ホキ美術館

ホキ美術館
2010/12/20
　ＮＨＫ土曜日夜「ミューズの晩餐」と云う番組を見ました。感激して土木屋らしくない文章を書いています。
　写実絵画のみを集めた美術館で、保木さんというお金持ちが建てられたものです。
　展示されている絵は、写真のような絵ばかりです。
　フェルメールの人物画をアナログテレビとするなら、此処に展示されている絵はデジタルのハイヴィジョンです。
　手で書いた絵ですが、写真以上に現実感があり、今にも動きそうな気配があります。皮膚の柔らかそうな質感など良くこんなに描けるものだと不思議になります。
　五味文彦さんは、テーブルの上の剥きかけたレモンを描いていますが、レモンの切り口が一寸萎れ乾き出した感覚は写真以上です。レモンの下に敷いてあるレースのテーブルクロスは、上等レースで硬い感じが出ています。
　森本草介さんは、奥さんをモデルに西洋貴族夫人のような服を着せた立ち姿を描いていますが、凛とした気品が溢れています。写真じゃあ出来まいと感じました。
　中山忠彦さんの若い女性の絵は、皮膚から若さが放射されているようでした。
　イギリス在住の日本人画家が故郷の景色を記憶から描いたと解説がありましたが、こんなに記憶出来るものかと、そのディテェールの詳細さに驚きます。

　描いている作家は日本人ばかりで、日本の新しい画壇の潮流を感じました。
　此処の絵と比較するとレンブラントの夜警の絵など雑だなぁと感じます。
　ピカソ・マチスの抽象画など、絵のうちに入らない。ゴッホの油絵など子供の遊びに見えます。
　広島大学の芸術学部の写実画の実習風景が出ていましたが、これこそ新しい方向だと実感します。生徒は被爆したお年寄りの絵を描き、その５０点をイギリスで展覧会をしましたが、好評だったそうです。絵の人物一人一人が感情があり、人間としての気品を湛えています。
　保木さんは偉い。彼のようなスポンサーが居てこそ芸術の花が開く。ゴッホやルノワールの絵に大金を払う美術館や自治体は、絵とは何かを考え直すべきと感じました。
　これ等の写実画は、描くのに１年掛かりそうで、生涯に何十点も描けそうにありません。この根気も称えましょう。