A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

「ブルース好きにとってのムードテナーの代表格」スタンレータレンタインのバックには・・・

2014-09-16 | PEPPER ADAMS


Rough’n Tumble / Stanley Turrentine

時代がいつ頃かははっきり思い出せないが、ムードテナーという演奏スタイルが流行った。
演奏していたのはサムテイラー、ジョージオールド、そしてシルオースティン・・など。自分がジャズを本格的に聴き始める前なので多分60年代の初めの頃だろう。これがジャズだと思っていた時もある。

最初は洋物の曲もあったが、日本の演歌やヒット曲を演奏するようになって日本人の心を掴んだのだろう、このムードテナーがムードミュージックの一つのジャンルを占めるようになった。テナーの音が他の金管楽器と較べて人の声に近いからか、ビブラートを聴かせた音色が演歌の小節を効かせた歌い方と何か相通じる所があったのかもしれない。このテナーサウンドは日本人の心に響くものであった。

1966年ブルーノートレーベルのオーナー、アルフレッドライオンは長く育ててきたブルーノートをリバティーに売却した。ビーバップ、そしてハードバップ、そしてファンキーと、ジャズのメインストリームを作り続けたマイナーレーベルの名門がメジャーレーベルの傘下に入ることになった。時代の一つの変わり目となった。

それまでブルーノートは自社プレスのアルバムだけで他のレコード会社に原盤提供は行われていなかった。要はそれまで日本盤のブルーノートレコードは存在しなかったという事になる。当時の日本のレコード会社のジャケットはいわゆるペラジャケ。このペラジャケのブルーノートのアルバムは確かに見たことが無い。当時は、厚紙ジャケットの輸入盤への憧れというものがあったが、そもそも日本盤の出ていないアルバムは山ほどあった時代だ。

当時のスイングジャーナルを見ると、小さな記事で5月28日付のダウンビート誌にこのことが報じられ、リバティーレコードの販売権を持っていた東芝レコードが、早速、電報でアメリカに問い合わせをしていると記載されている。インターネットが無い時代、情報を得る手段はこの程度であった、今の時代とは隔世の感がある。

このアルバムは、丁度その売却騒ぎの真最中に行われた。この時点ではまだオーナーのアルフレッドライオンは現場でも健在であった。そして、片腕として活躍していたデュークピアソンもアレンジや演奏だけでなく、A&Rマンやスカウトとしての仕事も引き続き継続して行っていた。このような状況下で、ピアソンのアレンジで、当時の看板スターの一人であったスタンレータレンタインの新アルバムの制作が行われた。

この記事を書くにあたって、自分も一枚くらいは持っているのでは?と思ってレコード&CD棚を探してみたが、やはりこのスタンリータレンタインのアルバムは一枚も持っていなかった。要は、この手のアルバムは聴く事はあっても自分で購入する対象からはずっと外れていたアルバムという事になる。

したがって、このタレンタインが当時どの位のアルバムを出していたのかも知らなかった。改めて調べてみると、すでにブルーノートで1960年以降10枚以上のアルバムを出している、ブルーノートレーベルの看板スターであった。

ブルーノートは元々黒人向けのレーベル。黒人達にとって、ブルースはまさに心の故郷。ボーカル物のアルバムが少ない?(すぐに思い当たらない)ブルーノートでは、タレンタインのブルージーなテナーは、黒人達にとってブルースを歌う「ムードテナー」そのものであったのだろう。アメリカのブルーノートファンには、日本のコアなジャズファンとは別のファン層が存在した。メジャーレーベル傘下に入って、より売れるアルバム作りのためにはこのようなファン向けのアルバム作りにもドライブがかかっていった。結果、アルフレッドの意向とは異なったものになっていく。

ブルーノートで料理されると、こてこてのブルースではなく、流行のジャズロックのリズムをバックに。曲もレイチャールズやサムクックの曲、デュオンヌワーウィックの初のヒット曲、ウォークオンバイもカバーしている。

ペッパーアダムスの参加は当時一緒に活動することが多かったピアソンからの誘いであったのだろう、R&Bバンド風のバックのアンサンブルに加わっている。ブルーミッチェルやグラントグリーンはこの手の演奏は手慣れた物、雰囲気を出したソロを随所で聴かせてくれる。最後のBaptismalではファンキーな4ビートで、タレンタインに続いてアダムスやピアノのマッコイタイナーのソロも。コルトレーンのエスカレートする演奏にはついて行けずグループを去ったばかりのタイナーの演奏はファンキーだ。

アダムスにとっては、前週のハービーマンのセッションに続き、翌日7月2日のサドメルオーケストラに加わってニューポートジャズフェスティバル初出場の前日の一仕事であった。

1. And Safty                  Ronnell bright 6:46
2. What Would I Do           Without You Ray Charles 4:34
3. Feeling Good         Leslie Bricusse-Anthony Newley 7:13
4. Shake                       Sam Cooke 5:52
5. Walk On By             Hal David-Burt Bacharach 5:55
6. Baptismal                     John Hines 6:37

Stanley Turrentine (ts)
Blue Mitchell (tp)
James Spaulding (as)
Pepper Adams (bs)
Grant Green (g)
McCoy Tyner (p)
Bob Cranshaw (b)
Mickey Roker (ds)

Arranged by Duke Pearson
Recorded at Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, July 1, 1966


Rough N Tumble
Stanley Turrentine
Blue Note Records

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