わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

NEVER GONNA DANCE

2005年02月08日 | 観劇記
05年02月8日マチネ公演を観劇。
東京国際フォーラム・Cホール 実質3列目やや上手寄り。

「ネバ・ゴナ・ダンス」を観てきました。
本当に楽しく、これぞミュージカルと、時の経つのを忘れました。本当に小粋な舞台でした。

ざっとあらすじを。結末を書いていますので、これからご覧になる方はご注意下さい。
時は1930年代、ペンシルヴァニア。ボードヴィルのスター、ラッキー・ガーネット(坂本昌行さん)は、結婚式の当日にもかかわらず、舞台に立っていた。しかし、これが最後のショーと決めていた。スター不在に不安を抱く仲間がラッキーの時計を遅らせていたため、ラッキーは結婚式に遅刻。待っていたのは花嫁のマーガレット(秋山エリサさん)とその父(前根忠博さん)。父親はかんかん。それに娘の生活にも不安を抱いていたので、結婚しなくてすむように、ラッキーにダンスを踊らずに2万5千ドル稼いで来い、という。ラッキーはそのままニューヨークへ。
ニューヨークで、多くの人と出会うラッキー。マーガレットと婚約しているのに、ダンス教師で、ダンス大会のパートナーであるペニー(紺野まひるさん)に心惹かれる。ペニーに惹かれるので、お金を儲けなくてもいいのに、ラッキー・コインを預けたモーガン(三田村邦彦さん)はどんどん稼いでしまう。ペニーを思うのはラッキーばかりではない。リカルド(赤坂泰彦さん)はプロポーズしていた。
ダンス大会はアマチュアが対象だったのに、ラッキーはプロ。また、一番の敵となったカップルも実はプロだった。ラッキーはそのことを主催者に伝える。そこへマーガレットも現れ、ペニーはラッキーの嘘が許せず、リカルドと結婚することにした。が、ラッキーはマーガレットが以前付き合っていたのがリカルドだと分る。この二人は愛し合っていたのに、父親が嘘をついて引き離していたのだった。
ラッキーとペニー、リカルドとマーガレット、そして、モーガンとメイベル(大浦みずきさん)と皆ハッピー。

なんと単純なストーリーでしょうか。それでも構わないと思うぐらい、舞台の流れや音楽、構成が素敵でした。
そして、ラッキーとペニーはお互い惹かれているけれど、お互いその気持ちをはっきり言わないのです。それは、相手のことを思いやってのこと。そのすれ違いが観ている側の心をほんわかさせてくれます。

モーガンとメイベルもとても不思議なカップル。ブローカーだったモーガンは大恐慌のため乞食に。毎日セントラル駅を通るメイベルの姿を見るのが楽しみだったのです。ラッキーについてきて、メイベルと接触が始まります。モーガンは金を儲け、また、ある程度の生活をし始めますが、メイベルはお金にではなく、モーガンの優しさに惚れこんでいます。まあ、現実はこうはいかないでしょうけれど、これまた理想のカップルです。
本当に、心が温かくなるお話でした。

まあ、どんなに作品が良くても、舞台の出来が悪ければ、つまらないのですが、とても良い舞台だったと思います。総勢25名のキャストが、素晴らしい場面を次々と作り上げて下さいました。構成も良かったですね。無駄がなくて、ぎゅっと絞り込んだ舞台でした。
そして、何より、音楽が素晴らしいです。知っている曲が多かったためもありますが、本当にステキな音楽が一杯。
そして、その素晴らしい音楽をさらに楽しませようと、ダンスに歌にとキャストの皆様が素晴らしかったのです。ただ、タップがすごい、というふれこみだったので、もう少し全体に織り込まれているといいのになあと思いました。最初に集中しているので、終わってみると、あれタップは?という感じになってしまうのです。

ラッキーの坂本さん。
「学校へ行こう」というテレビを子供と一緒に見ていますが、そのときの様子からして、実は、ほとんど期待していませんでした。何となく、爽やかさが感じられなかったのです。
が、その予想に反して、素敵なラッキーを演じて下さいました。とても歌もしっかりしていて、台詞との繋がりも自然でした。最後の方のすごく悩みながら、ペニーへの思いを表現する「NEVER GONNA DANCE」のナンバーはダンスの技だけでなく、すごく演技力が必要な場面だと思われます。それが、とても物悲しくも素敵で、最後のハッピー・エンドへの繋がりとなり、とても印象に残りました。
そして、坂本さんが間違いなく主演ですし、有名タレントでもあります。が、こういう俳優さんに特有の輝き過ぎ、もっと言えば浮いた感じがなく、舞台を本当に引っ張っていけるスターなのだと思いました。

ペニーの紺野まひるさん。
宝塚時代に数回観ていると思うのですが・・・。
坂本さんのところでも少し触れましたが、「NEVER GONNA DANCE」のダンスは本当に素晴らしかったです。もう、可愛らしくて、もてるはずだと感じました。

モーガンの三田村さん。
ステキです。もう、なんとも言えないボケ具合といい、ほんわかした歌といい、本当に素晴らしいのです。

と、全員やっているといつまでたっても終わらないので・・・
最初にも触れましたが、アンサンブルの方たちのがんばりは本当に素晴らしかったです。タップに歌に、舞台に華を添えます。そういう演出がまたいいですね。さすが、BWミュージカルだなぁと実感しました。その場面の主役をいかに美しく見せるかを知り尽くした構成だと思いました。

勿論、すべてが素晴らしいというわけではありません。
私は、身体的なことは変えられないことなので、その役に合っていないとしたら、それはキャスティングした人に落ち度があると思っています。例えば、病気を患っている役に健康そのもののやや太目の俳優を当てたり、身長差があって美しく見えるカップルという想定なのに、そういう二人を起用しない、などはキャストの問題ではなく、キャスティングしたスタッフの問題だと思います。
残念ながら、今回も、一人一人としては素晴らしいのかもしれませんが、カップルにしてしまうと互いの魅力を消しあってしまうカップルが・・・。敢えて、お名前は出しませんが、リードする男性の方の手が女性より短いというのはちょっと頂けませんでした。ダンスは足の長さより、手の長さかも。

そして、これはアメリカのお話にはどうしても必要なのかもしれませんが、ちょっと日本では不自然と思うのが、人種の違いです。「サタデー・ナイト・フィーバー」はとてもよく似た話です。このときも、主役のカップルのライバルが有色人種でした。踊りタイプが違うというだけでいいような気がするのです。日本の文化には、人種差別がありませんから、そういうところを強調する必要はないと思います。ダンスの内容や衣装での違いだけで、充分なのではないでしょうか。

さて、最後に、私がこの舞台を観に行くきっかけとなった治田敦さんのご活躍について書いておきたいと思います。
治田さんの役は、ペニーとメイベルが勤めるダンススタジオのオーナーか支配人のパングボーンです。ペニーとラッキーが初めて出会う重要な場面を構成するお一人です。
オカマの役ということで、もっと女々しいのかと思いましたが、私には普通の男の人に思えました。その重要な場面を、楽しく、印象深いものにするため、いろいろ笑わせてくださいました。が、結構遠慮がちな雰囲気かもしれませんね、治田さんにしては。それに、もう少し悪い奴という感じが表に出てもいいのではないかと思いました。何しろ、メイベルがペニーに「そんなことしていると首よ」って何回か言うのですから、冷血で、傲慢なおじさんを想像しますからね。治田さんのパングボーンって本当に理解ある上司という感じですね。二幕頭の場面があるから、優しいのかなあ。最後にマーガレットとリカルドの仲を嘘をついて引き裂いた父親に「最低な人間だ。」みたいな台詞を言うのですが、私としては、この台詞って「パングボーンに言われたくはない。」という位置づけではないのかと思いました。
かなり私の妄想です。優しさ漂うパングボーンもとても素敵です。
また、二幕の頭では、ちょっと踊ります。上手くないという設定なので、ダンスは楽しい!と思える下手なダンスをご披露下さいます。しかし、下手に踊るのも大変ですよね、もともとお上手な方が。

本当の意味で、この舞台が今年の初観劇舞台となりました。昨年の反省を活かし、今年はいろいろな舞台を観劇して行きたいと思っています。初観劇がとても楽しい舞台だったので、今年は春から縁起がいいなぁ!