A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ニューポートのジョージウェインとコンコルドのカールジェファーソンが握手をした日・・・

2016-02-20 | CONCORD
The Newport Jazz Festival All-Stars

ジョージウェインと言えば、伝統あるニューポートジャズフェスティバルを立ち上げたプロデューサーとして有名だ。一時は世界各地で年間40のジャズフェスティバルを手掛け、延べその回数は700回を超えるという。

ウェインは元々ミュージシャンで、ピアノも弾けば歌も歌う。ちょうどこのアルバムにウェインのバイオグラフィーが書かれているので紹介しておこう。
1925年生まれというので今年で90歳になる。音楽に興味を持つには子供の頃に周りにその環境が無いと難しいとよく言われるが、このウェインも例外ではなく、1936年11歳の頃は長兄が買ってくるルイアームストロングやベニーグッドマンのレコードを聴いてジャズに興味を持ったという。
更に遡れば、5歳の頃は汽車に乗った時、当時のヒット曲My Time in Your Timeを歌ってポーターからご褒美のビスケットを貰ったという逸話も母親が語っている。その内、当時のヒット曲、今ではスタンダード曲になっている曲は何でも歌えるようになっていた。

15歳の時、ディキシースタイルのピアノで、ボストンの街のバーで一晩2ドルの小遣い稼ぎを始め、ボストン大学の医学部に通っている間に腕を上げて、卒業する時には週に90ドル稼げるようになっていた。在学中に、すでにこのアルバムのオールスターズの原型ともいえるバンドをルビーブラフと一緒に編成していたが、1950年卒業と同時に医者になることを止めて、ジャズの道に進むことを決意する。

ボストンでプロ活動を始めて、クラブ出演を本格化するが、すぐに自分のクラブStoryvilleを作って、エリントンやアームストロングといった有名ミュージシャンを招くようになる。さらに同名のレーベルも立ち上げる。短期間でここまでたどり着くのは、音楽的な才能よりもやはりビジネスセンスに長けていたのだろう。

以前このブログで、ウェインがニューポートのフェスティバルを手掛け始めた1955年に録音されたWein, Women & Songというアルバムを紹介したこともある。ちょうどプロ活動を始めて5年目のアルバムだ。
その後本業はプロデューサー業へと移っていったが、ミュージシャンとしての活動は止めることなく今でも続けている。ニューポートジャズフェスティバルでも自分が参加するオールスターズを編成し舞台に登場していた。64年のステージはアルバムで残っているがディキシースイング系のミュージシャンの大同窓会も企画し、これに参加している。しかし、そのオールスターズもフェスティバルの開催場所が1972年にニューヨークに変ると解散の運命にあった。ちょうどジャズ界も変革の時代、時代もスイングジャズは本流から外れていった時であった。

1981年に再び、開催場所が誕生の地ロードアイランドに戻ると、このNewport Jazz Festival All Starsの復活を望む声がファンの間でも大きくなった。ウェインもメンバー集めを始めたが、昔のメンバー達はすでに他界していたり引退していたり。
ウェインはこのバンドの演奏スタイルに拘っていた。けっして出演者の中からオールスターを選抜するという訳ではなかった。自分がジャズを始めた時1940年代のスタイル、いわゆるディキシーからスイング、そしてモダンスイングまでのビバップ前のスタイルだ。徹底的に4ビートに拘り、演奏する曲も昔のスタンダードのみ、さらにレギュラー活動でもこのスタイルで演奏していないと駄目という徹底ぶりだった。
世はフュージョンの全盛期、メインストリームが復活してきたとはいえ、この条件に適うメンバーはけっして多くは無い。ニューポートの檜舞台に相応しいメンバーとなるとさらに限られる。そこで、白羽の矢がたったのはコンコルドレーベル所属のメンバー。ベテラン勢もいたが、若手代表でスコットハミルトンとウォーレンバッシェの2人がニューポートオールスターズに加わった。2人はコンコルドオールスターズの中核だったが、オーナーのカールジェファーソンも快諾したようだ。

他のメンバーは、エリントンオーケストラ出身のノーリスターネイ。ベースのスラムスチュアートはこのオールスターズが設立された時からの長老。ドラムのオリバージャクソンを加え、世代的には3世代混在のオールスターズとなった。
そして、このオールスターズは、ニューポートの本番の舞台だけでなく、各地のコンサートにも出演することになる。ウェインが力を入れていたのは国内では大学でのコンサート。いつものジャズフェスティバルのようなお祭りのステージとは違って自分の好きなジャズを若者に披露できるステージにしたかったのだろう。このアルバムもアリゾナ州立大学の講堂でのライブだ。ウェインのMCを含めて当日のステージの模様が2枚組のアルバムでたっぷりと収められている。

この手のオールスターズだと、顔見世のジャムセッションと各メンバーのソロをショーケスにして一回りし、最後は大ブロー大会で終わるのが常だがこれは少し勝手が違う。
プログラムはスタンダード曲が並ぶが、いわゆる歌物だけでなく、エリントンやベイシーなどの伝統あるバンドのジャズスタンダードも。どの曲もアレンジされているが別に凝ったアレンジやアンサンブルを聴かせるわけでもなく、かえってオリジナルの良さを残している。
ソロもボディーアンドソウルでスコットハミルトンをフィーチャーしているが、コールマンホーキンスを意識してハミルトンも好演している。バシェのホワッツニューも秀逸だ。モダンジャズのトランペットとは一味違うバラードプレーを聴かせてくれる。メンバー達も、単にスタンダードを演奏しているというのではなく、節回し一つにしてもいつも以上に古いスタイルに忠実にといった雰囲気だ。コンコルドのコンセプトとも相性がいい。

ウェインのオリジナルが一曲あるが、これはこのアリゾナ州立大学の創立100周年記念でプレゼントした曲。流石、名プロデューサーはプログラム構成にも細かい配慮がされている。いつもはスポンサーを意識してか、商売優先のプログラムを組んでいる感じがするウェインも、このオールスターズだけは自分の好みを通しているようだ。
この復活したニューポートオールスターズを聴くと、最初はジョージウェインのプレーヤーとしての道楽として編成されたバンドかとも思っていたが、伝統あるスイングの真髄を今のジャズファンにも聴かせたいという想いが感じられる。

このオールスターズの活動はその後も続いているが、コンコルドからもアルバムが何枚か出ている。ジョージウェインとカールジェファーソンのスイングするジャズを残したいという想いが通じたアルバムだ。ここではウェインはプレーヤーに徹して、アルバムのプロデュースはジェファーソンとなっているが、ライブでもあり2人の共作ということになるのは間違いない。

1. Exactly Like You          Joe Burke / Dorothy Fields / Jimmy McHugh 8:45
2. I Didn't Know About You             Duke Ellington / Bob Russell 6:11
3. Nobody Knows You When You're Down and Out       James Cox / Jimmie Cox 4:43
4. Rosetta                       Earl Hines / Henri Woode 4:32
5. The Jeep Is Jumpin'     Duke Ellington / Johnny Hodges / Billy Strayhorn 7:59
6. The Mooche                   Duke Ellington / Irving Mills 6:39
7. Body and Soul            F. Eyton / J. Green / E. Heyman / R. Sour 5:31
8. The Man I Love                 George Gershwin / Ira Gershwin 4:42
9. What's New?                    Johnny Burke / Bob Haggart 5:29
10. Struttin' With Some Barbecue             Lil Hardin / Don Raye 3:57
11. Moten Swing                   Bennie Moten / Buster Moten 9:04

George Wein (p)
Scott Hamilton (ts)
Warren Vache (cor)
Norrris Turney (as.cl)
Slam Stewart (b)
Oliver Jackson (ds)
Produced by Carl Jefferson
Engineer : Phil Edward
Recorded live at Gammage Center, Arizona State University, Tempe. Arizona, April 1984
Originally released on Concord CJ-260

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