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次世代テレビ放送はどうなるか? (12) テレビ離れを語るにはまずは視聴率を理解しなくては

2011-09-11 | Weblog
さて、テレビ離れは色々な調査データやコメントで語られているが、一般的なものは視聴率の推移であろう。この10年でゴールデンアワーの総世帯視聴率(HUT)は間違いなく減っている。要はテレビをつけていない家庭が増えたということだ。視聴率については、以前もコメントしたことがあるが改めて整理しておこう。

視聴率といえば、日本ではビデオリサーチの調査データが継続的にとられている。昔はニールセンのデータもあったが、現在は撤退しているので、このビデオリサーチが国内では独占的なデータだ。元々は電通の関連会社であったが、今では局や他の広告会社の出資もあり業界共通のデータとして使われている。先日の女子サッカーのような大きなイベントがあると必ず視聴率がニュースに登場するが、これらの元はすべてこのビデオリサーチの視聴率データである。

視聴率には世帯視聴率(要はテレビが何台ついていたか)と、個人視聴率(何人見ていたか)の2種類がある。視聴率がマーケティングデータとして重要な役割になってきたのはこの個人視聴率データが整備されてきたからだ。このテレビの視聴状況を記録するのがピープルメーター。視聴率のデータの元になるサンプル世帯に設置されている。関東地区でサンプル数は600世帯。けっして多くの世帯数ではないので、果たしてこのデータで視聴率は正しいのかという話は昔から良く出た話だ。統計学的には視聴率10%で確か2.4%+-で統計的には正しいと言われていたはずだが、最近のように視聴率が2桁やっととなると、その誤差範囲のデータが統計的には正しくても実態としてはどうなのかが改めて気になるところだ。

世帯視聴率は機械のON・OFFだから正しくは測定されているであろう。ただし、これも昔からテレビの前で猫が見ていても視聴率にカウントされるといわれていたが。最近の大画面テレビは節電機運が高まっているので以前よりもつけっぱなしは少なくなっているかも知れない。

視聴率の調査実態については、ビデオリサーチの、この資料を見れば歴史と現状が分かる。

では個人視聴率はどうやって記録するか?
が疑問になる。このピープルメーターなるものはこの個人の視聴状況も記録できるが、さすがに自動というわけにはいかない。人的な操作で誰が見ているかを記録するようになっている。この個人視聴率の機械式の調査が開始された時は各社どうやって記録するかの議論が技術的な手法を含めて良く行われていた。テレビの前の人物をカメラで捉えて人数を把握し、その顔を認識して記録するというような話もあった。寝転がってみても大丈夫か?とか、メガネを掛けたら認識するかとか、友人が来て一緒に見たらどうなるかといった話をした記憶がある。

色々紆余曲折を経て、現在の方式になっているが、その方式は果たしてどんな方式なのか。
YouTubeにこのピープルメーターの設置の実態のビデオが紹介されているので興味のある方はこちらで。



この方がコメントされているように、個人視聴率の測定には調査時点で誤差が出るのは避けられない。だが、それよりも重要なのは「リアルタイム視聴」と録画による「タイムシフト視聴」の割合の問題だろう。視聴率=リアルタイム視聴の減少でテレビ離れを語ると本質を誤るというのはこの点である。

この調査サンプルにはもうひとつ課題がある。600世帯のサンプリングは系属サンプリング方を採用して、いくつかの除外対象は決めているが特に世帯特性を考慮してはいないようである。昔、単身世帯は除くというような話も聞いた記憶があるが、仮に単身世帯を除いた世帯であれば、これはその時点で今の時代では実態とは掛け離れた数字になってしまう。
反対に単身世帯も含めて単純に抽出をしているのであれば、その結果はどのくらい全世帯の世帯構成比率に近いか気になるところである。今から40年近く前の世帯であれば、単身世帯は都市部の一部に限られていたが、今や単身世帯数の数は比較にならない位増えている。単純に若者だけではなく、独居老人、単身赴任、男女共に独身の増など単身世帯の内訳は千差万別だ。

実は、この世帯特性による視聴スタイルの違いが非常に大きくなっているのではないかと思う。さらには、録画機(ビデオ、DVD)だけでなく、パソコンを含めたIT機器やAV機器全般に対するリテラシーの高低が決定的に視聴スタイルに影響を与えているとも考えられる。となると、この600世帯のサンプル構成がどうなっているかが問題になる。本来であれば代表的な視聴スタイル毎にサンプルが欲しいところだが、この600世帯のサンプリングでは如何ともし難い。結果はかなり実態と掛け離れている可能性は大きい。

結論として、自分としてはこのピープルメーターによる個人視聴率のデータは今の時代では使い物にならないのではないかというのが持論であるが、広告料金を決めるマーケティングデータとしてはこの数字が唯一の指標であるのは間違いない。さすがのクライアントも、ターゲットに拘るところは、テレビ広告をやるのに腰が引けてくるのは分かるような気がする。

では、テレビの個人視聴率の把握は諦めるしかないかというとそうでもない。実現できるのはやりCATVであろう。各家庭のテューナーから視聴ログをとれば完全な世帯視聴率は計測可能だ。それも全数で。さらに、契約世帯ごとの住環境の把握は屋内配線工事ですでに手中にある。接続台数も把握済である。後は世帯構成の人数と属性が分かれば世帯ごとの視聴スタイルはすべて把握できる。それもサンプルではなく契約全世帯で。きっと面白いデータになると思う。次世代テレビ放送の主役はCATVになるのではなかと思うのも、こんなところに理由のひとつがある。




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