月曜日の夜のビレッジバンガードに皆で集まる」という基本コンセプトはいつまでも続いて欲しいものだ。
1. Paper Spoons Jim McNeely 9:03
2. 5 1/2 Weeks Ted Nash 7:07
3. A Nightingale Sang in Berkeley Squar Eric Maschwitz / Manning Sherwin 8:08
4. Nocturne Kenny Werner 8:21
5. ABC Blues Bob Brookmeyer 14:01
6. Bob Brookmeyer Kenny Werner 10:50
7. To You Thad Jones 4:51
The Mel Lewis Jazz Orchestra
Earl Gardner (tp,flh)
Joe Mosello (tp,flh)
Jim Powell (tp.flh)
Glen Drewes (tp,flh)
John Mosca (tb)
Ed Neumeister (tb)
Earl McIntyre (btb)
Douglas Purviance (btb)
Dick Oatts (as,ss,fl)
Ted Nash (as,ss,fl)
Ralph Lalama (ts,cl)
Joe Lovano (ts.ss.cl)
Gary Smulyan (bs)
Stephanie Fauber (french horn)
Kenny Werner (p)
Dennis Irwin (b)
Dennis Mackrel (ds)
Produced by John Snyder
Engineer : Joe Lopes & Jay Newland
Recorded on September 10, 11 &12,1990 at BGM Studios, New York
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