Concepts / The Mark Levine Quintet
人生長く生きていると、日々の仕事をがらりと変えるには抵抗があるものの、少しは変化を持たせたくなる。音楽をやっている人は「仕事は単にお金のためだけでもない」と、余計にその思いに駆られることはあるだろう。特に楽器をやっている人にとっては、普段演奏している楽器とは別の楽器をやってみたいという衝動にも。器用なミュージシャの中には色々チャレンジして結果的に何でもできるようになる人も。ジェイムスモリソンように一人ビッグバンドをやるまで極めるのは極端にしても。
ボブブルックマイヤーやジェリーマリガンのように、管楽器のプレーヤーが時にピアノを弾く事はそれほど珍しいことではない。デュークピアソンのように管楽器からピアノに転向し作編曲、プロデュースへ守備範囲を広げたプレーヤーもいる。しかし、反対にピアノから管楽器に転じたミュージシャンというのはあまり聞いたことがない。それも、学生時代ならまだしも、プロでかなり実績を積んでからいきなりというのは。
ウディーショーやブルーミッチェルなどのメインストリームのグループでピアノを弾き、カルジェイダーのグループに加わってからはラテンタッチのピアノでも活躍していたピアニストにマークレビンというピアニストがいる。カルジェイダーの最後のグループに加わって、Conocrdに何枚もアルバムを残していた。
このレビンは昔トロンボーンを吹いていた事があり、ピアノを本業にしてからも常々「本当はトロンボーンが一番好きな楽器だ」と思い続けていた。しかし、実際の生活のためにはピアノの方が稼ぎやすいという現実があり、好きでもない女性と結婚してしまったような、ある種妥協した音楽生活をおくっていた。このような状況になると、果たせぬ夢に対する想いは募るばかり。
1982年にジェイダーが亡くなったことで、レギュラーのバンドが突然解散したのも一つのきっかけであろう。突然ピアノを捨ててトロンボーンの練習を再び一から始めることにした。
しばらくして、このトロンボーンの演奏を生かすべく、自分のバンドも結成する。若手中心のメンバーを集め、演奏スタイルも自分のイメージどおりに組み立て、曲やアレンジも自ら新たに起こした。イメージはブルーノートでのフレディーハバード、ウェインショーター、ハービーハンコックなどのグループのイメージだったそうだ。ちょうど60年代のハードバップ、ファンキーからモーダルなスタイルに変った頃のイメージだ。
そして、そのグループのアルバムを作ることに一役買ったのはカールジェファーソン。ジェファーソンは声を掛けたのか、レビンが頼み込んだのかは分からない。少なくとも演奏内容は必ずしもジェファーソン好みという訳ではなかった。しかし、この頃はアルバム自体のプロデュースはミュージシャンに任せてしまい、自分は中身にはタッチしないということもよく行うようになっていた。それ故、コンコルドカラーとは少し違ったアルバムも結構誕生してる。反対に自らプロデュースするアルバムには更にこだわりを持つようになったので、カタログの幅は広がった。
という経緯でこのアルバムは誕生した。タイトルはConcepts。まさにマークレビンが長年イメージしていた内容なのだろう。確かに針を下すと一曲目からコンコルドのいつものアルバムとは雰囲気が違う。トロンボーンとテナーの組み合わせのフロントはただでさえ重厚なサウンドになるが、コンコルドお得意のスイング感やウェストコースト風の軽快感もない。リズム隊を含めて全体がレビンの狙い通りのモーダルな演奏で始まる。
オリジナル曲が続くが、B面に入りスカイラークやジターバグワルツなどのお馴染みの曲も登場する。しかし曲想は変わらない。これが、レビンのやりたいことだというのは良く分かるが。
カルジェイダーのバックで軽快にピアノを弾いていたレビンと同一人物の演奏は思えない。別に悪くはないし、トロンボーンの演奏もけっして「俄か仕立て」といった感じは全く感じさせず堂に入ったもの。しかし、それで?といった感じは否めない。果たして何の予備知識を持たないで聴いたらどんな印象を受けただろう。
このグループは、しばらく活動したがすぐに解散してしまう。レビンもその後はピアノの演奏中心に戻ったようで、このトロンボーンの演奏は一時の浮気のようなものであった。浮気は目立たないように、時と場合を弁えてやっているときは楽しいが、あまり思い詰めて本気モードになるとかえって辛くなるものだ。その後はマークマーフィーのアルバムに参加する時はトロンボーンを吹いていたようだが、最初からその程度がよかったのだろう。
1. Keeper of the Flame Mark Levin 5:43
2. After You Mark Levin 5:30
3. Greased Mark Levin 4:28
4. Ask Me Now Theronious Monk 6:38
5. Black Masque Mark Levin 4:36
6. Skylark Horgy Carmichel-Johnny Mercer 6:19
7. Jitterbug Waltz Fats Waller 8:08
8. Up Jumped Spring Freddie Hubbard 5:34
Mark Levin (vtb)
Chuck Clark (ts)
John Halle (p)
Jeff Carney (b)
Erik Von Buchau (ds)
Produced by Marl Levin
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, June 1983
Engineer : Phil Edwards
Originally released on Concord CJ-234
人生長く生きていると、日々の仕事をがらりと変えるには抵抗があるものの、少しは変化を持たせたくなる。音楽をやっている人は「仕事は単にお金のためだけでもない」と、余計にその思いに駆られることはあるだろう。特に楽器をやっている人にとっては、普段演奏している楽器とは別の楽器をやってみたいという衝動にも。器用なミュージシャの中には色々チャレンジして結果的に何でもできるようになる人も。ジェイムスモリソンように一人ビッグバンドをやるまで極めるのは極端にしても。
ボブブルックマイヤーやジェリーマリガンのように、管楽器のプレーヤーが時にピアノを弾く事はそれほど珍しいことではない。デュークピアソンのように管楽器からピアノに転向し作編曲、プロデュースへ守備範囲を広げたプレーヤーもいる。しかし、反対にピアノから管楽器に転じたミュージシャンというのはあまり聞いたことがない。それも、学生時代ならまだしも、プロでかなり実績を積んでからいきなりというのは。
ウディーショーやブルーミッチェルなどのメインストリームのグループでピアノを弾き、カルジェイダーのグループに加わってからはラテンタッチのピアノでも活躍していたピアニストにマークレビンというピアニストがいる。カルジェイダーの最後のグループに加わって、Conocrdに何枚もアルバムを残していた。
このレビンは昔トロンボーンを吹いていた事があり、ピアノを本業にしてからも常々「本当はトロンボーンが一番好きな楽器だ」と思い続けていた。しかし、実際の生活のためにはピアノの方が稼ぎやすいという現実があり、好きでもない女性と結婚してしまったような、ある種妥協した音楽生活をおくっていた。このような状況になると、果たせぬ夢に対する想いは募るばかり。
1982年にジェイダーが亡くなったことで、レギュラーのバンドが突然解散したのも一つのきっかけであろう。突然ピアノを捨ててトロンボーンの練習を再び一から始めることにした。
しばらくして、このトロンボーンの演奏を生かすべく、自分のバンドも結成する。若手中心のメンバーを集め、演奏スタイルも自分のイメージどおりに組み立て、曲やアレンジも自ら新たに起こした。イメージはブルーノートでのフレディーハバード、ウェインショーター、ハービーハンコックなどのグループのイメージだったそうだ。ちょうど60年代のハードバップ、ファンキーからモーダルなスタイルに変った頃のイメージだ。
そして、そのグループのアルバムを作ることに一役買ったのはカールジェファーソン。ジェファーソンは声を掛けたのか、レビンが頼み込んだのかは分からない。少なくとも演奏内容は必ずしもジェファーソン好みという訳ではなかった。しかし、この頃はアルバム自体のプロデュースはミュージシャンに任せてしまい、自分は中身にはタッチしないということもよく行うようになっていた。それ故、コンコルドカラーとは少し違ったアルバムも結構誕生してる。反対に自らプロデュースするアルバムには更にこだわりを持つようになったので、カタログの幅は広がった。
という経緯でこのアルバムは誕生した。タイトルはConcepts。まさにマークレビンが長年イメージしていた内容なのだろう。確かに針を下すと一曲目からコンコルドのいつものアルバムとは雰囲気が違う。トロンボーンとテナーの組み合わせのフロントはただでさえ重厚なサウンドになるが、コンコルドお得意のスイング感やウェストコースト風の軽快感もない。リズム隊を含めて全体がレビンの狙い通りのモーダルな演奏で始まる。
オリジナル曲が続くが、B面に入りスカイラークやジターバグワルツなどのお馴染みの曲も登場する。しかし曲想は変わらない。これが、レビンのやりたいことだというのは良く分かるが。
カルジェイダーのバックで軽快にピアノを弾いていたレビンと同一人物の演奏は思えない。別に悪くはないし、トロンボーンの演奏もけっして「俄か仕立て」といった感じは全く感じさせず堂に入ったもの。しかし、それで?といった感じは否めない。果たして何の予備知識を持たないで聴いたらどんな印象を受けただろう。
このグループは、しばらく活動したがすぐに解散してしまう。レビンもその後はピアノの演奏中心に戻ったようで、このトロンボーンの演奏は一時の浮気のようなものであった。浮気は目立たないように、時と場合を弁えてやっているときは楽しいが、あまり思い詰めて本気モードになるとかえって辛くなるものだ。その後はマークマーフィーのアルバムに参加する時はトロンボーンを吹いていたようだが、最初からその程度がよかったのだろう。
1. Keeper of the Flame Mark Levin 5:43
2. After You Mark Levin 5:30
3. Greased Mark Levin 4:28
4. Ask Me Now Theronious Monk 6:38
5. Black Masque Mark Levin 4:36
6. Skylark Horgy Carmichel-Johnny Mercer 6:19
7. Jitterbug Waltz Fats Waller 8:08
8. Up Jumped Spring Freddie Hubbard 5:34
Mark Levin (vtb)
Chuck Clark (ts)
John Halle (p)
Jeff Carney (b)
Erik Von Buchau (ds)
Produced by Marl Levin
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California, June 1983
Engineer : Phil Edwards
Originally released on Concord CJ-234