Takepuのブログ

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台湾映画「海角七号」その後

2009-01-08 10:57:19 | 映画鑑賞

台湾で大ヒットした「海角七号」のDVDに付属していた特典DVDを見てみた。メイキングや本編でのカットシーン、台湾からの引き上げ船「高砂丸」のCG撮影の様子などが盛り込まれている。
この中に「Seediq Bale(賽徳克巴莱)」という短編プロモーションビデオが収録されている。魏徳聖監督は実はこの映画が撮りたくて、まず資金集めのために「海角七号」を撮ったようだ。
「賽徳克巴莱」では台湾が日本の植民地だった1930年10月27日に起きた「霧社事件」を描くつもりのようだ。霧社事件は、台湾原住民のタイヤル族が住む台湾中部の村・霧社(現在の南投県仁愛郷)で起こった台湾原住民による最大にして最後の抗日蜂起事件。日本人警官とタイヤル族のいざこざを発端に、タイヤル族が蜂起、日本人学校の運動会を襲い、日本人多数を殺害した。日本側は軍や警官を投入して報復、鎮圧した悲しい歴史だ。
霧社まで行ったことがあるが、石碑ぐらいしか残っていなかった。
ネットで探したら魏徳聖監督へのインタビューが掲載されたブログを発見。中国語が読める人は藍藍的 movie blogをどうぞ。

大体の話は、魏監督は楊徳昌(エドワード・ヤン)監督の助監督をしたり、陳国富監督の「双瞳」の撮影に参加して「映画には金が必要だ」と悟った。で、300万台湾㌦で5分間のこのプロモーションビデオを撮った。
ただ陳監督に「自分の作品も発表していない、誰も知らない君の第一回作品に対して、スポンサーは金を出すわけないだろ」と言われて、①ストーリーが簡単②観客に難しく考えさせない③音楽が良くて受け入れられやすい④若者も年寄りも見られる--などを盛り込んで、最初から市場を意識して作ったらやはり当たったという。

日本と台湾原住民の報復の歴史を撮りたい監督が、日本の植民地時代を懐かしく美しく描いた「海角七号」を撮って、資金集めに成功したわけだ。
確かに漫画家の浦沢直樹も、本当に描きたいものが実現できるように、まずヒット作を、とマーケティングリサーチをして、可愛い女の子が登場してギャクも盛り込んだスポ根漫画「YAWARA」を意図的に描いたと聴いたことがある。その成功で「MONSTER」や「20世紀少年」のような大作を描く誌面を確保できたわけだから、創作活動も自分の究極の目標を実現するためには大変だ。

「海角七号」は、あざとい、と前回書いたが、大衆に受け入れられやすいようにわざとそういう作品を作ったわけで、僕としては日本人の記憶からも忘れ去れている霧社事件を表舞台に出してもらうためにも、「賽徳克巴莱」という作品を見ることができるのなら、「海角七号」のヒットも、まあ仕方がないか、そういうものか、と思うことにした。