Takepuのブログ

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三峡ダムで干ばつ深刻と国務院

2011-05-22 11:20:44 | 時事

中国でタブーとされてきた三峡ダム批判が当局側から出た。中国網の日本語サイト「チャイナネット」が19日、ダムが干ばつや深刻な水質汚染の原因であり国務院が改善を求めた、と報じた。中国網は中国外文出版発行事業局が管理するニュースサイトとのこと。

 ...中国国務院は5月19日、三峡ダムプロジェクトが長江の中流、下流地域に悪影響を及ぼし、三峡ダムの下流 に位置する3つの省では干ばつが深刻になっていると発表した。中国では、三峡ダムプロジェクトの弊害が次第に明らかになっている。あるメディアが三峡ダム地域の水質汚染について取り上げたことで、三峡ダムプロジェクトは再び議論の的となっていた。これをうけ、国務院は、三峡ダムプロジェクト関連の水環境問題の改善を図るよう指示した。中国国務院の温家宝総理は18日、国務院常務会議を招集し、「三峡後続事業計画」および「長江中下流地域水質汚染改善計画」について討議を行った。会議では、人間本位の視点から環境保護や持続的な発展を考慮しつつ、プロジェクトへの資金投入を拡大、ダム周辺地域の経済・社会と環境のバランスのとれた発展を実現すべきだとの考えが強調された。...「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年5月19日

そもそも三峡ダムは孫文が提唱したにもかかわらず、その時々の政権は、規模や投資額のわりに十分な効果が見込めるのかとの多くの疑問を持たれ、また環境汚染や生態系破壊を招くとの批判を受け、計画実現には至らないでいた。ところがモスクワ動力学院で水利を専攻した李鵬首相(のちに全人代常務委員長、引退)が長老たちを説得して建設にこぎつけた。89年の天安門事件で戒厳令を発布したとして内外に評判の悪い李鵬だが、2001年8月、三峡ダムの建設現場を訪れたとき、ここでだけは李鵬を絶賛していた。



李鵬は革命家の両親を戦争で亡くした革命孤児で、子供のできなかった周恩来首相夫婦の養子となった、いわば筋金入りの太子党の頭領だ。いまの温家宝首相と太子党との確執を想像してしまうのはうがち過ぎだろうか。

現在、三峡ダムの下流域の水不足は深刻で、水力発電がままならないこと、そもそも電力需要が激増していることから、中国では日本を上回る電力不足に見舞われ、輪番停電(計画停電)している地域もある。今回の報道と国務院の対応は、この状況を受けたものだ。実事求是に基づいた状況判断だろう。それだけ中国の水不足と電力不足が深刻だということだろう。
折りしも温首相は21日訪日、宮城県の被災地の避難所を訪問し、女川の中国人研修生を津波から救い自らは犠牲になった会社専務に感謝と哀悼の意を示し、日韓両首脳と一緒にサクランボを食べて日中両国に農産品の風評被害を払拭しようとし、またSMAPと会談し北京公演に期待を示したりと、少し前なら反日派にぶったたかれるような親日的な日程をこなしている。中国国内での日本のイメージアップに寄与しているといえるだろう。尖閣問題のときに反日を利用して胡錦濤・温家宝らを攻撃した(と僕が考えている)太子党の考え方と真逆だろう。温首相が攻勢をかけているように見える。
北朝鮮の金正日総書記が訪中しているが、呉邦国・全人代常務委員長とともに温首相も中国を空けている。金総書記より日本をとったということなのか。一方で、日中韓の会談が開かれるタイミングで訪中し、日中韓の結束を分断しようとの意図が金側にあったとの憶測を示す報道もある。

三峡ダムの写真は2001年8月に訪れた工事中の三峡ダム。李鵬の写真は引退直前の02年来日時のもの。周恩来の像は故郷の紹興の故居にあるもの。


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